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負けてもいいよ高校生だし  作者: 奥羽大曲
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孤独は嫌だけど泥沼も嫌だ

何故俺が恋愛を面倒に思っているのか。普通の生活を望んでいるのか。


何故俺が一人暮らしをしているのか。


家入家というのは、この世の地獄のような場所だった。そう思うようになったのは母親の行き過ぎた教育、つまりスパルタ教育が原因だ。


人というのは疲れたらそこでやる気を失う。最初の頃はそれが当たり前と信じていたのが、段々と世の中に触れ異常なマインドから解放される。同時にそれまでなんとも思っていなかった教育方法に疑問を抱き、不信感を抱き、反逆の感情を抱く。

ここで誤解なきよう伝えておくが、父親との関係は悪くない。ただ多忙故に殆ど家に帰って来なかった。それだけだ。今一人暮らしが出来ているのも父親が資金援助をしているからであって、そこからも関係は悪くないという証明ができる。あくまであの母親が敵なのだ。


当時の睡眠時間は1時間もなかった。それでいて多くの勉強をさせられるのだ。よく俺は今まで耐えたと思う。この頃の束の間の休息、それは羽川家に預けられた時だった。将棋界の天才、羽川善晴には可愛がって貰ったし、こんな素人の俺に沢山教えてくれた。だからこそ、先日の事件は非常に衝撃だったし、心に大きな穴が空いた。ただ本当に苦しかったのは家族の方だ。その家族が平然とした状態で過ごせているのに、ただの知り合いがいつまでも落ち込んでなどいられない。


恋愛を面倒と感じるのはこの頃の友達関係にある。はっきり言おう、咲以外の女友達もそれなりにいた。しかし、それなりにいれば泥沼は起きる。ただでさえ自宅で疲弊しているのに何故学校でも疲弊しないといけないのか。「俊光くんは私のもの」という話は何度も聞いたが、俺はものじゃない。お前の所有物じゃない。そういったしがらみは面倒この上ない。だから咲以外の女友達を作るのをやめた。自分を守る為だ。趣味を言わないのは同じ趣味と言われて友達になる口実を与えたくないからだ。

ちなみに俺は彼女が出来たことはない。と言っている。上記の発言はあくまで向こうが勝手に言っているだけであり、俺は一度も公認したことはない。従ってカップルではない。片想いで終わらせている。


なのに、今転校生によって俺は、その宣言を放棄せざるを得ない状況となった。

「俊光くんって、一人暮らしなの?」

「…あぁ、そうだが?」

「大変じゃないの?」

「快適だ。他人に干渉されないのが非常に快適だ。」

無論、男友達や咲が干渉する分には構わない。それは苦痛には値しないからだ。


なんとか転校生との話は終わり、近本やこれまた俺の友達である橋立瑞希(はしだてみずき)との会話に移る。普通だが、あの女が来てからはこれも非常に気が楽で楽しい時間になった、ように感じる。

近本「今度のテスト、大丈夫か?」

家入「あぁ、俺は別に普通に勉強して普通に点を取る算段だ。」

橋立「近本は野球部もあるから、結構忙しいんじゃねぇの?」

近本「まぁ忙しいが、野球部ってのはマネージャーってのがあってな。」

橋立「そういやそっちは美人マネージャーの中野(なかの)ルナがいたな。」

家入「色々大変そうだよな、野球部。」

近本「まぁその通り。だが、橋立とかモテたいなら野球部に来たらどうだ?マネージャーは可愛い子勢揃いだぞ?」

橋立「まぁ中野始め、美人マネージャーの集いだしな。家入みたいに彼女なんて興味ありませんって感じなら良いんだが、まぁ確かに俺はモテたい欲があるしな…って、野球部以外にも美人マネージャーいる部活はあるだろ!お前がいる所で勝ち目ねぇよ!」

たわいもない会話だ。これでいい。俺は女に興味のない男子生徒A、近本がモテるイケメン野球部キャプテン生徒、橋立がモテたいと考えてる男子生徒Bだ。


家に帰ればいつも通り、趣味に没頭する。明日は休みだ。テスト前だから勉強も必要だろうが、休息だって必要だ。

「たまには咲も呼んでみるか。一人で将棋を指すのは違うし。」


「テスト前なのに将棋って、まぁいいけど?」

「助かる。まぁ勉強会兼将棋ってことで。」

「そう言ってテスト勉強をした試しはないけどね。」


世の中咲みたいな女子ばかりなら、かなり楽な世界だろう。


翌日、あの子はやってきた。ただ服装をおしゃれにするとか、そう言ったことはない。ただ友達の家に遊びにきた友達、これが気楽で良い。

「早速、将棋指そうか!」

「勿論だ!」


将棋盤を持ってきて将棋を指す。お互い素人、プロから見れば稚拙な出来だろう。

「それ、お父さんが教えてたやつ!」

「そう、プロの一手だ!」


「そういや、転校生、結構グイグイ来てて疲れてない?」

「普通に疲れてる。世の中の女子みんな咲と同じ性格なら良いのにっていつも思ってる。」

「やっぱ疲れてるか〜。まぁそうだよね。」

本当に俺の心を読むのが得意だな。


「俊光って将棋指してる時は昔みたいに楽しそうにしてるなぁって思って」

「まぁそうだろうな。趣味は楽しいものだし。ただ友達と喋ってる時も楽しそうにしてるはずだぞ?」

「って言っても隣のクラスじゃわからん!」

「それはそうか!」

既に五局も対局している。時間が過ぎるのがあっという間だ。


「そういえば、聖兄さん、リーグでまた勝ったんだってな。」

「そう!プロ入りも近いって思ってる!」

「まぁあの人はお遊びじゃなくて命を、人生を懸けて戦っているからなぁ。プロ入りしたら全力で応援しないとな!」

「お父さんにも報告しないと!」

牢屋に父親がいるなんて辛いに決まってる。でもここまで明るく接する咲に俺は敬意を示していた。


一日中遊んで、テスト勉強はしなかったが、まぁそれで良い。勉強は学校ですれば無問題(モウマンタイ)だ。


「俊光、またね。」


何故咲と同じクラスじゃないんだろう。彼女と同じクラスならより一層楽しい学校生活だっただろう。


「まぁ高望みかな。」

そう思うことにした。


「ところで、なんであの女は、転校初日からグイグイ来てるんだろうか。モヤモヤするなぁ。」

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