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精霊神さまは最強です - イチャラブ♡異世界流離譚 -  作者: 如月コウ
『異世界召喚×スタンピード』
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 魂の浄化——魂の大部分を構成するのが魔素であり、魔素に異常が発生することで魂が歪む。その結果、生死の輪廻を忘れてしまった精霊、通称、死霊として、不死者(アンデッド)不滅者(イモータル)といった存在が生まれる。

 不死者も不滅者も、善悪という観念においてどちらかに偏ることはなく、善き不死者、善き不滅者は明確に存在する。討伐対象になるのは、力に溺れた悪しき者だけである。

 そして、精霊とは、死霊の魂を浄化し、魂の輪廻のことを思い出させてあげることが役割のひとつである。



「——がっ、ぐっ、あああっ!?」


 場に、緊張が走る。仲間のひとりが突然、苦悶の声を挙げ、吐血したのだから無理もない。


「はぁはぁ……」

「おい、何が——」

「ヤバいのがいる」

「——っっ!?」


 その言葉で、その場にいる全員——彼を除いた三名の異世界人全員が理解した。彼が使役する大量のキメラ兵を撃破するイレギュラーが発生したのだと察したのだ。


「はぁはぁ、はぁ……西のがやられた」

「西!?なんで——」

「わかんねえよ!けど、間違いない——」


 彼ら彼女ら四人は、ミーティアル帝国が召喚した異世界人、その一部。現在、ミーティアル帝国首都メティルードの皇城地下にて、各々の異能を用いて、活動していた。


「俺らの動きがバレてんだよ!?」


 そんな中、起こってしまったトラブルは、ここ一ヶ月の間に起きているトラブルとの関連を疑ってしまう類似性を有していた。


 事の始まりは、バルシアで活動していたキリエ=ガーデス——藤田 桐絵が拘束された日。その日から、完全に歯車が狂ってしまった。


 南——バルシアが商工ギルドによって実効支配された結果、歴戦のバルシア兵を派兵することができなくなったことに加えて、キメラ製造量が半減。二侯一軍で、ファルデア王国のアーフェンボルク公爵軍に対抗していた帝国南方の国境地帯の大勢は決しており、アルバイン侯爵領都アルシアが陥落寸前との報が入ったのは二日前。今頃は既に、ファルデアの鮮血女帝の手中にあることは予想に難くない。

 東——アルマーダ森王国最強の近衛衆が出張ってきたことで、北に出兵していた蒼獅子ことラズィファーク公爵軍の大半が退却する。

 北——ミーティアル帝国三公の蒼獅子(あおじし)白雷(びゃくらい)緋灰(ひはい)の三つの公爵家とその傘下の貴族からなる合同軍とキメラ兵による魔族領域侵攻、通称、魔族戦線の舞台。ただし、現在は緋灰とその傘下である貴族たちと、三十万のキメラ兵が主力であり、完全に()()である。


 そして、西——ミーティアル帝国西方は、北と南の国境地帯が存在。北は白雷に任せ、南のネルス公国にキメラ兵を集中させる。その理由は至極単純——


「——西(あそこ)は弱かったはずだろうが!?」


 他と比べて、西方の国境地帯が、比較的手薄で弱いという認識があったことが、西を攻めるに至った理由。だからこそ、追い込まれた彼ら彼女らは、西に戦力を投入した。事実、その効果があったからこそ、ネルス公国は撤退、砦をひとつ陥とした、と、()()させられた。

 キメラ兵を追加投入したことで、ネルス公国軍が後退することを決定したのは間違いではない。だがそれは、ただ単に後ろに下がっただけ——ファルデア王国から援軍が来ることを知っていたゲオルグ=ラ=ネルスは、無駄な兵の損耗を嫌い、退いたに過ぎない。

 そして、もうひとつ、彼ら彼女らは誤解している——帝国軍によるネルス公国侵攻において、キメラ兵が主力に切り替わってからは、自軍の兵の練度を高めるため、危険な相手が出張ってこない限り、ゲオルグ=ラ=ネルスは兵を指揮するだけに留めていた。

 それは、国を率いるものとして当然の思考であるが故、そういった視点で物事を見たことがない者には届かない。平和な異世界で生きてきた者には、まず不可能といえる思考であると、完全に見切られている。


 ファルデア王国宰相ノルド=アーフェンボルクは、その甘ったれた思考を逆手に取り、今、完全なる敗北を、ミーティアル帝国に突きつけようとしている。


 そもそも、前提が間違っていることに、彼ら彼女らは気付いていない。対ミーティアル帝国軍事同盟が、積極的な侵攻を行なわなかった理由に気付いていない。あまりにも簡単な理由に気付いていない。

 精霊術を用いないキメラ製造によって、魂が異常をきたし、生み出されたキメラが死霊となっていることに気付いていない。

 そして、死霊の魂を浄化するのは、精霊神の役割のひとつでもあり、私利私欲で、無辜な魂を苦しめていることに精霊神が激怒していることに気付いていない。


 だが、国と国の戦いである以上、精霊神が肩入れすれば均衡が崩れるため、精霊神は動けなかった——あの時までは。


 アーフェンボルク公爵領都城塞都市アルカイズを、スタンピードが襲った、あの時。スタンピードの原因調査をガノスに依頼されたことで、帝国のキメラ兵との縁が繋がる——精霊神ソーマが帝国のキメラ兵に危害を加えられたことで、精霊の民に動機が生まれ、商工ギルドによる調査が開始されることで、全てが、精霊神ソーマの知るところになる。

 対魔王という名目でキメラ兵を製造している、という言い訳は、最早通用しない。ミーティアル帝国は、あの時、精霊神ソーマに宣戦布告をしたに等しい悪手を指していたのだから。

 そして、帝国のキメラ兵のことを知った五年前の時点で、ノルド=アーフェンボルクは、同盟国に伝えてある——遅かれ早かれ、ミーティアル帝国に神罰が下される、と。


 これが、対ミーティアル帝国軍事同盟が、積極的な侵攻を行わなかった理由である。


「——アイツらに連絡しろ!」

「おいおい、どうする気だ」

「あんな化け物、まともに相手にしてられるか!アイツらのところに下のキメラ兵を送って、その代わりに、アイツらのチートであの化け物を殺させろ!」


 帝国皇城地下深くに存在するキメラ製造工場から、長距離の空間転移陣を用いて、帝国各地の戦場にキメラ兵を送るというのが、彼ら彼女らの基本戦略。形勢が不利になったことで、帝国首都メティルードに伏せておいた予備兵力——三十万のキメラ兵——が、西の国境地帯に送られる。

 そして、彼ら彼女らにとっての主力——ミーティアル帝国が最大戦力と吹聴している男女六人組が、南下する。行き先は、ネルス公国。


 勇者パーティ、動く。



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