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死神の生まれ変わり  作者: 白石 楓
1/9

零日目 プロローグなどない

 ――これは一体なんだ。


 混雑する駅、ざわめく商店街、閑静な住宅街。ここには問題はない。いつも通りの光景だ。だが、人の上に数字が見えるとはどういうことなのだろうか。

 いや、もしかしたらこれはまだ夢かもしれない。そんな薄れた希望を持ちながら、学校へと歩いて向かう。


 学校へ着くと、やはり多くの数字が頭の上に浮かんでいる。とても非現実的な光景だ。

 蒼生(いぶき)はその数字を避けるかのように顔を下に向け、教室まで階段をのぼり、廊下を歩き、学校内を突き進む。


 一体この状況をどう判断すればいいのだろう。そもそもこんなこと誰に話しても厨二病だって言われるだけ。まさか本当に精神的におかしくなってしまったのか。精神科の病院に行かなければならないのかと思うと気が遠のく感じがする。


 遡ること昨日の夜。

 僕はいつも通り晩御飯を食べて、テレビを見て、YouTubeを見てという怠惰な生活を送っていた。そんな中、あるひとつの動画をYouTubeで見つけた。それは都市伝説なのだが、ネット内でその人がいつまで生きるのかを言い当てられる人が存在するという都市伝説であった。


 その内容がなかなか面白いものであり、その人は主にネット内で一般人に向けて寿命を予言していたのだが、実は裏でその予言に殺し屋が関与していたのではないかという都市伝説であった。

 だが、僕はこう思ったんだ。もしも、本当に寿命が見えていたのだとすればどうなのだろうかと。


 そしたらいつの間にか寝落ちをしていて、気がついたらこの有様になっていたというわけで·····。


 そう過去を振り返っていたその時、蒼生は人にぶつかったような衝撃を覚え、この場を収めるためにとりあえず謝ろうとして顔を前に向けると、よく見覚えのある顔をしたやつが目の前に立っているのに気づいた。


「なんだよ、お前か。謝ろうとして損したー。」


「損ってなんだよ!ちゃんと目の前見て歩けよな。」


 こいつは僕の友達で、名前は真田 夢翔(ゆうが)という。幼き頃に公園で会い、その後は小学校、中学校共に同じ所へ進学した。そして、現在では兄弟のような仲になっている。


 そんな兄弟同然のような夢翔にもやっぱり数字は付いている。この74という数字。果たしてこれは寿命なのだろうか。


「おいなんだ?俺の頭になにかついてんのか?」


「あ、いや。そういうわけじゃないんだ。ごめんね。」


蒼生(いぶき)、今日はおかしいぞ?好きな人のことでも考えてたのか?」


「す、好きな人!?そんなわけないだろ!」


 やばい、つい大声で叫んでしまった。その声で廊下に(たむろ)っていた人達からの視線は僕の方へと集まり、刹那の注目を浴びる。

 しかし、夢翔も夢翔だ。好きな人がいるということは夢翔にしか教えておらず、ほかの友達に知られたら面倒なことが起きる。だから公衆の場では恋愛関連の単語を言わないということを約束していたのに、こいつというやつは·····。


 でも、よく考えてみろ。少なくとも見てきた中では全員数字が書かれている。ということはこの状況から察するに、僕の好きな人の上にもみんなと同じ数字が書かれている、ということなんだろう。


「おーい、またぼーっとしてるけど大丈夫か?」


 蒼生は「え?」と聞き返す。

 そういえば、今日はこの謎現象のことばかり考えているけど、何か大事なことを忘れているような気が·····。


 その瞬間、建物内に大きな音が響いた。そう、中学生が恐れるべき敵、チャイムだ。

 蒼生達の学校では月に3回以上遅刻すると廊下に呼び出されるのだが、今月は今回を含めると·····3回だ。


「あ、やべ。チャイムがなっちまった!急ぐぞ!」



 蒼生はその後、遅刻で朝学習の呼び出しをくらった。






 ――1時間から数学か。


 数学はどうしても気が進まない。

 僕は数学が昔から苦手で、よく分からない数列とかを見ると吐き気がしていたものだ。これはある意味恐怖症なのかもしれない。


 だが、今は別の意味で恐怖症になりかけている。クラスの40人全ての人の頭上には多くの数字が浮かび、まるで数列を見ているようで吐き気がしてくる。

 75、81、77·····。もしこれらの数字が本当に寿命ならば、僕に何の得があるのだろう。僕にはしなくてはならない使命的な何かがあるのか。


 そういえば、僕の好きな人にはなんと書いてあるんだろう。目が悪くてよく見えないな。7·····?え?


「じゃあここの問題を·····。細川、答えてみろ」


「7!?」


 蒼生はいきなり指名されたことに驚き、頭に流れていた7という数字を大声で叫んでしまった。その結果、周りからは笑いが漏れている。先生はその状況を見かねたのか、もしくは呆れたのか、蒼生に何も言うことは無く他の人を指名し始める。


 黒板を見てみると、当てられた問題は一次関数の問題。xもyも値を言っていないのだから、話にならない。完全にやらかした。


 しかし、7という数字はどういうことなのだろう。7年間しか生きられないということなのだろうか。そんなの信じたくない。

 それに目が悪いからよく見えないけど、「7※」と書いてあるような気がする。もしかしたら、信じたくないという感情がそういう幻覚を起こしているのかもしれない。まぁ元から幻覚みたいなものだけど。


 笠原 琴音(ことね)。僕の好きな人の名前だ。

 クラスの中ではあまりワイワイするようなタイプではなく、どちらかと言うと物静かな人だ。頭はあまり良い方ではないが、顔は学年でも三本の指に入る位の強者。


 しかし、好きな人の寿命が短いと分かるとなると、なんて言うか悲しくなるを越して怖くなる。どうにかして救う手立てはないものなのか·····。


「おーい蒼生、何ぼーっとしてんだ?もう授業終わったぞ?」


 夢翔が蒼生の肩をトントンと叩きながら話しかける。その声に気づき、蒼生は「え?」と聞き返し周りを見渡す。どうやら、考えている間に授業が終わっていたようだ。


 幼なじみである真田夢翔。

 いきなり人の寿命が見え始め、好きな人の頭には7という数字。つまり好きな人は7年間しか生きられないのだとこの人に言ったら、この人は、夢翔は信じてくれるのだろうか。


 いや、もう僕には分かっている。


 今の僕らは小学生なんかじゃない。きっと厨二病だとか精神科行けとか笑ってまともに聞いてくれないことくらい。分かっているんだ。だけど、期待をしてしまうんだ。もしかしたら夢翔ならば信じてくれるんじゃないかと。


「あのさ、夢翔。今日って部活ある?話したいことがあるんだけど。」


「恋の相談か?なら、サッカー部の休憩時間中に聞いてやるよ。」


 蒼生は恋の相談という言葉に少々動揺し、顔を赤らめながらも「分かった」と返事をする。


 この問題は中学二年生の自分でも深刻だと思う。この状態を治す手立てを考えなくては行けないし、好きな人も助けなければいけない。とすると1人で抱え込むのは無理だと思う。


 果たして、夢翔はこんな馬鹿げた話を信じてくれるのだろうか。

 そんな不安を抱えながらも、次の授業である体育を受けるために更衣室へと走った。





 久しぶりに夢翔のサッカーをプレイする姿見た気がする。

 昔はよく見ていたものだ。というか、あの時は心も通じあっていたような気がしていた。サッカーをすることが楽しかった。毎日のエネルギー源でもあった。だが、そんな夢のような現実もあの日を境になくなってしまった·····。


「なんでサッカーを見て泣きそうになってんだよ!まさか、俺に見とれちゃった?」


「そんなわけないだろ?こ、これは日差しが眩しくて涙が出ているだけだよ!」


 夢翔は休憩をするために日陰が作られた学校の壁際に寄りかかって、水筒を飲み始める、

 蒼生はとっさに涙を腕で拭い、夢翔と同じように壁際へと寄りかかった。


「こうやって2人で話すのも久しぶりだな。なんか昔を思い出すぜ。」

 

 蒼生は「そうだな」と軽く頷く。


 僕らが初めて会った時は僕らがうんと小さい頃で、双方の家が近いこともあって同じ公園で遊んでいたそうだ。そしていつの間にか友達になり、よく2人で夜遅くまで公園で遊んでいたというのを親から聞いた。


 その後は公園のみならず互いの家でも遊ぶようになり、そこから小中と同じ学校に通い、同じサッカー部に所属し、同じように生活をしてきた。その頃はよく2人で日陰に座ってたわいも無い話をしていたものだ。


 だが、あの夏の日。今から約1年前ほどのあの日に僕は事故にあった。原因は僕の飛び出し事故ということだった。

 そして、一緒にいた夢翔は僕のことをかばおうとして腕を骨折。僕は足を壊し、足の怪我でサッカーを辞めざるをおえなくなってしまい、チームには多くの迷惑をかけてしまった。


 その後遺症は現在も残っており、夢翔は以前よりも手を動かせなくなってしまった。

 だから、きっと僕を恨んでいるに違いない。いきなり飛び出してしまった僕を、腕を無くさせた僕を。


 ·····やっぱり言うのをやめよう。こんな馬鹿げた話を恨まれた人にされるなんて、仏のように優しい夢翔でもさすがに怒る。


 蒼生は「やっぱりいいや」と言って地面に置いていたリュックを背負って立ち上がった。


「なんで帰ろうとしてるんだ?話はするんじゃなかったのか?」


 夢翔は不思議そうに蒼生を見つめる。だが、もうこれ以上私情に夢翔を巻き込む訳にはいかない。


「やっぱり大丈夫。俺一人で何とかするさ。人に頼むなんて間違ってるよね。」


 蒼生は笑いながらそう言う。

 きっとこんな笑いもただの誤魔化し笑いなのだということは人一倍優しい夢翔には分かっているのだろう。しかし、ここでその優しさに甘えてしまえば、また夢翔を不幸にさせてしまう。


 蒼生は夢翔がに背を向けて、校門へと歩みを進める。が、夢翔はとっさに蒼生の腕をつかみ歩みを止めさせる。

 掴む腕には力が入っていない。そして、少しではあるがふるえている。自分が情けない。これ以上迷惑をかける訳にはいかない。だからっ·····。


「この腕がどうしたって言うんだ?蒼生はとても気遣い上手な男だからな、多分こんなことだろうなとは思ってたよ。」


 その声と共に夢翔の腕から力が抜け、蒼生腕からゆっくりと離す。


「俺はお前の力になりたいんだ。それに、これからも力を貸して欲しい。ほら、俺の腕は使い物にならねーから、お前の腕を貸してくれよ。俺も足を貸すからよ。」



 ――何故。


 何故、人はここまで優しくなれるのだろうか。

 ある人は言った。やさしさをどのように示すべきか、受け取るべきか。これを知っている人こそが、かけがえのない友人であると。


 全くその通りだ。



「ありがとう。夢翔は本当に良い奴だな。僕はいい友達を持った。」


「お、なに?泣いてるの?そこまで感動しなくてもいいだろー。」 


「そうだな。つい昨日のドラマを思い出しちゃって感動しちゃったわ。」


 蒼生は夢翔に背を向けたまま、腕で溢れそうな涙を拭う。


「もうそろそろ時間だから行かないと。じゃあ今日家に来れるか?7時くらいなら確実に居るから。あと、ついでに晩飯も食いにこいよ。」


 蒼生は夢翔の方へと振り返り、「分かった」と返事をする。


 きっと夢翔の事なので、このままだと話を切り出せないのではないかという優しさからのお家ご招待配慮だろう。


 ――本当に仏様だな。


 校庭へと再び走り去る姿を見つめた後、細川蒼生は校庭へ背を向け、再び校門へと歩みを進めた。






 ――久しぶりに来たな。


 蒼生は夢翔の家の前まで来ていた。夢翔と蒼生の家は徒歩5分圏内にあり、昔はよく遊びに行っていた。それも1年前までの話だけれども。


 これは余談だが、この真田家はあの真田幸村の家と関係があるらしい。そのため、幼い頃はよく夢翔がいろんな人に自慢してたものだ。


 蒼生はインターホンを1回押し、相手の反応を待つ。すると、夢翔が「ちょっと待ってな」と言って戸を開ける。


「うちへようこそ。さ、入って入って!」


 蒼生は「お邪魔しまーす」と挨拶をし、夢翔の家へと上がる。

 奥のキッチンからいい匂いがする。どうやら今日はカレーのようだ。


「もうすぐで晩飯出来るから、リビングで待っていてくれ。」


 蒼生は「分かった。」と言ってリビングへと足を踏み入れる。

 テーブル、テレビ、雰囲気といい、全て1年前と変わっていない。この家は本当に何も変化がない。


「蒼生くんいらっしゃい。ゆっくりしてってね。はい、これカレーね。」


 テーブルに3つのカレーが置かれる。

 この人は夢翔の母親。昔から物凄く美人のお母さんで、本当にこの人も昔からずっと変わってない。銅像かと思うくらい老けない。きっと料理の腕前も上手いまま変わらないのだろう。


「わざわざありがとうございます!いただきます!」


「おいこら、フライングすんじゃねー!俺も食べるんだよっ!」


 福神漬けの入った入れ物を持ってきた夢翔が急いで席へと座る。

 夢翔は昔からカレーが出ると必ず辛口。更には福神漬けを大量という根っからの辛党なので、夢翔のためにこの家には辛いものが沢山ある。ちなみに僕は辛いのは苦手で、どちらかと言うと甘党である。


「そう言えばさー。俺の家系って真田幸村と深い関わりがあってな。実はさ、あの大坂の陣でさ·····。」


「その話、何回も何十回も聞いたぞ?ってかその話本当なんか?真田幸村が生き延びて、その家系の子孫が夢翔の家って。」


「あのー、お二人に非常に言い難い事なんですけど、実はその話全部嘘です。」


 それを聞いた夢翔と蒼生は「え?」と聞き返す。夢翔に関してはもう開いた口が塞がっていない。


「実は、あの話は全部私の作り話なんです。夢翔を喜ばせようとしてついた嘘だったんだけど、そしたらその話を夢翔がいろんな人に自慢しちゃってもう今更ネタばらしするのもややこしいかなと思って言えなかったの。ごめんね。」


 夢翔の顔はどんどん真っ青になっていき、福神漬けの色とは補色の色になっていくのが見てわかる。なんせ、多くの人に自慢してきた話が、誇りを持っていた自分が全て崩れ去ってしまったわけなのだから、もう頭は真っ白だろう。


 しばらくの沈黙があった後、夢翔が震えた声でやっと口を開く。


「それって本当なの·····か?うそじゃないよな?」


「ええ、嘘じゃないわよ。これが事実よ。」


「そんなぁぁぁああああ!!」


 夢翔の見たことも無い叫び姿と共に、2人の笑い声が家の中に響いた。





※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




「じゃあ、ゆっくりと話を聞こうとするか。」


 蒼生は夢翔に連れられるがまま、夢翔の部屋へと足を踏み入れる。

 部屋はきちんと整理されており、部屋にはベッドやゲームが置いてあり、隅には小さいテレビ、更には勉強用の机が置いてある。


 夢翔はそのまま座るのはあれだからとクッションを2つ用意して、2人であぐらをかいて座った。

 少しの沈黙が続いたあと、蒼生が口を開く。


「実は、信じてもらえないかもしれないんだけど、僕は人の寿命が見えるんだ。視覚的に。人の頭の上に数字が見えて、それで分かるんだ。馬鹿げた話だけど本当なんだ。·····ここまでは理解してくれる?」


「なんかいきなりすごい話をしだしたな。うん、まぁ話は聞こう。」


 夢翔はポテトチップスを食べながら話を聞き続ける。

 毎回思うことなのだが、夢翔の部屋に来ると必ずどこからともなくお菓子が出てくる。特に親から出されたわけでもなく、持ってきている素振りもない。どこかに隠してあるのか·····?


 ――いや、それよりも話しだ。


「それで、夢翔は僕の好きな人を知っているだろ?その人の頭の上には7に米印みたいなものがくっついていたんだ。普通の人ならば数字のみ書かれているはずなのに·····。」


 夢翔は「なるほどな」と言ってポテトチップスをさりげなく蒼生に勧める。


「つまり俺に相談っていうのは、その米印が何かを突き止め、ついでに琴音を共に救って欲しいと。」


 蒼生は口へポテチを運ぼうとしていた手を一瞬止め、軽く頷いた。夢翔はその蒼生の姿を見て、顎に手を当てる。


 薄々分かってはいたが、やはりそう簡単には信じてもらえないか。それはそうだ。こんな馬鹿げた話を信じる方が間違ってるし、そもそもこの数字が寿命だという確信もない。兄弟のような関係と言っても、話を信じる信じないには関係な·····。


「その相談乗った!必ず俺が救ってみせるぜ!両方な!」


「――やっぱり信じてくれないよな。まぁこの話を信じる方が·····って、え?信じてくれるのか?こんな馬鹿げた話を·····。」


「言っただろ?俺はお前の力になりたいって。それに、面白そうじゃん!」 


 多分、夢翔が話に乗った理由は力になりたいとか信用してるからという訳ではなく、確実に面白そうということからだろう。とにもかくにも、話に乗ってくれて良かった。


「ってかさ、それってテレビに映ってる人にも通用するのか?試してみようぜ。」 


 そうか。考えたこともなかったが、この能力はテレビに出ている人にも通用するのか?もしこれで通用したら、写真でも通用するのだろうか。また、そこに映る寿命は映った時の時期のものなのか、現在の時期と同じものなのか。考えるだけで疑問がどんどん湧いてくる。まぁでも映ったからってそんな早々に何かが分かるわけ·····。



 ――ッ!?



「·····なぁ夢翔。この人って今朝亡くなってたよな?」


 夢翔は「ん?どの人?」と言ってテレビに向かって凝視する。


 あるバラエティ番組に映っているその人は多分、今朝亡くなっていた。いや、今日のニュース番組でやっていたので間違いない。だが、そこが問題ではない。問題なのはその人に浮かぶ数字。その数字は·····。


「10に米印。そして、この人は今朝亡くなった。夢翔。もし、収録してからオンエアまで時間が10日空いていたら·····。」


「えー、つまり10の米印は日付を表していると仮定すると10日が寿命という事になる。そうすれば条件と合致する。ってことは·····。」



 ――琴音さんは7日しか生きられない。


 そんなこと有り得るのか。琴音さんは今日を含めてあと7日で死に至るのか。しかし何故、どうして、どうやってそうなるんだ。


「夢翔。僕はどうしたらいい。どうやったらあの人を救える。どうすれば、どうすれば!」


「おい蒼生!落ち着け!お前が取り乱してどうする!とりあえず、7日後になんの死因で死に至るのかがわからない限り手は打てないだろ。だから、まずそこからだ。順に一つ一つ解決していこう。」


 夢翔は蒼生の両肩を掴んで言葉を放つ。


 夢翔の言う通りだ。僕が取り乱して何になる。それに死因はまだわからない。もしかしたら病気が死因かもしれないし、事故、殺人、いろんな状況が考えられる。

 今日を合わせてあと7日。あと7日の時間を使ってあの人を、琴音さんを僕が救わなければ。


 蒼生は窓の外に輝く夏の大三角形を見上げる。

 この日から僕達の時間との戦いは始まった。プロローグなどない(ぜろ)日目が。



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