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絶望と。
「今日で、店を畳むことにしたんだ。」
朝、エリカがいつものように酒場に来ると、店主は涙を浮かべなら、そう彼女に告げた。エリカは呆然とした。頭が真っ白になった。
「俺の友達が逃げたんだ。多額の借金を残して。もう、店を続けることができなくなってしまった。店を売って、ここからとても遠い街に行くよ。ごめんな…ごめんな…。もう、君が来て3年か…。今まで本当にありがとう。君に救われたんだよ。どうか…生きてくれ…。これは最後の賄だ。」
店主のごつごつとした頬を大粒の涙が伝う。エリカも、大声をあげて泣いた。二人は抱き合って、しばし泣いた。店主との突然の別れが悲しいのもあるが、何よりエリカの心を打ち砕いたのは、明日への恐怖だった。明日、自分はどう生きるのか、全く術が思いつかなかった。何度も感謝を告げ、夕方、エリカは酒場を後にした。今月分の給料と、最後の賄を抱きしめて。
夜は、不安で一睡もできなかった。どこで何をすればいいのか。必死で考え、明け方にエリカがやっと出した答えは、倉庫の裏にある薄暗い森に行くことだった。