表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
えるだ~すとりあ -ゆうしゃと まおうの ものがたり‐  作者: 秋山静夜
ものくろ~む の ゆうしゃとまおう
8/23

第8話 ものくろ~む の ゆめおわり

まおうが めをさますと、そらが みえました。


しろ と くろが まざった はいいろの そらではなく、めのさめるような あおいそらが ひろがっています。


せいけんと まけんの ちからが ぶつかったことで、はいいろの くもは ふきとんでしまいました。


めがさめましたか?


ゆうしゃが きいてきます。


まおうは じぶんが ゆうしゃに ひざまくら されていることに きづきました。


あおいそらと いっしょに、ゆうしゃの はれやかな かおが みえます。


ゆうしゃは まおうに かったので、じつに きぶんが よさそうです。


めは、さめたよ。いろんな いみでな。


まおうは すこしふまんそうに こたえました。


まおうは ゆうしゃに まけたので、きぶんが よくなかったですが、くろいおしろに いたときよりも こころのなかは はればれとした きもちに なっていました。


せいけんが まけた まおうを ちょうはつします。


わたしの ふういんの おかげね、と じしんまんまんに いいました。


それをきいて、ゆうしゃも まおうも ちょっとだけイラッとしましたが、おたがいにふまんそうな かおをしていることに きづいて、おもわず わらってしまいました。


あおいそらのした、はれやかな わらいごえが ひびきます。


これから、どうするんだ?


ひとしきりわらったあと、まおうは ゆうしゃに ききました。


おまえが『てき』として まぞくの おうこくに いくのなら、こんどこそ『みんな』のために おれが おまえをとめる。


まおうは しんけんな かくごを くちにします。


ゆうしゃも、まじめに かんがえてから こたえました。


すこしだけ とおまわりして、もうちょっと せかいを めぐってから、きめようと おもいます。


いますぐに こたえは だせないと、まおうに こたえました。


ゆうしゃは『はじまりのくに』の おうさまの ことばを おもいだします。


『なにかをはじめたいのなら くろいもりへ むかうといい』


『なにかをおわらせたいのなら しろいみずうみに いってもいい』


『すべてをおわらせたいのなら、もういちど わたしのところへ くるといい』


たしかに、くろいもりの くろいおしろで まおうと であい、なにかが はじまった よかんがします。


だけど、なにかをおわらせようとも すべてをおわらせようとも いまの ゆうしゃは おもっていません。


だから、おうさまに いわれたことの どれでもない せんたくしをえらんで、どこでもないばしょを めざそうと おもったのです。


ゆうしゃは とおいちへいを ながめながら、じぶんのきもちを まおうに つたえます。


『みんな』のために がんばりたいきもちは いまもかわりません。でも、じぶんが しあわせに なれなかったとしても、じぶんの しあわせが どこにあるかくらいは いまのうちに しっておきたいです。


ゆうしゃは そういいながら、むいしきに まおうの くろいかみを なでていました。


まおうは おどろきながらも じぶんのからだが まだうまく うごかせないので、ゆうしゃに されるがままです。


じぶんは まけたのだから しかたない、と うけいれつつも ゆうしゃにむけて いいました。


しあわせなんて、ほしいときに てにはいらなくても、わすれたころに ころがってくるものかもしれないぞ。


じぶんのくにでない とおい いこくで、かつて ほしかったものが とつぜん てにはいった まおうは、しみじみと じぶんのことばを じっかんしながら いいました。


そう、なんですね。わたしには まだ、しあわせが どんなかたちをしているのか わからないので、もしよかったら いっしょに さがしてくれますか?


ゆうしゃは まおうを みつめていいます。まおうにとって、とても まぶしいひとみでみつめながら。


まおうは はずかしそうに めをそらしながら こたえました。


ことわったところで、そこのポンコツな せいけんのせいで どうせおまえと いっしょにいないといけないんだ。それっぽいものが みつかったら、おしえてやるよ。


……じぶんばかり もらっても、きぶんが わるいしな。


さいごは ゆうしゃに きこえないように、ことばを つけたして。



こうして、しろ と くろだけで つむがれた ものくろ~む の ゆめからさめて、ゆうしゃと まおうは いっしょに あゆみだします。


ながく とおく つづいていく、いろどりあふれる みらいへと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ