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神殺しの聖剣キノエーダ——【※警告※ 現在の貴方の権限では、レベル5以上の情報閲覧は許可されておりません】。
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「——いいねいいね、その調子♪」
単純な貫通力だけなら、かつて剣聖レヴァスが魔龍ベルヌスに放った九つの刺突すら凌駕するそれも。それこそ、魔龍ベルヌスすら地に圧し潰すであろう振り下ろしも。木の枝によってピタリと止められる。
ここで問題なのは、ピタリと止められることにある。アーヴィンの刺突も、ダグラスの振り下ろしも、精霊神ソーマとその手に握られた木の枝を素通りし、その背後に痕跡を残す——大地に亀裂が入っている、その意味。
ダグラスもアーヴィンも、その意味を理解しているからこそ、精霊神ソーマが、武の頂きに在る者であることを実感する。
——受け流し。
世には、打突の勢いに逆らわずに顔などを捻ることで衝撃を逃す技術などが存在し、それらの総称または通称を受け流しと呼ぶ。
結論から述べると、精霊神ソーマは、アーヴィンの刺突やダグラスの振り下ろしによる衝撃を完全に受け流している。しかも、それを——その場から一切動くことなく、行なっている。
相手の攻撃を完全に無かったことにするような完璧な受け流しを、実際に再現できる者は、限りなく少ない。そして、鉄よりも遥かに硬く強靭なアダマンタイト合金などの金属製の武器や、魔龍ベルヌスのような生物の表皮を相手にして、ただの木の枝で対抗できているどころか切断できている理由が、完璧な受け流しにある。
切ることの本質は、一つの空間を二つに別ける——空間を切ることにある。そして、空間の中にある物質を断裂することで、二つの空間にひとつずつ物質を存在させる。
ただし、空間の中にある物質を切る際、必ず、切るためのものを物質に触れさせなければならず、彼我との耐久力や剛性などが最低でも均衡していなければ、切断することは不可能。
その不可能を可能にするのが——本来なら許容できないものを許容させるのが——技術。
本来なら触れた瞬間、破砕するであろう木の枝をそうはさせず、木の枝の耐久力や剛性の許容範囲に全てを収める。
伝わる衝撃、負荷の全てを、身体全てを用いて拡散させる。それが受け流しの真髄。それは同時に、負荷の流れを意のままに操ることに繋がり、切断力を高める要因となる。
精霊神ソーマが世界最強と呼ばれる理由、武の頂天たる所以、その一端である。
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未開領域は、そこの主の魔素によって形成される。同じ理屈が、世界にも適用される。
この世界は、精霊神から放たれている魔素によって形成されている——ことで、その世界の住人の基礎能力が桁外れに高まっている。
例えば、現在、この世界に召喚されている異世界人たちが暮らしていた地球と呼称している惑星における、人族最高のフィジカルを持つ者をこの世界に置き換えると、アイアン級傭兵相当。つまり、政務に専念している一国の王女よりも遥かに弱いフィジカルしか持ち得ないことになる。
例えば、かつて、異世界より召喚された剣士がいた。その剣士は、元の世界では剣聖と呼ばれ、剣の極地に至ったと称賛され、自他ともに最強を自負していた彼は——絶望した。これまで培ってきたもの全てが、この世界では通用しなかった。この世界の強者に負けたのではない。この世界の一兵卒——シルバー級傭兵相当の兵士にすら、彼の剣、異世界最強の剣聖の力が及ばなかったのだ。何故か。
単純な話だ。全ての身体能力、全ての脳機能が、ただの一兵卒にすら劣っていたのだ。
魔素の多寡は、魂の強度や大小の差を生み、それが肉体や脳機能の質に左右する、ただそれだけのことである。
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ダグラスとアーヴィンは、互いに歓喜していた。自分よりも遥か高みに在る武を知ることは、己が未だ道半ばに在ることを示し、まだまだ成長できることを実感できるから——まだまだ強くなれることを、武人としての本能が喜んでいたのだ。
ダグラスがアーヴィンの瞳を見る。アーヴィンの反応を確認したのち、精霊神ソーマの足元へ視線を運び、再びアーヴィンを見て、ニヤリとした笑みを浮かべ、意図に気付いたアーヴィンも口元を緩ませる。
アーヴィンが動く。精霊神ソーマの懐へ一気に踏み込み、左手のラウンドシールドによる打突、いわゆるシールドバッシュを繰り出す。精霊神ソーマが反応——することを予期していたアーヴィンはほぼ同時に、右手の魔導剣による下段突き。中段のシールドバッシュから間断無き下段の平突き、並の相手ならば必中必倒の攻め手——だが、精霊神ソーマの膨大な戦闘経験に基づく正確無比な超反応は、アーヴィンの攻め手を最短で潰す。シールドバッシュを木の枝の先端で逸らし、返す木の枝で魔導剣の剣身を踏むように地に抑える——ことを、ダグラスは狙っていた。アーヴィンが下段突きのモーションに入ったタイミングで、アーヴィンの真後ろから跳躍、背中を踏み台にして、さらに上へ。精霊神ソーマに向かって放たれたのは、アーヴィンの下段突きとほぼ同じタイミングでの、最上段からの魔導特大剣の振り下ろし——を、木の枝の先端ではなく横で受ける。
シールドバッシュを弾いてワンアクション、魔導剣を地面に抑えてツーアクション——ここからダグラスの振り下ろしに差し込める者は、現状、精霊神ソーマ以外にはいない。それほどの連携をダグラスとアーヴィンは見せた。
ダグラスの魔導特大剣による振り下ろしを受けた精霊神ソーマ。しかし、精霊神ソーマや木の枝には何のダメージも入らず、地面に亀裂が入るのみ。そして、ダグラスがニヤリと笑い——地面が陥没していく。
「——おっとっと……あれ?」
「くっくっく、どうだ、見たかチビ!やってやったぞ!」
精霊神ソーマの地面が陥没したため、反射的に、立ち位置を変えたことで、条件が満たされた——精霊神の試練を、ダグラスとアーヴィンがクリアしたのだ。
「——精霊神さま、朝食が……えっと?」
「あはは!良いタイミングだよ、レナ♪」
精霊神の試練、今回の内容は『精霊神ソーマを、剣を用いて、その場から動かすこと。剣を用いるなら手段方法は問わない。時間制限は、朝食が出来上がるまで』。
赤狼のダグラス、銀剣のアーヴィン、両者ともに称号付与者——超越者となる。
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超越者——二つの意味を含む名称。ひとつは、種族の限界の向こう側を征く資格を得た者という意味。もうひとつは【※警告※ 現在の貴方の権限では、レベル5以上の情報閲覧は許可されておりません】。
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