君繋ファイブエム
●シンプルでありながらシンプルなだけではない、ギターロックの名盤。
【収録曲】
1.フラッシュバック
2.未来の破片
3.電波塔
4.アンダースタンド
5.夏の日、残像
6.無限グライダー
7.その訳を
8.N.G.S.
9.自閉探索
10.E
11.君という花
12.ノーネーム
ASIAN KUNG-FU GENERATIONが2003年にリリースしたメジャー1stアルバム。私は今作を聴いた当初から「これは名盤だ」という印象があったのですが、長い間、どういう理由でそう感じたのかよく分かっていないところがありました。そして、15年以上経った今になって、ある程度言葉にできそうな気がしたので、この場を借りてレビューしようと思います。
まず、特徴的なのがそのメロディ。別段複雑な展開を見せるわけではなく、言い方を変えれば「シンプルで分かりやすい」ということになりますが、かといって「ベタ」に陥ってしまうわけでもなく、それでいてドラマチックで焦燥感を持たせた旋律には独特なものを感じられます。ハイテンポなギターロックを中心に据えた構成で、音楽性は決して広くないものの、そういったメロディが楽曲を上手く引っ張り上げているおかげでしっかりと「アルバムを通して聴ける」作品になっているのではないでしょうか(もちろん、一曲だけ取り出しても魅力的なのですが)。
また、歌詞の乗せ方も絶妙に感じられました。「細胞膜に包まって 3分間で40倍」(フラッシュバック)や「軋んだその心、それアンダースタンド」(アンダースタンド)のように字面だけだと抽象的なものが多かったりするのですが、メロディと上手く組み合わせることによってキャッチーなものになり、意味を深く考えずとも直感的に盛り上がれるようになっていると思います。
一見単純なギターロックのようでいて、彼らならではの面も明確に受け取れる名盤。デビュー当時から、しっかりと自身の個性を確立できていることを十二分に実感できるアルバムになっているのではないでしょうか。
評価:★★★★★