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特記戦力——いずれかの国より要警戒対象に認定された個人を指す言葉。国内外の情報を秘密裏に収集する、いわゆる諜報を取り扱う部署などによってもたらされた情報をもとに、国軍上層部などの議論ののち、特記戦力として認定される流れが一般的。
当該惑星では概ね、破滅級と呼称される存在を単独撃破可能かどうかが、特記戦力として認定される基準となっている。
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「——ふはははははっ!!」
室内に響く笑い声に、暗い部分は無く。ただし、揶揄う気持ちは含まれていて。
「……笑いすぎではありませんか?」
「すまんすまん。しかし、おまえともあろう者が……ふっ、ははははっ!」
その場所は、王都ファーディスにて、最も位の高い者が暮らす場所。
「いやいや、気持ちはわかるよ〜♡」
「わかっていただき、ありがたく。流石は精霊神さまですな!」
「もう、褒めすぎだよ〜♪」
「精霊神さまのメイド姿も、実に素晴らしかった!昨今は男の娘メイドも増えつつありますが、精霊神さまが間違いなく頂天。性別という高き壁を、個人の好みの問題にまで縮めていることそれ自体が、その素晴らしさの証明となりましょうぞ!」
現在、その場所の一角——特別貴賓室と名付けられた部屋にて、何故かメイド談義が行われていた、結構な熱量で。
「——もうさ、やっぱり専属メイドが最高だよね。あ、飲み物ちょーだい♡」
「はい、かしこまりました。どうぞ……美味しいですか?」
「うん!いつもありがとね♪」
「ぐっ、なんて羨ましい……精霊神さま、どうすれば、この立場で、専属の兎耳メイドさんを連れて、好きな時に心置きなくイチャイチャできると思いますか?」
「えー、気にせずイチャイチャしたら?」
現在、特別貴賓室のソファで、金髪狐耳メイドに膝枕をしてもらう銀髪金眼美少年に顔を寄せる水色髪の男の図となっている。
「以前、妻たちに怒られまして……」
「ありゃ、そうなの?それじゃあ、ていやー、って立場捨てるしかないよねー♪」
「うーむ、隠居ですか……」
「定命のキミらはどうしたって余生の過ごし方が大切だからね。最後は好きなものに囲まれたいって思うのは自然なことさ。ま、キミにはまだまだ早いけど——」
その場所を訪れたのは、最高神が一たる精霊神ソーマ、その御一行。
「思う存分、ハピラビを応援できるのも魅力ですなぁ……」
「だねぇ♡今日のライブも良かった♪」
「ええ、今日のネネたそも尊かったですな」
「あはは、相変わらずのネネたそ推しだよねえ♪ボクは、イスカちゃん推しだから♡」
「イスカちゃんも良いですなぁ……竜人らしく背が高いですが、それを活かしたダイナミックで、しかし、キレを失わぬダンスの実力……今回の新曲で、ソロダンスパートがあるのも納得でした」
「実際、大変なんじゃないかな?種族的にも、敏捷性って高くないとは思うし。もうね、裏での努力が目に見えるのがね……全身全霊、ボクらを魅せてくれてる、ってのが、ホント尊いよねぇ♡」
メイド談義からHappyLuckyRabbits通称ハピラビ談義に移行し、熱を持った語り合いが行われている場にいるのは、九名。
精霊神ソーマ、金髪狐耳メイドのレナ、レナとソーマのかたわらで眠る三ツ首の小さな黒龍ベルヌス。藍色の長髪美人のカレンに、スキンヘッドのガノス。桃色髪の少年エレン、そのそばに薄紅長髪のレヴァスと、見るからに軍人なセルゲイ。
そして、最後の一名——青髪の男。
精霊神ソーマとメイド&ハピラビ談義をしていた彼の正体、それは——
「いや、精霊神さまとの話は、毎回楽しくていけませんな……そろそろ、本題に入ろうか」
「はぁ……散々脱線したのは——陛下と精霊神さまのせいなんですが?」
「ふははははは!違いない!カレンは、物言いが、ノルドの奴に似てきたな!」
青髪の彼は、ファルデア王国、現国王。
ラシエル=ド=ファルデア、その人である。




