第4話 やくたたず の ゆうしゃ
せいけんの せつめいは こういったものでした。
まおうをたおすことは むずかしそうだったので まおうの ちからをせいけんの なかに ふういんした、というのです。
“ふういんの ふくさようで まおうは どうやっても ころすことが できなくなった”
“まおうのちからとたましいは せいけんのなかなので、まおうは せいけんをもつ ゆうしゃといっしょにいないといけない”
わるびれもなく せいけんは いいました。
このせつめいをきいて おこったのは まおうでした。
としわかい しょうねんのすがたで せいけんに むかってガミガミと おこっています。
そんな ようすをみながら、ゆうしゃは ぼんやりと かんがえごとをしていました。
ふういん とやらのせいで まおうをころすことは できなくなりました。
なのに、まおうとは これからいっしょにいないと いけないそうです。
あんまり かんがえごとをしない あたまで、ゆうしゃは いっしょうけんめい かんがえました。
ゆうしゃが、ころすことのできない まぞくは はじめてです。
ゆうしゃが、ころさなくていい まぞくは、はじめてです。
だとしたら、これから どうなってしまうのでしょう?
ゆうしゃは いっしょうけんめい かんがえます。
でも ゆうしゃが こたえをだすよりもさきに、まおうと せいけんのケンカが おわってしまいました。
まおうは、しかたないので ゆうしゃについていく といいます。
ゆうしゃの すきをみて せいけんを こわしてやるとも いいました。
せいけんは こわせるものなら こわしてみなさい、と えらそうに うられたケンカを かっています。
ゆうしゃは せいけんをこわされたらこまるな、と おもいながらも いつもよりまわりがにぎやかなので ついクスリと わらってしまいました。
ひとまず はなしがついたので ふたりと いっぽんは くろいもりのそとへと でていきます。
くろいもりのそとには ふたりの じんぶつが まちかまえていました。
しろいきし と くろいきし、ふたりは『はじまりのくに』の おうさまに めいれいされて ゆうしゃを まっていたそうです。
しろいきしが きいてきます。
まおうには あえましたか?
ゆうしゃは こたえます。
あえました。
くろいきしが きいてきます。
まおうは たおせましたか?
ゆうしゃは こたえます。
たおせました。
うそはついていないよね 、と こころのなかで おもいながら ゆうしゃは どうどうと いいきります。
ふたりのきしが どうじに きいてきます。
それでは、そこのしょうねんは だれですか?
ゆうしゃは こたえられません。
すなおに まじめに そだったものだから、うそをつくことが できないのです。
ついでに きのきいた いいわけもできません。
だから しょうねんが かわりに こたえます。
おれは まおうだ。
まおうも まじめに そだったものだから、うそをつくことが だいきらい だったのです。
じぶんを できることなら ごまかしたくありません。
しろのきしも くろのきしも つるぎをぬきました。
まおうが いきていたのなら しかたない、と ふたりとも くちをそろえます。
まおうも めんどくさそうに まけんをてに します。
ふういんで しゅつりょくは おちていますが、ただの にんげん あいてなら もんだいないと まおうは はんだんしました。
ふたりの きしは つるぎをふりかぶり《《ゆうしゃ》》にむけて きりかかりました。
ゆうしゃは おどろきつつも せいけんで ふたりのこうげきをふせぎます。
きしたちが ゆうしゃをきりつけたので せいけんが もうこうぎを しました。
ふたりのきしは せいけんが しゃべったことに おどろきながらも、これは おうさまの めいれいなのだと いいました。
“まおうが いきていたのなら ゆうしゃを きれ”
そう めいれいされた といいます。
ゆうしゃは おどろき とまどっています。
どうして じぶんが ころされるのか?
どうして じぶんが しななければ いけないのか?
とつぜんのことに あたまがまっしろに なってしまいました。
そんなゆうしゃにむけて ふたりのきしは ようしゃなく つるぎをたたきつけます。
ゆうしゃは からだの はんしゃで きしの こうげきをはらいのけますが それもながく もちそうにありません。
にんげんと たたかう れんしゅうをしてこなかった ゆうしゃに、にんげんのきしを きることは できないのですから。
しょうねんの すがたをした まおうは ぼうせんいっぽうの ゆうしゃをみて ぼんやりと かんがえごとをしています。
このまま ゆうしゃが まけたら じぶんは どうなるのだろう、とか。
ついでに せいけんが こわれてくれたら じぶんは じゆうになりそうだ、とか。
なんで、いっしょうけんめい がんばったやつが こんなめに あうんだろう、とか。
あんまり かんがえごとをしないように していた あたまで、たくさん たくさん かんがえました。
ですが、かんがえごとをしているあいだに ゆうしゃは ひざをついて、いまにも まけそうです。
ふたりのきしは、もう つるぎをふりかぶっています。
やくたたずの ゆうしゃは もういらない、と きしたちは つけくわえて いいました。
それをきいた まおうは、なんでか すっごく あたまにきて、きしのつるぎをゆうしゃのかわりに うけとめていました。
みんな、おどろいています。
まおうに こうげきをとめられた ふたりのきしも。
まおうに まもってもらった ゆうしゃも。
おもわず からだが うごいていた まおう ほんにんも おどろいています。
ただ、おどろいてばかりも いられないので まおうは ふたりのきしを まおうのちからで ふきとばしました。
ふういんされているので まおうに とっては よわよわしい ちからでしたが、にんげんのきしに とっては すごくつよい ちからです。
ふたりのきしは あわてて まおうから にげていきました。
まおうは きしが にげていったのをみて ひといき つきます。
だけど、おちついてばかりも いられません。
だって、つぎに どんなことばをかけられるか よそうが ついていたからです。
ゆうしゃが ききます。
どうして、わたしをたすけて くれたんですか?
まおうは よそうどおりの しつもんが きたので ためいきをつきます。
だって、まおうは じぶんが なんでゆうしゃをたすけたのか よくわからなかったからです。
さて、ゆうしゃに なんと こたえましょう?