漫才『特殊詐欺』
ボケ「いゃあ最近物騒ですよね」
ツッコミ「なにを!?」
ボケ「特殊詐欺ってあるじゃないですか」
ツッコミ「いや違う。なんでキミはいつもそうなの?」
ボケ「あの暴力団の資金源とかって言い方じゃないほうがいいと思うんですよね」
ツッコミ「違う違う。進めんな」
ボケ「言葉に憧れるみたいなのあるじゃないですか。だから暴力団って名称じゃなく」
ツッコミ「そうやないいうとるやろ」
ボケ「へなちょこ団とかそういうの──」
ツッコミ「違う! なんだへなちょこ団って……」
ボケ「なんやねんさっきから」
ツッコミ「いやいや、キミはワシの見た目をどう思う?」
ボケ「どうって……」
ツッコミ「うんうん」
ボケ「赤いスーツはないかな? で、こないだね」
ツッコミ「違うわ! アホか!」
ボケ「なんや」
ツッコミ「この大きなマブタの無い目。銀色の体。頭でっかちの姿」
ボケ「容姿は関係あれへん。頑張ってればお客さん認めてくれるから。で、こないだね」
ツッコミ「ちゃうわ!」
ボケ「なんや。どないしたんや」
ツッコミ「ちゃうやろ。どうみても宇宙人。リトルグレイや。それが赤いスーツ着て普通の漫才やってたらおかしいと思わへんか?」
ボケ「おかしいと思っとった。で、こないだね」
ツッコミ「ちゃう! なんでや! なんでキミはそうやねん。わしゃ地球に観光に来て、ビューティフルやなぁこの星は思とったら宇宙船壊れて途方にくれとったところを……なんや、つついてきてどないした」
ボケ「ねぇビューティフルって、なに?」
ツッコミ「──知らんのかい。あれや。美麗とかいう意味や」
ボケ「ビレイ? 美しい。じゃないの」
ツッコミ「……美麗のビは美しいって書くんや」
ボケ「レイは?」
ツッコミ「麗しいだな」
ボケ「あ、レイ子のレイか」
ツッコミ「どのレイ子を言ってるか分からんけどそうや」
ボケ「どういう字だっけ」
ツッコミ「なんやあれや。麓みたいな字や」
ボケ「フトモモ?」
ツッコミ「もうええ! なんでも!」
ツッコミ「せやから宇宙船の修理に金がかかんねん。そこでいろいろあって君の部屋に転がり込んだらお笑いやれへん? いうから、修理費払うためには稼がなあかん思うてそれにのったんや。厳しい世界や。でもワシらには武器があるやないかい。それはワシが宇宙人やいうことや。話題性があるやないかい。普通の漫才やってたらいかんねん。ガンガンいじって貰わんと」
ボケ「えーー……」
ツッコミ「なんや、まだ文句あんのかいな」
ボケ「あんまり容姿をいじるとかいややねんか」
ツッコミ「……そやねんな~。キミ優しすぎるもんな。ワシの大きなマブタのない目から涙ちょちょギれや! だけれども、そういうても、それにつけこむ奴らがおるやん。この前の中学時代の同級生いう女に英語の教材15万で買わされとる。優しさだけではあかんねんぞ?」
ボケ「でも英語覚えたよ」
ツッコミ「覚えとるかぁ! ビューティフルも知らんやつがなにが英語か! そんで知らんおばちゃんに『もう騙されん壺』10万で買ってくるし」
ボケ「でもあれから騙されてないよ」
ツッコミ「そら二日前の話やからな。そう、ポンポン毎日騙されてたまるか! あ、そうや。宇宙船の中にまだ動く圧縮学習機があったわ。ワシが日本語覚えたやつ。それで騙されん学習を叩き込んだらエエわけや」
ボケ「いやいいよ。そういうのにもう騙されないから」
ツッコミ「なんでや! なんで中学の同級生の女とか、見知らぬおばはんの言葉信じるくせに相方のワシの薦めを信じられんのか? もうキミとはマジやっとられんわ」
ボケ「どうもありがとうございました~」
ツッコミ「いや違う。マジな話や。どこ行くねん!」