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えるだ~すとりあ -ゆうしゃと まおうの ものがたり‐  作者: 秋山静夜
どれいのくに と まほうつかい
16/23

第16話 まほうつかいと ゆうしゃとまおう

なんのつもりだ、まほうつかいのむすめ。


みんしゅうのひとごみをごういんに わってやってきた まほうつかいのおんなのこに、どれいのおうさまは するどいしせんをむけます。


あいさつに きただけだよ。あんたのとこに さらわれた さとのこどもをかえしてもらうよってね。


よくみると、まほうつかいのおんなのこは どれいになっていた まほうつかいのこどもをつれています。


このこの ごしゅじんさまってやつは ぶっとばしたけど、いちおう このくにの おうさまにも あいさつしたほうが すじがとおるでしょ?


まほうつかいのおんなのこは ひょうひょうとした わらいがおをおうさまに むけています。


なにが あいさつだ、ばんぞくめ。いまは それどころではないというのに、よけいな もんだいをもちこみおって。


どれいのおうさまは いまいましそうに いいます。


なんか とりこみちゅうっぽいもんね。みたかんじ、そこの まぞくのこ の『しょけい』で もめてるかんじ?


まほうつかいのおんなのこは しょけいだいの まえにいるふたり、ゆうしゃとまおうにむけて ききました。


ああ、そうだよ。たすけてやりたいが、おれが たすけると このくにの にんげんすべてと たたかいになる。そして ゆうしゃは……。


まおうは、ゆうしゃをみて いいよどみます。


あ~、なるほどね。そのこをたすけてあげたいけど、そうしたら にんげんの『みんな』をてきにまわさないといけなくなる。それは『みんな』のゆうしゃとして できないって なやんでんだ。


まほうつかいのおんなのこは すぐに このじょうきょうをりかいました。


そのこは、わたしに たすけられたくないそうです。わたしが、そのこの おやをころしたから。……でも、だからこそ、わたしは このこが ころされるのをみすごすなんてできないっ。


ゆうしゃの ひつうな こえが ひびきます。


ずいぶんと わがままなゆうしゃだねぇ。……わがままが、いえるように なったんだね。


まほうつかいのおんなのこは、ゆうしゃをみて かんがいぶかそうに しています。


よし、それじゃこうしよう。あたしが このくにの れんちゅうの みかたをしてあげるからさ、あんたは このこをたすけてあげなよ。


まほうつかいのおんなのこは、あっけらかんと いいきりました。


─────え、それは、どういうことですか?


ゆうしゃには、まほうつかいのおんなのこが いった いみが わかりません。


だからぁ、やりたいことをやってみなっての。あとの めんどうは あたしが かたづけるからさ。


ふざ、けるな。ぼくは こいつなんかに、たすけられたくない!


まぞくのこどもが さけびます。


うるさいねぇ。たすけられたくなきゃ、つかまるなっての。じぶんのすきに しにたいんだったらさ、つよくなりな。


まほうつかいのおんなのこは、つよく つきはなすように いいました。


かってなことをいいおって、どう せきにんをとるつもりだ。まほうつかいのむすめよ。


どれいのおうさまは、とても ふゆかいそうです。


せきにん? そんなもの とりたいひとが とるでしょ、っていいたいとこだけど。きょうは ちょっときぶんが いいから、ぜんぶの めんどうをみてやってもいいよ。


まほうつかいのおんなのこは、ほんとうに きぶんがよさそうに『しょけいだい』のまえへ、ゆうしゃと まおうと むきあうように たちました。


ふん、もしも まけたときは どうあっても きさまに せきにんをとってもらうぞ。


どれいのおうさまは、いまいましげにいいます。


……おい、つまりはどういうことだよ。


まおうが、じょうきょうをうまくりかいできずに ききました。


だから、あんたたちは すきに このこをたすけなってこと。あたしが このくにの れんちゅうのかわりに それをそしする。


ふざけんな、それに なんのいみが あるってんだよ。


いみは あるよ。きょうは、あたしが『みんな』のためにがんばるから、きょうの ゆうしゃは じぶんのただしいと おもうことをしたらいい。


まほうつかいは、ゆうしゃに むけていいました。


ゆうしゃは、じぶんのむねに ちいさな ひかりが ともるのをかんじます。


じぶんが『みんな』のために がんばらなくても、かわりに がんばってくれるひとがいる。


まよいが、すこしだけ はれました。


それでは わたしは、あなたをたおして、そのこをたすければいいんですね?


ゆうしゃは せいけんをにぎります。


そうだね、それが あんたのやりたいことならさ。


まほうつかいは こたえます。


ゆうしゃは かおをあげ、まほうつかいに いどみました。



がっしゃ~ん! どっご~ん!



ゆうしゃは まほうつかいにボコボコにされました。


ちょっと~、あたしが かって どうすんのさ?


まほうつかいは こまったように いいます。


おれと かわれ、まぞくのせきにんは まおうである おれがとる!


まおうは まけんをてにして まほうつかいに いどみます。



がっしゃ~ん! どっご~ん!



まおうは、まほうつかいにボコボコにされました。


だ、か、ら、あたしが かって どうすんのっての。


まほうつかいは あきれたかおで ゆうしゃとまおうをみています。


けっちゃくが ついたのなら、いいかげんに『しょけい』をすいこうするが?


どれいのおうさまが いいます。


まだ、です。ゆうしゃが たちあがります。


まだ、だよ。まおうが たちあがりました。


ふたりは せいけんと まけんをにぎって いっしょに はしりだしました。


そうこなくっちゃ、あたしも きまぐれをおこした いみがないからね。


まほうつかいは、ゆうしゃとまおうが たちあがったのをみて よろこびます。


ゆうしゃのせいけんが しろく ひかります。


まおうのまけんが くろく ひかります。


じょうとうだよ! ふたりがかりで きな!!


それを、まほうつかいは にじいろのひかりで かきけして、やっぱり ふたりをボコボコにしました。


つよ、すぎるだろう。まおうが おもわずつぶやきます。


ゆうしゃも まおうのきもちに どうかんです。


だけど、ふたりは また たちあがります。


かてないことは、まけていい りゆうに ならないからです。


『みんな』のために たたかうときも、『だれか』のために たたかうときも、まけてはいけないことは いっしょだと ゆうしゃは きづきました。


いいよ、なんどでも かかっておいで。


くろいローブをなびかせて、まほうつかいは ふたりに つげます。


ゆうしゃとまおうの ふたりは、なんどだって たちあがりつづけました。



がっしゃ~ん! どっご~ん!



がっしゃ~ん! どっご~ん!



なんど まほうつかいにボコボコにされたって、ふたりは あきらめることをしりません。


なんで、おまえが ぼくのために そこまでするんだ?


ずっとみていた まぞくのこどもが、いみもわからず つぶやきました。


なんで、じぶんのおやをころした ちょうほんにんの ゆうしゃが、からだをはって じぶんをたすけようとしているのかが わかりません。


そのとき、まほうつかいが たおれます。


もうむり~。まりょくが つきちゃった。


そらをみあげて、だいのじになって たおれました。


はぁ、はぁ。おれたちは、かったのか?


はぁ、はぁ。おそらくは。


ゆうしゃとまおうは かたで いきをして じぶんたちの しょうりをかくにんします。


まほうつかいのおんなのこは、きもちよさそうな ひょうじょうで ながれるくもを ながめています。


ゆうしゃは、すごいね。あたしは『みんな』のためにって りゆうじゃ、あんたみたいに がんばれなかった。


じぶんが まけたりゆうを、かたります。


だけどあんたは、『みんな』のためじゃなくたって こんなに がんばれるんだよ。


『みんな』のためにがんばることが あなたの すべてではないと、まほうつかいは ゆうしゃにかたります。


ゆうしゃは つかれはてていて、まほうつかいが なにをいいたかったのか うまくりかいできません。


ですが、のこった ちからをふりしぼって どうにか まぞくのこどものところに かけつけます。


なぜか、しょけいにんのひとは いませんでした。


ゆうしゃは、まぞくのこどもに いいます。


あなたが どうおもおうと、わたしは あなたをたすけます。わたしをにくんでもいい。ころしたいなら それでいい。だけどわたしは、あなたをたすけます。


ゆうしゃは けついをこめて いいました。


すきに、しろよ。おまえに たすけられる、よわいぼくが わるいんだ。とうさんたちをまもれなかった、よわいぼくが わるいんだ。


まぞくのこどもは あきらめたように、ゆうしゃに たすけられる じぶんじしんをみとめました。


ですがそのとき、おおぜいの けはいが ゆうしゃたちをかこみます。


『どれいのくに』の すべてのへいしが ぶきをもって とりかこんでいたのです。



─────それはそうでしょう。『みんな』の みかたをしない ということは、『みんな』をてきにまわす ということなのですから。

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