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精霊神さまは最強です - イチャラブ♡異世界流離譚 -  作者: 如月コウ
『異世界召喚×スタンピード』
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 ダスクード大陸南部の大まかな勢力図


 『 ミーティアル帝国 』『森王国』

 『 ミーティアル帝国 』『森王国』

 『ネルス公国』『 王国 』『連邦』

 『 魔道国 』『 王国 』『連邦』


 王国→ファルデア王国

 森王国→アルマーダ森王国

 魔道国→ラ・シーナ魔道国

 連邦→リガルメア連邦


 ダスクード大陸南部は、その約半分がミーティアル帝国、残り半分をファルデア王国、ラ・シーナ魔道国、リガルメア連邦によって治められている(ネルス公国は、ラ・シーナ魔道国の属国。リガルメア連邦は、六つの小国からなる連合国家)。

 ファルデア王国は、対ミーティアル帝国軍事同盟の盟主国でもある。



「——あん時よりも気持ち悪くねえか?」

「うん……なんか、ウネウネしてるねえ」

「なるほど、あれが噂の——」


 ミーティアル帝国とネルス公国、この二国の国境線争いは、白雷と黒雷、二つの公爵家の戦いの歴史であった。しかし、ここ数年で、完全に様変わりしている。

 明確に変わったのは五年前。ミーティアル帝国側の兵士が、黒づくめの粗雑な甲冑姿の兵士へと変わり、戦場に現れるようになる。

 そして、その中身は——


「——帝国のキメラ兵か……」


 ファルデア王国を含めたミーティアル帝国との他の国境地帯でのキメラ発見の報告が無かったことから、ミーティアル帝国西方の国境地帯を治める白雷と呼ばれし公爵家の関与を疑ったゲオルグ。だが、結果は——白。そして、調査を進めていくうちに、キメラを製造している者の正体が、異世界人であると判明した。


「んー……んー?」

「どうした、チビ、なんか気になんのか?」

「ボクからしたら大差ないんだけど……なんか弱そうに見えるんだよね」

「あん時のキメラより、ってことか?」

「うん……気持ち悪い魂なのは変わらないけど

、なんか弱そう……」

「——おそらく、素材の差でしょうな」

「素材……おお、そういやエルスのやつがそんなこと言ってやがったな。素材で、キメラの強さが変わるとかなんとか」

「ゲオルン、何か知ってるの?」


 精霊神さま御一行は現在、イスター城砦城壁の上で、遠くから押し寄せてくるキメラ兵の姿を捉えている——約二十万のキメラ兵の群れを。

 実のところ、ゲオルグ率いるネルス公国魔道騎士団にとって、今のミーティアル帝国西方の領土の切り取りは、さほど難しくはない。

 しかし、それを行なえない理由がある。


「……五年前、帝国西方のある地域が、皇領となったのです」

「……精霊神さま、皇領ってなんでしょう?」


 椅子に座り、膝の上に精霊神ソーマを座らせているレナが、小声で尋ねる。それを聞いたゲオルグが軽く頬を緩ませながら答える。


「皇領とは皇帝直轄領、皇帝自らが治める土地ということだ」

「あ、ありがとうございます!」

「いや、構わぬとも……問題は、かつてその領土は、白雷が治める土地の一部だったということ。つまり——」

「国境地帯ということですな」

「左様。そして今、皇領であるはずのその地に——まともな生き物はおりません」


 ゲオルグの言葉に、精霊神ソーマ、レナ、ベルヌスを除いた面々——ダグラス、ミネルバ、アーヴィンが戦慄する。あまりに嫌な現実を想起したからだ。


「つまり、五年かけて、あれだけの数を揃えたってことか……」

「……ある意味、奴らにとっては、一石二鳥だったのでしょうな」

「——っっっ!そうか、異世界人か!」


 だが、現実は想像以上に(むご)かった。獣人などの人族以外の奴隷だけでなく、帝国に暮らす人族も、その全てが、皇領の中では生きることを許されない。レベル上げと称して、全ての命が奪われた。それは西方だけではなく、帝国内の全ての皇領においてである。

 未開領域内の魔物を徹底的に狩り尽くしては他の未開領域に赴いては狩り尽くし、他を回る——二週間もすればある程度()()()()するから、と異世界人たちは嬉々として殺して回る。

 レベル上げのため、キメラの素材を集めるため、何一つ遠慮も躊躇もなく命を奪う。


 全ては、世界の平和を守るため、と。


「——……ホント、調子に乗りすぎだね」

「精霊神さま?」


 精霊神は、全ての魂に対等で平等。醜く成り果てた哀れなキメラといえども憐憫の情を抱き、その情は、怒りにへと繋がる。

 十二の最高神の中で最も喜怒哀楽がはっきりしている神は、精霊神ソーマである。それは、現地で活動することが大前提の役割だからこそ、現地に暮らす者たちと同じように物事への反応として感情的に判断する必要があるから。

 しかし、精霊神もまた十二の最高神の一たる存在、当然ながら制約がある、自由には動けない。そのことを精霊神ソーマ自身が最も理解している。


 だが、世の中のルールには、大抵、それが存在している。だからこそ、精霊神ソーマには必要だった。その時々において必ず、そういった存在がそばにいた。


「レナ、あれ、見えるよね?」

「は、はい……あれって魔物なんですか?」


 レナの言葉に、ダグラスなどが怪訝な表情を浮かべる。無理もない。つい今さっきまで、キメラのことを話していたのに、何故、レナが理解できてないのかが理解できなかったからだ。

 理由は、精霊神による認識改変である。

 ミーティアル帝国出身の奴隷であるレナに、キメラに関する情報のみ、辻褄のない言葉に置き換えるある種の結界、異世界風に言うならばフィルターを、精霊神ソーマがかけていた——真実を知って、レナが悲しまないようにと。

 だからこそ、眼前のキメラの素材に、ミーティアル帝国の人々が使われているとゲオルグが口にした時、ソーマやベルヌスと同じように、レナも一切動揺しなかった。


「……あれは元々、ミーティアル帝国の人たちなんだ」

「……え?」


 しばしの間をおき、レナがソーマの言葉を理解したのだろう、頬に涙が静かに伝う。


「正直、ボクは怒ってるんだ。あんなことを平気でするような輩は許せないんだ」


 レナに真実を伝えるかどうか、ソーマは迷っていた。辛いことを知らずに、日々を過ごしてほしいと思っていたからだ。もし、今回、真実を伝えたことで、レナの心が耐えきれないようなら、即座に記憶を封印し、真実を知る前に戻す準備をしているソーマがそこにいた。


「な、なんで、こんな、こ、と……」

「レナはどう思う?あの者たちをどうするべきだと思う?」

「精霊神さま……」

「ん?」

「あの方たちは、苦しいのでしょうか?」

「……わからない。けど、ボクならゴメンだね。好き勝手に魂ごと身体を(いじく)られて道具みたいに使い潰されるなんて、とてもじゃないけど我慢ならない。レナはどうだい?」

「私も、そんなの嫌です……精霊神さま、あの方たちを助けることはできないのでしょうか?」

「……二つの選択肢がある」

「二つ、ですか?」

「一つは、ボクが、あの哀れな者たちを元通りにすること。ただし、あの数だからね。制約を解除するのに必要な代償があまりに膨大になる。もし、代償無しに力を使うと……」

「どうなるのですか?」

「この大陸の八割が海に沈んじゃうね♡」


 聞き耳を立てていた全員が咳き込む。あまりにとんでもないことを平然と口にし、断言した以上、間違いなく現実にそうなるのだと理解したからこその驚きである。


「もう一つの選択肢というのは?」

「もう一つの選択肢はね——」


 精霊神ソーマが、寝ているそれを抱き上げ、実現可能な代替案を伝える。


()()()()()()、あの哀れな魂全てを真に解放すること。レナ、ベルベルと一緒に、あの者たちを助けてあげるんだ」

「ベルさまと一緒に、ですか?」


 ソーマの言葉を聞いたベルヌスが、ぷかぷか浮かびながらレナの肩に乗り、キュイ〜♪、と一鳴きする。


「ベルさま、お願いです……あの方たちをお助けください……」


 その言葉、その願いを聞いたベルヌスが、レナの肩から離れ、上空へ。そして、大気が震える。空気が割れ、空間が狭まったかのような光景が、イスター城砦前に現れる。

 これが答え——世の中のルールに必ず存在する抜け道、ある種の裏技、精霊神ソーマによる仕込みがようやく実を結ぶ。

 精霊神には制約があるため、自由に動けない。だからこそ、いつの時代にも、必ず存在していた。精霊神の意思と意志を代行する者と、その者を慕う者たちが、精霊神のそばにいた。

 精霊神の代行者は、かつて、このように呼ばれていた——精霊神の巫女、と。


 今、この瞬間、今代の巫女が誕生した。そして、今代の巫女を慕う大精霊が、その大いなる力を、世界に示す。


 龍の大精霊ベルヌス、イスター城砦に降臨。



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