ワールド ワールド ワールド
●約45分で綴られる、『ワールド ワールド ワールド』という名前の壮大な物語。
【収録曲】
1.ワールド ワールド ワールド
2.アフターダーク
3.旅立つ君へ
4.ネオテニー
5.トラベログ
6.No.9
7.ナイトダイビング
8.ライカ
9.惑星
10.転がる岩、君に朝が降る
11.ワールド ワールド
12.或る街の群青
13.新しい世界
ASIAN KUNG-FU GENERATIONのメジャー4thアルバム。前作の『ファンクラブ』は暗く沈んだ雰囲気を分かりやすく押し出していましたが、今作は一転して、壮大で力強さを感じられる曲が多く、前作とは異なった方向性の「コンセプトアルバム」といった印象を受けました。タイトルチューンの『ワールド ワールド ワールド』はコーラスをいくつにも重ねたサウンドが特徴的で、「スケールの大きな作品のオープニングナンバー」としての期待感を分かりやすく煽ってきます。
ただ、「スケールが大きい」と言っても、「ストリングス等で音数を増やした」というわけではありません。より正確に言うならば、ボーカル・ギター・ベース・ドラムという基本構成の中でサウンドに上手く起伏を付けたり、徹底的に盛り上がりを重視したメロディを綴ることによって、彼らの持ち味である「楽曲のドラマ性」が従来よりもさらに強調され、それが壮大さに繋がっているといった感じでしょうか。『旅立つ君へ』~『ネオテニー』の繋ぎ方や、『ライカ』の鮮烈にポップでありながらも物悲しいメロディ、『或る街の群青』の最初のAメロが終わってからの怒涛の展開等、今作の「聴き所」を挙げればきりが無いでしょう。
そういった楽曲を経て最後に辿り着くのが『新しい世界』という曲。溜まった感情を一気に解放させるような爆発力のあるサウンドには終始圧倒されました。この曲には「憂鬱な君はEのコードを」という歌詞が出てくるのですが、それに呼応するように曲の最後には「E」のコードが鳴らされ、心地良い余韻を与えつつ今作は幕を閉じます。
「楽曲のドラマ性」を徹底的に重視し、約45分でまるで壮大なスケールの物語を見終えたかのような満足感をリスナーに与えてくれる傑作。彼らの代表作と呼ばれることの多い『ソルファ』よりも、ある意味「彼ららしさ」を大いに感じ取れるアルバムでした。
評価:★★★★★