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1.


 森の中の大きな木の根元に、屈んでじっと見て見なければわからないところに小さな扉が付いています。扉の中は工場になっていて、小人のポンが小さなものを作っています。

 ポンはこの工場に弟子入りしてから、もう8年が経ちました。親方はいつも真面目に仕事をするポンのことをとても気に入っていて、こんなことを考えていました。

「ポンにもそろそろヨメさんを考えてやらにゃあ」

 そうです。ポンはもうお年頃です。優しいお嫁さんがポンの良いところを理解してくれたら、きっと温かい家庭を築くことでしょう。そんなことを考えていた矢先でした。

「親方、ちょっと相談したいことが」

 工場の3階で、作業をしている親方のところにポンがやってきました。

「おう、どうした」

 てっきり仕事のことかと思い、親方は手元の作業をしたまま耳だけをポンのほうに向けて聞きました。

「実は、けけ、け、けっこ、んしたいと思う、子が、いて」

 ポンが小さな声で、しかもつっかえながら話すので、親方はポンの方へ向きました。すると、ポンは頭のてっぺんから顔だけでなく、耳も首も真っ赤になっていました。

 ポンが何を言ったのか聞き取れなかったものの、親方はポンのこの顔を見たら「結婚したい子が現れた」ことがすぐにわかりました。

 ポンはとっても真面目な人ですから、ここで親方がひやかすようなことを言ってはいけません。ポンのこんな話を聞いて大声でおめでとうと言って、喜びたいところですが、親方はいつも通りの普通の表情をして、そうか、と頷きました。

「それは良いことだ。相手のお嬢さんのことを何よりも大切にしたいという気持ちがあるんだったら、その気持ちを伝えて申し込むんだぞ」

 親方はまだるっこしいのは苦手です。

 結婚したい子がいるのなら、すぐに結婚を申し込むべきだと言いました。だけど、ちゃんと条件があります。“大切にしたい気持ちがある”ことと、それを“伝える”ことです。

「森の風習は知っていると思うが、プロポーズには必ず丸い物を贈るだろう」親方が腕を組みながら語り出すと、ポンは神妙な顔をして頷きました。「丸い物と言っても、真ん丸じゃなきゃいけないことはない。ただ、相手のことを真剣に考えた時に気持ちを込めて贈ることのできるものだったらなんでもいいんだ。極端な話し、そこらへんに落ちてる石っころでも良いし、気に入った小豆だってかまわないわけだ。まあ、よく考えてそれを準備しなきゃな」

「はい、わかりました」

 ポンは素直に返事をすると、どんなものを贈ろうかと考えました。

「向こうの砂丘できれいな砂粒を見つけてこようと思うのですが」

 この工場から少し行くと原っぱがあって、その向こうに砂丘があります。お日様が出ていると砂がキラキラ光るのです。砂は小さいですが、きれいな粒のものがあることをポンは知っていました。

「良いじゃないか。砂丘だったら、うまくいけば”虹のしずく“が見つかるかもしれねえし。おう、じゃあ明日は休みにして、良い物を見つけてきな」

「はい、ありがとうございます」

 それでポンは、砂丘に贈り物の砂粒を探しに行くことになりました。


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