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佐賀のやばい嬢ちゃん

佐賀のやばい嬢ちゃんepisode.4 ナガサキ

作者: 川里隼生

 ある日、新地しんち輝夜かぐや小江原こえばる有華ゆかは長崎市を訪れた。輝夜と有華には共通点がある。長崎生まれ佐賀育ちである点と、曽祖父母に長崎原爆で死亡した人物を持つ点だ。戦没者リストに名前が載っている。


 二人は佐賀で知り合い、有華の提案で長崎に足を踏み入れた。原爆資料館、爆心地公園、平和公園を回って午後三時を過ぎたとき、輝夜が溜息をついた。

「どうしたの?」

「この空気、あたし苦手」


 輝夜はベンチに座り、虹のかかった青い空を見上げた。

「戦争のない世界とか、悲しみのない未来とか、絶対無理じゃん。青い空が永遠に続きますようにって願うようなものでしょ?」

「私はそういうの好きだけどな。例え綺麗事でも……っていうか、綺麗事だからこそ、実現させたいじゃん。資料館を出て、もし世界中から核兵器がなくなったらって想像したんだ。そしたら、きっと世界中が青空になると思う」

「……この町には雨も似合うと思う」


 有華がスマートフォンを取り出した。

「まあ、どう思うかは自由だけどさ。帰りの列車の時間もあるし、早いとこ写真撮ろうよ。ほら立って、あの像を背景にするから」

 輝夜も渋々立ち上がる。


「……あの像が伝えてること、みんなで忘れないようにしなきゃね」

 シャッターを切る前に有華が言った。

「……みんなが忘れても、地球のどこかに同じ記念碑が増えるだけだよ」

 黒い雨が上がったあとの長崎に虹は架かったのだろうか。輝夜はそのようなことを考えていた。

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