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精霊神さまは最強です - イチャラブ♡異世界流離譚 -  作者: 如月コウ
『異世界召喚×スタンピード』
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 ファルデアの宝石——ファルデア王国現国王ラシエル=ド=ファルデアの娘である五名の王女たちの異名。ただし、かつては、長女である第一王女ミネルバ=ド=ファルデアのことを指していた。

 国内辺境の村々への経済的支援とそれに伴う発展、他国における外交的成果の数々、と。幼少の頃から、王国の民に分け隔てなく尽くすその姿を、他の王女たちも見習い、それぞれが独自の施策で王国に貢献したことで、ファルデア王国の王女たちを指す名称となった。



 音が消える。実際には、そんなことはなく、少し離れたところからは、準備に勤しむ者らの音が響いてくる。だが、当事者同士の間では、音が消えていく、間違いなく、他に気づかれることなく。


「……」

「……」


 実際は動いている。音として鳴ること無き連続する行動こそが、その二人や二人と同じような武人にとっての常——視線を散らばす眼球運動や不規則な初動と初動の取り消しを示す微細な骨格筋運動を無意識に行なえて、初めて、闘いになる——そんな領域に、この二人はある。

 汗が滲む。ただの一合も振るわれていないにも関わらず、お互い、何人もの相手を斬り伏せたような、そんな消耗具合である。これは、見るものが見れば理解できる、しかし、理合に通じていないものからすれば、ただ向き合っているだけにしか見えない、そんな状況。


「……あの、精霊神さま?」

「……んー?」


 周囲の状況とはあまりに異質な光景を前に堪えかねたのだろう、ミネルバが精霊神に問う、耳元で囁くように。


「……これって、どういう状況なんでしょうか?二人が向き合ってから、結構な時間が経ちますが——」


 身の丈近い鉄塊のような大剣を構える赤髪の偉丈夫——傭兵団『赤き餓狼』団長、赤狼のダグラスが相対するのは、今回、ファルデア王国第一王女ミネルバの護衛として同道する正騎士。

 円形状の盾と腕より僅かに長いロングソードを模した魔導剣を構える濃茶髪の男は、ファルデア王国近衛騎士団、団長——アーヴィン=フィネス。銀剣の二つ名で知られる、王国屈指の実力者である。


「……んとねー、ある程度の腕があって、お互いの実力が拮抗してると、大体、こんな風になるんだ」

「……拮抗、ですか?」

「……そそ。隙があればやられる、だから油断しない。隙がなければ攻められない、だから隙を生み出す。そういう当たり前のことをお互いが同じくらいできちゃうと、こんな風に、まるで動いてないように見えちゃうんだ。でも実際は違う。この二人は、今、間違いなく闘ってるんだ。絵的には地味だよね〜♪」

「……なるほど」


 それに……、と思いながらも精霊神ソーマが口に出さずにいたこと。力量の高い武人同士の実力が拮抗することで初めて成立する、高度な情報戦に等しいこういった闘いは、わかる者であれば中々に見応えがあるため、精霊神ソーマはニヤニヤしながら、その二人の朝稽古を眺めている。


「……動くよ」

「……え?」


 精霊神ソーマの声に合わせたかのように、ダグラスが動く——平均的な人族以上の背丈のダグラスとほぼ同じ長さの剣身、手のひらと同じ分厚さ、人の肩幅ほどの柄、アダマンタイト合金製のグレートソードを模した——魔導特大剣による横薙ぎ。鋭い踏み込みにより、アーヴィンの剣だけが届かない距離にて振るわれたダグラスのそれは、本来、大型の魔物を屠ることを想定した獰猛な一撃。並の武人ならば、回避一択のそれを——


「——ふっ!」


 アーヴィンは、受けて、逸らし、いなす。その流れのまま、しゃがみ込むように踏み込んだアーヴィンによる、強烈な刺突。体勢的にまともな回避が困難なそれが迫ることを察したダグラスは全身の力を抜く——身体ごと上昇し、弾かれたグレートソードと共に距離を取る。


 赤狼のダグラスと銀剣のアーヴィン、闘技場の興行ならば、一も二もなくメインイベント確実のマッチアップである。


 一進一退、千日手。膠着状態とはまさに、今のダグラスとアーヴィンのことであろう。ダグラス、アーヴィン、両者ともに、実に楽しそうに微笑み、仕切り直——


「——それ以上はダーメ♡」


 精霊神ソーマの声に、ダグラスとアーヴィンが何かに気づいたかのようにハッと驚いた表情、両者が、平時のそれに佇まいを戻す。


「どういうことですか?」

「これ、朝の稽古だよ?ボクが止めなかったら、本気の勝負、始めるところだったんだもん、この二人♪」

「本気?」

「うん、死力を尽くした真剣勝負、勝ち負けが決まるまで()り合いかねなかったからね。これから、朝食なのに♪」


 バツが悪そうなダグラスとアーヴィン、それを見かねた精霊神ソーマが気まぐれを起こす。

 それは、ある種の祝福——


「面白いのを見せてもらったからね。特別だよ、二人とも——」


 胡座をかいていた精霊神ソーマがスッと立ち上がり、ダグラスとアーヴィンの前に立つ。


「精霊神の試練、受けさせてあげる——」


 それは、選別にして、餞別。


「クリアしたら、世界から君たちに——称号を授けさせてあげる♡」


 別名、精霊神の暇つぶしである。





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