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えるだ~すとりあ -ゆうしゃと まおうの ものがたり‐  作者: 秋山静夜
どれいのくに と まほうつかい
18/23

第18話 みんなのため に がんばること


『どれいのくに』のひとたちで、まだ たっているひとは ひとりもいません。


─────どれいのおうさまをのぞいて。


ふざけた、むすめだ。それほどまでに われらが にくいか?


にくしみのこもった どれいのおうさまの ひとみが、まほうつかいのおんなのこをにらみつけます。


……べつに、あんたたちが にくいから こんなことしたわけじゃないよ。まあ、よわいものをよってたかっていじめるのは みっともないと おもうけどさ。


まほうつかいのおんなのこは とくにかんじょうをこめることなく、つかみどころのない かぜのように こたえました。


そんな くだらないおもいで、わがくにの へいしたちをころしたのか?


どれいのおうさまの ことばには めにみえるのでは というほどの『ぞうお』が こめられていました。


ですが、はるかぜのような おんなのこに その『ぞうお』が とどくことは ありません。


ころしたなんて ひとぎきが わるい、みんな いきてるよ。


まほうつかいのおんなのこが いったように、へいしや まほうつかいのどれいの ひとたちは みんないしきをうしなっただけのようです。


だれかをころすとか、めんどくさいでしょ。ころすまえも、ころしたあともさ。どっちがさきに ころしたとか、どっちがさきに どれいだったとかで あんたや うちのさとのじいさまたちは ずっとにくみあってんだもんね。


まほうつかいのおんなのこの ことばは、それをきいていた ゆうしゃのこころに ひびきました。


“なんで、ころすの?”


かつてゆうしゃは まほうつかいのおんなのこに きかれました。


そのとき なんとこたえ、いまなら なんて こたえるのか。ゆうしゃは じぶんで かんがえます。


さて、と。それじゃあ このくにに きた いちばんのもくてきをはたしとこうかな。


まほうつかいのおんなのこは、まほうつかいのどれいのひとたちの しゅうだんのところへ あるいていきます。


まほうのちからが かげんしてあったのか、まほうつかいのどれいのひとたちは めをさましはじめました。


まほうつかいのおんなのこは、そのなかで いちばん はつげんりょくのありそうな おとこのひとに めぼしをつけて ちかづきます。


ひ、ひい。おたすけくださいっ。われわれも めいれいされてしかたなかったのです。


おとこのひとは、じめんにあたまをこすりつけるように おんなのこへ あやまります。


あたしは べつに おこっていないよ。ただ ここには おつかいで きただけだしさ。さとの じいさんたちが、このくにで『どれい』になった まほうつかいたちをつれもどせって いってきたんだ。


まほうつかいのおんなのこは、おとこのひとへ てをさしだします。


どうする? さとに かえりたいなら、あたしが せきにんもって みんなをつれてくけど。


かぜが ないだような、しずかなひとみで まほうつかいのおんなのこは いいました。


おとこのひとは ふるえながら まほうつかいのおんなのこのてを、《《にぎりかえしませんでした》》。


……わたしたちは、もどれません。もどりたくは ないのです。このくにでなら、わたしたちは まずしいくらしをしなくてすむ。どんなに ふぐうのあつかいをうけたとしても、それでも まほうつかいのさとの くらしよりは ゆたかなのです。


ふるえて なみだをながしながら、おとこのひとは こたえました。


おとこのひとだけではありません。まほうつかいのどれいのひとたちは、みんなくびをよこにふっていました。


まほうつかいのおんなのこは、このこたえが わかっていたかのように さしだしていた てをひっこめます。


ま、そうだよね~。なんとなくそんなきは してたけどさ。


おんなのこは もういちど、そらをみあげて ながれるくもをながめます。


まほうつかいのおんなのこの がんばりは、むだぼねに なってしまいました。


─────あ、あの。


ゆうしゃが しんぱいそうに、まほうつかいのおんなのこへ こえをかけます。


ん、しんぱいしてくれんの? だいじょうぶだよ、なにもかんじない。たまには きまぐれでさ、だれかの おねがいをきいて『みんな』のために がんばろうかなと おもったけど。うん、ほんとうに なにもかんじないもんだね。


おんなのこの ことばどおり、かのじょのこころには かぜが ふいていないようです。


……なにも、かんじませんか?


くちにしながら、ゆうしゃは なぜか じぶんのこころが いたむのをかんじます。


うん、なにもかんじないよ。あたしも いちどだけさ、あんたのまねをしてみようとおもったんだ。だれかのりゆうで、『みんな』のためにって。……いつもこんな きもちだったんだね、あんた。


さみしそうなかおで、まほうつかいのおんなのこは ゆうしゃをみていました。


それが しれて、よかった。それだけで きょうの きまぐれには いみがあったよ。そして、あんたが いまのあたしをみて なにかをかんじたなら、そのきもちをたまに おもいだしてみて。


まほうつかいのおんなのこは、あたたかい はるのかぜをまといながら いいました。


あたしたちは、『みんな』のためにがんばる あんたをみながら、いつも そうおもってたんだからさ。

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