第8話 ものくろ~む の ゆめおわり
まおうが めをさますと、そらが みえました。
しろ と くろが まざった はいいろの そらではなく、めのさめるような あおいそらが ひろがっています。
せいけんと まけんの ちからが ぶつかったことで、はいいろの くもは ふきとんでしまいました。
めがさめましたか?
ゆうしゃが きいてきます。
まおうは じぶんが ゆうしゃに ひざまくら されていることに きづきました。
あおいそらと いっしょに、ゆうしゃの はれやかな かおが みえます。
ゆうしゃは まおうに かったので、じつに きぶんが よさそうです。
めは、さめたよ。いろんな いみでな。
まおうは すこしふまんそうに こたえました。
まおうは ゆうしゃに まけたので、きぶんが よくなかったですが、くろいおしろに いたときよりも こころのなかは はればれとした きもちに なっていました。
せいけんが まけた まおうを ちょうはつします。
わたしの ふういんの おかげね、と じしんまんまんに いいました。
それをきいて、ゆうしゃも まおうも ちょっとだけイラッとしましたが、おたがいにふまんそうな かおをしていることに きづいて、おもわず わらってしまいました。
あおいそらのした、はれやかな わらいごえが ひびきます。
これから、どうするんだ?
ひとしきりわらったあと、まおうは ゆうしゃに ききました。
おまえが『てき』として まぞくの おうこくに いくのなら、こんどこそ『みんな』のために おれが おまえをとめる。
まおうは しんけんな かくごを くちにします。
ゆうしゃも、まじめに かんがえてから こたえました。
すこしだけ とおまわりして、もうちょっと せかいを めぐってから、きめようと おもいます。
いますぐに こたえは だせないと、まおうに こたえました。
ゆうしゃは『はじまりのくに』の おうさまの ことばを おもいだします。
『なにかをはじめたいのなら くろいもりへ むかうといい』
『なにかをおわらせたいのなら しろいみずうみに いってもいい』
『すべてをおわらせたいのなら、もういちど わたしのところへ くるといい』
たしかに、くろいもりの くろいおしろで まおうと であい、なにかが はじまった よかんがします。
だけど、なにかをおわらせようとも すべてをおわらせようとも いまの ゆうしゃは おもっていません。
だから、おうさまに いわれたことの どれでもない せんたくしをえらんで、どこでもないばしょを めざそうと おもったのです。
ゆうしゃは とおいちへいを ながめながら、じぶんのきもちを まおうに つたえます。
『みんな』のために がんばりたいきもちは いまもかわりません。でも、じぶんが しあわせに なれなかったとしても、じぶんの しあわせが どこにあるかくらいは いまのうちに しっておきたいです。
ゆうしゃは そういいながら、むいしきに まおうの くろいかみを なでていました。
まおうは おどろきながらも じぶんのからだが まだうまく うごかせないので、ゆうしゃに されるがままです。
じぶんは まけたのだから しかたない、と うけいれつつも ゆうしゃにむけて いいました。
しあわせなんて、ほしいときに てにはいらなくても、わすれたころに ころがってくるものかもしれないぞ。
じぶんのくにでない とおい いこくで、かつて ほしかったものが とつぜん てにはいった まおうは、しみじみと じぶんのことばを じっかんしながら いいました。
そう、なんですね。わたしには まだ、しあわせが どんなかたちをしているのか わからないので、もしよかったら いっしょに さがしてくれますか?
ゆうしゃは まおうを みつめていいます。まおうにとって、とても まぶしいひとみでみつめながら。
まおうは はずかしそうに めをそらしながら こたえました。
ことわったところで、そこのポンコツな せいけんのせいで どうせおまえと いっしょにいないといけないんだ。それっぽいものが みつかったら、おしえてやるよ。
……じぶんばかり もらっても、きぶんが わるいしな。
さいごは ゆうしゃに きこえないように、ことばを つけたして。
こうして、しろ と くろだけで つむがれた ものくろ~む の ゆめからさめて、ゆうしゃと まおうは いっしょに あゆみだします。
ながく とおく つづいていく、いろどりあふれる みらいへと。