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4.


 来た道をたどり、砂丘を越えて、いつもの森へ戻ってくると、大きな声が聞こえました。

「おいっ、お前!羽工場のやつだな?」

 羽工場というのは、ポンが働いている工場のことです。妖精の羽を作っている工場のことです。

 ポンが振り返ると、今一番会いたくない小人が立っていました。

「やあ、ピート。元気かい?」

 ポンはこのピートがあまり好きではありません。ピートもポンのことが好きではないので、よけいに好きになれません。それでもポンはつとめて普通に挨拶をしました。

「元気か、だって?そんなことあるもんかい。毎日毎日こうからっ風が吹いちゃ、鼻が乾いちまうだろうが。それに、お前んとこの工場が怪しげなもんを作っているから、俺んとこにまわってくるはずの上等の糸が横取りされてよお」

「横取りじゃありません。羽糸はもともとうちの工場用に作られているんです。あなたのところでは使わない糸じゃないですか」

「お前の工場専用って誰が決めたんだよ。俺たちだってあのきれいな糸を使ったって良いじゃないか。え?なんでダメなんだ」

 妖精の羽に使う糸はそれはきれいなものです。ピートが縫うのは普通の小人の衣服ですから、わざわざ妖精の羽専用の糸なんて使う必要ないはずです。

 ポンはピートのこういうところがいやでした。

 どうしようもないような難癖をつけてきて、不公平だとわがままを言われても困ります。ピートはどんなことでも、文句ばかりを言って、うまくいかないことは全部他人のせいにします。だから話しているととても疲れました。

 話していても仕方がないと思い、ポンは「じゃ」と言ってそこを去ろうとしました。ところがピートはポンの前に立ちふさがり、まだグチグチと話しています。

「だいたいなんで小人が妖精の羽を作ってやってるんだ?妖精が自分で作りゃいいだろうが」

「小人が妖精の羽を作ることは昔から決まっていることだ。妖精は清らかな存在なんだからしかたがないだろう?」

「なーにが清らかだ。仕事もしねえで、ただ飛んでるだけじゃないか」

「ただ飛んでるだけじゃない。妖精は季節を伝える仕事をしているんだ。知っているだろう?」

「へっ、季節なんて、妖精がわざわざやらなくたって、寒くなりゃ勝手に冬になるさ」

 ピートは普段からこんなことばかり考えているのでしょう。

 妖精と小人が違うなんて考えもしないのかもしれません。だからいつもピートとポンの会話は平行線をたどっていました。

 ポンはピートと話していると、せっかくのさっきまでの楽しく幸せだった気持ちがなくなってしまうような気がしました。だけどピートと話すのがいやになって思わずため息をつきそうになった時、はっと思い出しました。

≪おうちに帰るまで、怒ったり泣いたりしないこと≫

 そうです。虹のしずくを手に入れた時にそう言われました。そうしないと、この虹のしずくは消えてしまうのでしょう。

 ではどうしたら良いでしょう。

 ポンはもうピートと話をしないで帰りたいと思いました。いつまでもピートと話していては嫌な気持ちがどんどん膨らんでしまいます。そうならないためには、ピートから逃げて家に帰るしかありません。それなのに、ピートは話をやめませんし、ポンの帰り道を塞いでいます。

 ポンはピートの言うことに反論しますが、ピートもポンの言うことに反論します。

 お互い一歩もひきません。

 これでは、お互いにいらいらがつのるばかりです。

 何かが変わらなければ、この気持ちはずっと続くことになるでしょう。では、何を変えたら良いのでしょうか。





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