表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神の生まれ変わり  作者: 白石 楓
8/9

夏の最終戦争

 衝撃が走り、暗闇が当たりを包む。


 ――これは死んだのか·····?

 案外呆気なく死んでしまったことに蒼生は驚きつつも、身動きが取れないことをすぐさま自覚する。


 ――ッ!なんだこれッ!身動きが取れないぞ!

 蒼生は束縛から逃れるためにその場で腕や足をばたつかせもがく。だがしかし、そう簡単には束縛から逃れられない。


 どうすればこの束縛から解放できるのか、考えようとしたその時、蒼生はあることを悟る。


 ――おい、まじかよ。

 それは腕や足に感覚があるということだ。もし感覚がなければ自分がもがいているなんていうものも分からないはずだ。すなわち、自分は死んでいないということにもなる。という事は·····。


「――おい君!大丈夫だったか!」


 その刹那、眼中へと光が差し込み、束縛から解けると共に自分の置かれた状況を瞬時に理解する。

 線路の外側で蒼生の体をかばうように抱ききえ、抱きかかえられたまま共に地面へと倒れている。この状況から察するに、どうやらこの男性に救われてしまったらしい。


「·····なんであんな所にいたんだ?」


 男性が蒼生の両肩に両手を添え、線路にいた理由を聞き始める。


「僕は·····その·····。」


 蒼生はその質問に力のない声で応えようとすると共に、ここで初めてその男性の顔を確認する。いかにも優しそうな顔をしている髭の似合う男性。年齢は30代くらいに思える。


 蒼生は少し回答をすることに躊躇した後、この状況下で何も言わないのはあまりにも失礼だと判断し、言わないという選択肢を諦めて口を開くことを決意する。


「·····死のうとしていました。」


「どうして死のうとしていたんだい?」


「僕の、大切な人を無くしてしまったから·····。僕が悪いんです。だから、責任を取って死のうと·····。」


「責任を取る·····か。なぜ君は死なないことが無責任だと思ったんだい?」


「それは、僕のせいで死んでしまったのに、僕が悠々と生きているのは無責任だと思ったからです。」


「そう·····か。」


 ここで少しの間が空間に流れる。その間で男性は片手で顎を触る仕草を起こし、何かを考えるかのようにうーんという感嘆語を低い声で発する。そして、何かの結論が出て納得したかのように首を縦に一振し、男性は考えついたその言葉を自殺しようとしていた少年へと伝える。


「率直な考えを言わせてもらうね。僕はね、君が死ぬほうが無責任だと思うよ。」


「――――」


「何があったか詳しくは分からないが、君が責任を取って死ぬ方が僕は無責任だと思う。それに、一概に全て君のせいで死んだとは言えないんじゃないかな。」


「そんなことないです!僕があの人と合わなければ死ななかったんです!あんな無茶をしなければ死ななかったんです!あんなやり方で防ごうとしなければッ!」


「少年、それは結果論ってやつだ。」


「――ッ!」


「君は努力したんだろ?どういうやり方であれ防ごうとしたんだろ?それとも、努力を怠るなんてことを君はしたのか?」


「するわけないじゃないですか!頑張りましたよ!自分なりに努力して、犠牲にして、頑張って·····。」


「だったら、君は悪くない。君は一生懸命努力をした。どういうやり方であれ、君はそのやり方を一から練って考え、そして行動を起こした。ただ、その結果が悪くなってしまっただけだ。だから·····」


「だからなんなんですか!結果が悪かったらもうダメなんですよ!僕の努力が足りなかったんです!僕のせいで!」


「違う!そんなことは無い!じゃあ君はその結果が最初から分かっていたら、努力をしなかったと言うのか?そう思うのか?」


「それはッ·····。」


 もし、最初から結果が分かっていたら·····。その答えはもう出ていた。


 自分が琴音を救おうとした発端。それは、寿命が見えるようになったあの時から始まった。つまりそれは既に運命付けられた寿命という結果に抗うということと同じことなのだ。


「――そうだ。」


 自分はもう既に挑戦していたのだ。結果の分かっている戦いに、運命に抗う戦いに挑戦していたのだ。


 ――もし、この世から花火という存在がなくなったら蒼生はどうする?


 記憶の奥であの子の声が聞こえる。


 あの時の質問に過去の自分はどう答えたんだっけ。あぁそうだ、確か花火を意地でも復活させると言った。しかし、真面目に考えてみればそんなもの不可能だ。何せ、今の自分にはそんな技術もなければ作り方さえも知らない。なのに、自分は意地でも復活させると言った。自分は確かに不可能なことに挑戦すると言ったのだ。


「それは結果論でしかない。結果が悪かったからダメ。自分が悪かったんだって責めるのは間違っている。」


「でも·····僕にはもう何も無いんです。あの子を失った今、僕が生きる意味なんて·····。」


「じゃあその子は君をあの世に追い自殺させるために死んだ、そう思うのか?」


「――――」


「それに、君には必ずあるはずだ。その子が残してくれたものが沢山、目には見えないものが沢山あるはずだ。」


「残してくれた、もの·····。」


「そうだ。その子は君に多くのことを残してくれた。ならば、それを大切にして生きることこそ責任を負うということなのでは無いのか?それすらも、何もかもをなくして死んでしまうのはあまりにも無責任だよ。」


「·····それで、僕が生きれると思いますか?」


「確かに、その痛みも傷も君の中に残る。だから君にはこれから沢山の苦しみが襲ってくるだろう。けれども、それに負けないで欲しい。君はまだ死ぬべきではないんだ。」


「――――」


「なんで死ぬべきではないのか、と聞かれたら言葉に表すのが難しくて明確に理由を言及することは出来ないけれどね。けれども、まだ死ぬべきではない。君にはまだやり残したことがあるってそれだけは分かる。」


 やり残したこと。そうだ。僕にはまだやらなければいけないことが沢山ある。夢翔のことや葵のこと。そして、玲於のことも·····。まだここで死ぬわけにはいかないんだ。


「って色々言い過ぎちゃってるよね。ごめんね。いまさっき会った他人なのにね。実際僕もこの世に残されてしまった方だったから、つい感情的になってしまったのは許して欲しい。」


「いえ、逆に助かりました!そうですよね。まだここで死ぬわけにはいかない。まだやり残したことが沢山あるのだから!」


「そうだ少年!行ってこい!君がやり残したことを全てやってこい!そして、自分の責任を果たしてこい! 」


 はい!という元気な声が響いたと同時に、蒼生はその場から立ち上がりそのまま真っ直ぐ続く道を走り去る。


 その姿を見て男は一つ。ただ一つ呟いた。


「――少年よ、大志を抱け。」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 蒼生はある場所を目指してひたすら走っていた。


 今まで言及はしなかったが、どうもさっきから体のどこかで疼くのだ。そして、その疼きは自分をどこかへ導いているかのように、近づくと疼きが徐々に大きくなっているようにも感じる。


 どこへ向かっているのか、自分でもわからない。ただ体が思うがままにある場所へと必死に向かっている。


 このまま進めば橋に向かうことになるのか?いや、違う。橋を避けて橋のさらに下に向かっている。そこは川沿いの歩道だ。そして、そこに居るのは――


「おぉ蒼生。久しぶりですねぇぇえ!」


「浅間·····玲於!!」


「いやぁあ怖い!そんなに怒らないでくださいよ。寿命、縮みますよ?」


「悪い。今はその寿命という言葉がすごくイラつくんだよ。それにちょうど良かった。お前と話をしようと思っていた所だったんだよ。」


 そこに居たのは浅間玲於であった。自分が探していたから体がそれに従って存在を認知し動いていたのか疼きの理由は定かではないが、兎にも角にもまずはこいつと決着をつけなければいけないと思っていたのでちょうどいい。


 まずはこちらから話題を作り、仕掛けさせてもらおうと思っていた矢先、予想外にも相手の口が先に開く――


「君が何を言いたいのかだいたい分かりますよぉ〜。例えば·····琴音さんに何をしたのかということでしょう?」


「なら話が早くて助かる。その事を聞いて、シカトされるんじゃないかって言うのが唯一の問題だったんだよ。」


 なぜ琴音の話がここで出るのかと思った人もいるかもしれない。これはただの予測だが、琴音が自殺したのには何かしらの者の関与、つまり玲於の関与があったのではないかと推測した。でなければ、琴音の寿命が突然1日縮むなんてことはありえないのだ。


 最初は自分の起こした殴り掛かり事件を聞かれてしまったからだと思っていた。だが、そんなことはありえない。琴音には自分が前田や齋藤に話に行くなどということは一言も言っていないし、ましてや話し合う前には周りに誰もいないことを確認した上でその二人に殴り込んだのだから。


 一歩譲って琴音が運良くあそこの場所に通りかかったとしたらもうそれまでだが、少なくとも僕を恨んでいる玲於からしてみれば琴音を狙うことは必須。なにか仕掛けてるに違いないと思ったのだ。


 そしてその予測は話題が起こったその直後、予測から確実なものへと変わった。


「僕が言った嘘の事を真面目に聞いて驚く琴音の様には、もう笑いが堪えられないかと思いましたよォ!!あぁ、今でも笑いが止まらない!絶景絶景。アッハッハッハッハッ!!」


「嘘の事·····?お前、琴音さんに何を吹きかけたんだ。教えろ!クソ野郎!」


「アハハ、ごめんごめん。嘘の事ねぇ。例えば、琴音のせいで蒼生くんは自殺しようとしていたとかかなァ。そういうことをいっぱーい言ったら信じ込んじゃって、泣きまくってたよぉ!可哀想にねぇ!」


 これでだいたいわかった気がする。要するに琴音は玲於に唆されたのだ。それも嘘の話題で。そして、それを信じた琴音は自分のせいで蒼生が死にかねないと思い、自分を責め続け、その結果自殺に至ったのだ。


 やはり、こいつが琴音に関与していた。こいつが琴音を死に追いやった。絶対お前を·····。


「――許さない。」


「はい??聞こえないのですがぁ?」


「いつまでもお面を被って話してんじゃねぇよお!聞こえてんだろクソ野郎!」


 お面という言葉に少し反応を示す玲於。それは顔にも現れ、少し引きつったような顔になる。が、そんなことは束の間の話。すぐさま今まで通りの表情に戻り、余裕のあるような態度を元のようにし始める。そして話は続き――


「お前が仮面を被って話してるの分かってるんだからな!昔はそんな狂気じみた話し方をしてはいなかった。今でも普通に話すことが出来るはずだ!それとも、お前は僕と話すのに仮面がないと話せないって言うのか?」


「·····うるせぇよ。お前には関係ないだろ。」


 そう言い放った後、数秒の間が流れ――


「さぁてぇ、お話したいことはそれだけなのかなぁ?」


 と元通りとなり、話題の転換を行う。

 これには蒼生も少々呆れたが、この話題を言及するのに大切な時間をかけるわけにはいかないと判断し、琴音に関しての話題を振り始める。


「じゃあもうひとつ聞かせてもらう。お前はいつから琴音と関わり出した?」


「琴音と関わり出した時期ですかぁ。そうですねぇ。確か、花火大会の次の日だった気がするねぇ!なぜなら、君がいなかったからだよぉ!アハハ!!」


「僕が休んでいたから·····だって?どれだけ卑怯な手を使うんだ!この卑怯者が!!」


「偽善者に言われたくありませんよォ!それにねぇ、卑怯な手など使ってないですからねぇ。あなたが休んだのが悪いのですよォ!アハハハッ!」


 玲於は常に狂気じみた笑いを放ちながら話に応じている。この態度がさらにイラつきを加速させる。だが、ここで憎悪と怒りに身を任せて暴力に徹しては何も生まれない。ここは自分を落ち着かせようと深呼吸を入れようとしたその時、玲於は衝撃的なことを放った――


「それに、琴音の死に様は実にィ!見事でしたねぇ!アハハハハッ!」


「死に·····様?どういうことだ。お前はその事を知っているのか?」


「あぁ、もちろん。知っていますよォ。何せ、僕が騙して屋上まで来させ、僕が背中を押したのだから知っているに決まっていますともォ!アハハハハッ!!」


 琴音を押した。それはつまり屋上から飛び降りさせることであり、つまりそれは·····。


「――琴音を殺したのはお前だったのか。」


「お、殺る気になりましたか?それでこそ死神!それでこそ本来の自分!!」


「ふざけるなぁぁぁぁあ!!」


 蒼生は大きく腕を振りかざし、玲於に向かって走り出した。


「うわぁぁぁああ!!」


 蒼生は怒りに任せて、玲於に向かって突っ込む。一撃の拳に力を込めて、そして相手に向けて殴りを一発·····。そのつもりだった。だが――


「そんなバレバレな殴りでいけるとでも?」


「――ッ!?」


 その攻撃はまんまと相手の手のひらによって受け止められ、そして、


「――グハッ!!」


 相手の後方へのひと押しによって、ものすごい勢いの衝撃が身体中を襲う。そう、夢翔と同じような現象だ。


「お前·····何かしてるだろ。」


「おやぁ?バレてしまいましたかぁ?そうです、この白いパーカーを着ることによって、攻撃力が何十倍にも膨れ上がるのですぅ!!正確には筋肉の密度が上がるのですがねぇ!」


 白いコートが攻撃力を何十倍にも膨れあがらせる。にわかにも信じ難いことだが、この謎現象を解明するにはそれしか理由が思いつかない。もし、このコートがそういう能力を持っているならば、夢翔もなぜあれだけ強かったのかも納得出来る。だが、そうなると一つ問題が生じる。それは、


「あいつにはまず勝てない·····。」


 当然だ。対夢翔の時、勝てる片鱗が見えるどころか、完膚なきまでにボコボコにされた。それ即ち、玲於にも普通に立ち向かったら勝てないということだ。


「あはははははっ!!どうしたぁ?かかってこないのかぁ??」


「玲於、本当にかわいそうだな。」


「はぁ?なんて言いましたぁ?きこえないのですがぁ?」


「いや、これは僕も悪いのかもしれない。君をこんなふうに変えさせてしまった。仮面を被り、素直になれない人格へと変えさせてしまったのだから。」


「――――」


「いや、君は変わらざるをえなかったのかもしれない。もう二度と虐められないようにと、もう二度と裏切られないようにと、狂気の仮面を被って、人間と関係を閉ざして生きてきた。」


「うるせぇ·····。」


「全てはあそこが元凶だった。みんなの絆はあの時、全て引き裂かれてしまった。いじめという醜い悪魔に。」


「うるせぇ·····。」


「もし、いじめていたあいつがこの世に居なければ·····。ううん、違う。僕があの時動いていれば君を助けられたのかもしれない。だけど怖かったんだ。世界を敵に回すことを、みんなを危険に晒すことを·····。」


「うるせぇ·····。」


「正直、あの時僕はどうすればよかったのか分からない。夢翔だってそうだ。葵だって、他の奴らだって、みんな。だけど、僕はまたみんなで遊びたい。もう引き裂かれてしまった絆かもしれない。消えてしまった絆かもしれない。でも、それでも·····!!僕は、」


「うるせぇうるせぇうるせぇうるせぇうるせぇ!!!」


 声を荒げながら、玲於が蒼生の言葉に口を挟む。


「もう一度遊びたいだと·····?夢を語るのもいい加減にしろ!お前はいつもそうだ。夢ばっか見てほざいて、しまいには自分は正しかったんだと偽善を掲げやがって。お前だけじゃない、みんなそうだ!仕方がなかった、しょうがなかったで全てを済ます。そして、何事も無かったかのように生活を送る。お前らは!いじめられたやつの気持ち·····親友に裏切られたやつの気持ちを考えたことがあるのかっ!!!」


「あぁ、考えたさ。自分に出来ることはなんだろうってずっと考えてた。あの時のことを反省しながら、二度と起こらないようにと自分を犠牲にしながら努力してきた。いや、そういうやり方しかできなかった。」


「それが偽善だって言ってんだよ!自分を犠牲にしながら努力してきた·····?こっちはな、全ての人生を奪われたんだよ!あいつに、お前にっ!!それなのに俺の事を知った口叩きやがって!!」


「本当に後悔をしている。足が動かなかった自分をとても悔やんだ。でも、今更悔やんでももう遅いのは分かっている。どれだけ謝っても遅いことも。だから、また一からみんなで始めたい。そして、無くしてしまった時間を取り戻したい。そう思うんだ。」


「へぇ、そうかそうか。じゃあわかったよ、お前と仲良くしてやる。その代わり一生俺に謝り続けろ!一生俺に頭を下げ続けろ!いいかわかったか!!」


「あぁ、わかったよ。約束する。」


「よし·····。」


 交渉とも取れるような話し合いがなんとか成立し、玲於が仲直りの握手を誘導するかのように、おもむろに右手を差し出す。その手のひらを見て、蒼生は玲於へと近づき始める。


 これが収まったとしても、まだやるべき事は沢山ある。夢翔との話し合い、そして葵との仲直り、最終的にはいじめたあいつら達とも話をつけなくてはならない。そうしなければ、失った絆は完全には取り戻せないんだ。


「よし、じゃあこれで仲直りな。」


「うん、今まで本当に済まなかった。」


 蒼生が再び謝罪をし、握手を交わす。

 これで仲直りで良いのだろうか。いや、これからだ。消えた信用、消えた絆を取り戻さなくては仲直りしたとは言えない。ここからだ。一からまた·····!!


「なぁーんて?言うとでも思った??」


「·····え。」


 その直後、低音の不快感のある音がどこからか響き、水が吹き出るような音が同時と言っていいほどに響き渡る。

 なんだか腹の当たりが冷たい。いや、暖かい。あれ、なんだか徐々に眠くなってきたような·····。


「アッハッハッハッハッ!!まさかまんまと騙されるとはなぁ!!こんなにも簡単に殺せるなんて予想してなかったぜ!!」


 薄れゆく意識の中、自らの腹へと視線を向ける。

 そこには真っ赤に染った洋服と、突き刺さった刃物がうっすらと見える。そしてその時、今自らの状況がどう置かれているのかということを初めて知る。


 そう、自分は·····。


「ハッハッハッハ!!ほら、ナイフの味はどうだァ?痛いかぁ?アッヒャッヒャッヒャ!!」


 このまま·····死ぬんだ。


 そう死を悟った刹那、突如目の前が暗く暗転した。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 ――鈴の音が鳴る。


 ここはどこだ?


 鈴が鳴ったと思えば場所は移動し、巨大なスクリーンが目の前には一つ置かれている。何も無い白い空間の中でぽつりとものが浮いている。


 そう思ったその時、スクリーンには突如動画が流れ出した。蒼生はその映し出された動画を見る。すると、あることに気づく。


 これは、自分の記憶だ。



「俺はお前の力になりたいんだ。」


 これは、寿命が見える能力を相談しようと思っていた頃の話だ。僕が遠慮してやっぱり迷惑をかけるからやめようと思っていたところで夢翔がそう声をかけてくれた。あんな事件を起こしたのに、優しかった。けれど、その力も無駄になってしまう。



「助けてくれて·····ありがとう。」


 あぁ、懐かしい。これは初めて葵を助けれた時のことだ。といってもあれは本当にちっぽけないじめのその場しのぎだけだったのに、これだけで満面の笑みを見せてくれた。嬉しかった。いつまでもヒーローでい続けられたらどれだけ良かっただろう。



「私もあなたの力になりたいの。」


 とても嬉しかった。琴音からの力になりたいという言葉。葵に裏切られ、絶望に伏していた自分を救ってくれた。ありがとう。だけど、もう頑張れそうに無いかもしれない。ゴメンな·····琴音。




 ――鈴の音がなる



 場所がまた変わる。周囲を見渡すとそこは見覚えのある風景。そう、あの花火大会で琴音と花火を見た場所だ。


 ここは現実·····なのか。そう思った刹那、その考えはすぐさま否定される。何せ人が一人もいない。花火さえも打ち上がっていない。となればここは記憶の中なのだろうか。妄想なのだろうか。ってあの後ろ姿はまさか·····。


「こ、琴音さん·····なのか?」


 目の前には背中を向ける琴音さんのような後ろ姿があった。


 しかし、琴音さんのような後ろ姿であるだけだ。ここは一か八か話しかけてみて、違かったら人違いでしたって謝ろう。


 そう思い立ち、目の前に立つ女性の右肩に手をかける。


「あの·····。琴音さん·····ですか?」


「·····蒼生くん。」


「本当に琴音さんなのか!?生きていたのか·····!」


 琴音は声をかけた途端すぐさま自分の方へと振り向き、笑顔で声掛けに応答した。だがしかし、その笑顔はなんというかいつもより悲しげに思える。


 っていうかいや、待て。琴音さんが生きているはずは無い。あの時、確かに死んだ瞬間を見ていたんだ。きちんとこの目で。だがしかし、今見ているのも現実なわけで·····。



「·····諦めないで。」


「へ?」


「諦めないで·····。生きて·····。強く生きて·····。」


「無理だ。もうこれ以上は生きられない。あの状況下ではもうできることが何も無いんだ。」


「できる·····。あなたならできる·····。」


「無理だ!できるわけが無い!僕には何も出来ないんだ。所詮は力のない、義を掲げるだけの偽善者なんだ。だから·····。」


「偽善なんかじゃない。あれだけみんなが感謝してる。あなたに感謝してる。」


「でも、みんなは離れてしまった。もう、誰もいないんだよ。だからもう·····。」


「私がいる。永遠にあなたのそばに居る。だから生きて·····。戦って·····。」



 この僕がまだ生きられるというのか。まだ戦えというるのか。そんなことが出来るのか。いや、やるしかない。僕が·····。


「生きて·····。そして·····。」


「――この世界に花火を咲かせて。」




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




「アッハッハッハッハッ!!」


 そうだ。まだ諦めるには早い。まだ僕には動かせる手がある、足がある。呼吸もしてる、息もある。大丈夫だ。まだいける·····!!


「――んんっ!!」


 蒼生は腹を突き刺しているナイフを持つ相手の手を上からつかみ、力ずくでそのナイフを抜こうと抵抗を見せる。だが、


「ハッハッハ!無駄なことを·····。言っただろう?このコートは何十倍にも攻撃力を膨れ上がるのだよ。君の力じゃ無理だね?ほらほら、力むほど血が流れてきちゃうよォ?」


 意識がどんどん遠のく。もはや自分が立っているのか横になっているのか。力をどれだけ入れてるのか入れていないのかすらもわからない。だが、それでもまだ諦めない。まだ諦めるには早い·····!!


「ぐわぁぁぁ!!!」


「無理無理!!ほら、片手だけでも君の脇腹に突き刺せるよ?こんな感じでね!!」


「グハッ!!」


 玲於はさらに奥へとナイフを埋め込んでいく。もう内蔵ですらも貫いているんじゃないかと思うくらいだ。

 あぁ、血が臓器を伝って喉へと上がってくるのがわかる。いや、違う。もう·····


「うわぁ汚ぇ汚ぇ。血を吐くなよ汚ぇなぁ。あーあ、確かこんな感じでいじめられてたっけなぁ。こうしてみると絶景だねぇ!あははははっ!!」


 何度も諦めそうになる。意識の後ろでもう諦めなよと何度ももう一人の自分が囁く。だけど、ここで諦めたらダメだ。ここで諦めたら何も生み出さない。だから·····だから·····



――諦めないで、生きて、強く生きて、



「うっ·····うぉぉぉおおお!!」


「だからぁ、無駄無駄·····って、なに·····。」


 突き刺されたナイフが血飛沫を上げながら徐々に抜けていく。そう、ほんの僅かではあるが抜けている。


「そんなはずは·····そうだぁそういえばまだ片手だったぁ。ほらしねぇ!!!」


「うぐっ·····!!!」


 再びナイフが奥まで突き刺さり、激しい血しぶきが上がる。もう既に限界に達しているのではないか。血の3分の1を無くせば命に危険が及ぶとも言われているが、もはやその域を超えているのではないかとまで思う。だが、


「まだだ·····まだ負けねぇえええ!!!」


「ぐっ·····嘘だ·····そんなはずは·····。」


 両手で押えたナイフ。だが、それでもなおナイフは徐々に抜け始める。これだけ血を出血させといて、もう脳に酸素がいってないくらいの量を出血しているのに、これだけの力を残している。


「嫌だ。そんなはずは無い。なんでだ。なんでいつもこうやって負けて何も得ることが出来ないんだ。お、おかしいじゃないか。俺の人生なんだぞ!俺の時間なんだぞ!それなのに、それなのにィイイ!!!」


「うおああああああああ!!!」


「――グハッ·····!!!」


 蒼生によって抜かれたナイフ。そのナイフは蒼生の手に渡り、そして、玲於を、刺した。


 最後の力だった。全力の力。もはや脳すら回っていない。全身の全ての力をそこに注ぎ込み、そして玲於へと穿った


「い、痛い!やめろ!はなせ!あぁ、血が·····血がァァァァ!!!」


 これでよかったのか分からない。果たして相打ちでよかったのか。きっと琴音さんに聞いたら怒られるだろうなとも思う。うん、きっと優しい琴音さんならそういうに違いない。


 生暖かな光が蒼生を取り巻く。


 何故か琴音さんが近くにいるように感じる。いや、自分が近づいているからなのかもしれない。


 僕に生きてと伝えた琴音さん。僕も生きて、琴音さんの願いを受け止めたいと思ってはいたが、どうやらこれでおしまいのようだ。

 死ぬのは逃げなのかもしれない。だけど、自分が出来ることはもう精一杯頑張った。手が動く限り、足が動く限り、息のある限り、精一杯。だからもう、これで、楽にしてくれ·····



――い·····いぶ·····



 誰かの呼ぶ声がする。あぁ、そうか。琴音さんが呼んでいるのかもしれない。

 あ、そうだ。天国に行ったらまた話の続きをしよう。たくさん話して沢山喋って、最後には付き合えたらいいな。うん、そうだ。そうしよう·····。



――いぶ·····いぶき·····!!



 あぁ、疲れた。もうすぐ楽になれる。

 鼓動が止まって、呼吸が止まって、臓器が動かなくなって、最後には·····。


















 あぁ、

















 死んだ。












 『死神の生まれ変わり――完』




 ここまで読んでいただきありがとうございます。死神の生まれ変わり現代編の完結がただ今成りました。


 ここまで本当に長かったです。ですが、これからもどんどん続きを書いていくのでよろしくお願いします!!!


 ここまでお読み頂き本当にありがとうございました!!


 白石 楓


 ここまで読んでいただきありがとうございます。死神の生まれ変わり現代編の完結がただ今成りました。


 ここまで本当に長かったです。ですが、これからもどんどん続きを書いていくのでよろしくお願いします!!


 また、次のページにてお話のモデルとなった曲が公開されていますので是非ご覧ください。


 ここまでお読み頂き本当にありがとうございました!!


 白石 楓




※ 追記

 私事ながら、受験の為にしばらくの間は小説がかけなくなりました。ですが、続編は必ず年明けに書きます。

 たくさんの伏線が貼られたこの物語をぜひ考察等をして楽しみながらお待ちしていただけると幸いです。


※追記の追記

 最後の展開をだいぶ編集いたしました。あまりにも現実とかけ離れていたために近づけたというのが主な理由です。なお、展開の結果といたしましてはストーリー上変わらない形ですので、もう一度最後の展開を見ていただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ