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三色ルール  作者: sanstar
7/15

6.5 三色ルール臨時報告会

始業式の夜


「千尋ちゃん、いる?」


「はい」


「紗奈ちゃんは?」


「います!」


「定刻通りね。それでは、今から三色ルールに基づき、臨時報告会を始めます」


「「よろしくお願いしまーす!」」


「ごめんね。遅くなっちゃって」


「いやいや。お仕事の後に勉強されるなんて・・・ほんと疲れさまです。私も紗奈も時間は有り余っているので」


「ので!」


「ありがとう。でも、2人とも。その油断が命取りよ。学生でいられる時間は貴重なの」


「「麗華さん・・・」」


「失礼。またやってしまったわね」


「いやいや。すごーく大事な話だと思います! 太一からも良く聞きますし」


「ほんと良くないと思ってるんだけど、つい・・・ね。きっと人はこうして歳を取っていくのね」


「麗華さん、そろそろ始めませんか?」


「紗奈。年上の人にはもう少し気を使いなさい。部活でやっていけないわよ?」


「知ってます。やっていけませんでしたから!」


「そうじゃなくて、改善するように取り組みなさいって言ってんの! あと、一応、中学時代はやりきったでしょ」


「そうですけど。正直太一先輩のおかげですし」


「そういうのも含めて、自分の力なのよ」


「千尋先輩、カッコいい・・・」


「あーはいはい。というか、あの・・・麗華さん、聞いてます?」


「麗華さん?」


「麗華さーん」


「聞いてるわ」


「「良かった」」


「ごめんね。ちょっとぼーっとしてたわ。それじゃあ、始めましょうか。いつも通り各自報告した後にテーマ決めて・・・でいいかしら?」


「「了解です!」」


「色々試したけど、やっぱRINE開催がいいわね」


「ですねーグループ通話は便利です」


「そうね。太一君に聞かれちゃうかもしれないのが怖いけど」


「同居羨ましいなぁ・・・」


「その話を始めたら長いから、今はやめましょう。じゃあ、まず報告ね。順番は私、千尋ちゃん、紗奈ちゃん。オッケー?」


「「オッケーです!」」


「では・・・今朝はまず、太一君を起こしてあげました」


「羨ましい」


「太一先輩の寝顔希望!」


「後で送るわ」


「「やった!」」


「で、今日は始業式だったからお見送り。ネクタイ結んであげました」


「太一から聞きました。すごく綺麗でしたけど、練習したんですか?」


「女友達とかとお互いにね。あぁ、懐かしき我が青春・・・」


「なるほどー私も今度太一先輩にやってあげようっと。最初は失敗した方が可愛いですかね?」


「紗奈ちゃんは天然に見せかけて、色々と計算してるわよね」


「やれることは何でもやります!」


「太一にそういう計算は通用しないから」


「ですかぁ・・・」


「太一くん、変なところで鋭いからね。で、話を戻すと、見送った後は出勤。朝から支店長に詰められて・・・」


「麗華さん、そこはもう太一と関係ないところだから! あと、ほんとお疲れさまです!」


「うぅ、働きたくないよぅ・・・」


「失礼・・・仕事終わって、帰宅。太一君と一緒に夕食」


「太一の手料理なんですよね? いいなぁ」


「いいでしょー今日は生姜焼きだったわ」


「私も食べたいです! もしくは、食べさせたい」


「紗奈、料理できるのよね。あんた本当に何でもできるわね」


「弟と妹がいるので、私がやらなきゃいけないってだけなんですけどね。でも、これで太一先輩の胃袋を掴みます!」


「しかし、太一くんの胃袋は既に私のものになっているのでした。むしろ、太一くんの作る料理まで私色に染まっているまであるわ」


「うー、同居ずるいです!」


「アドバンテージは活かさないとね。その後は、まぁ、普通に過ごしてたかな。少し相談にのってあげたくらい」


「相談ですか?」


「太一先輩、何か悩んでるんですか?」


「そんなに深刻じゃないけどね。でも、一応、プライベートだからどうしようかなぁ・・・」


「麗華さんにお任せします」


「ありがと。千尋ちゃん。まぁ、今回のはいいかな。高校出た後の進路についての相談だったわ」


「太一、もう進路決めてるんですか?」


「いや、考え始めたところって感じね。まだほとんど白紙」


「なるほど」


「私からはこんなところかな。じゃあ、次は千尋ちゃん」


「はい! 私は太一を迎えに行って、一緒に登校。同じクラスでした!」


「流石、千尋ちゃん。確かずっと同じクラスなのよね?」


「そうなんですよ。運命感じちゃいます」


「千尋先輩、なんか悪いことしてるんじゃないですか?」


「ないから。本当に偶然だから」


「でも、私は偶然なんかに負けません。欲しいものは全部この手で勝ち取るんです」


「相変わらず紗奈ちゃんは強いわね。お姉さん、逆に心配だわ。あんまり溜め込んじゃダメだからね?」


「はーい。麗華さんもあんまり無理しないでくださいね? 仕事とか仕事とか。あと、仕事とか」


「仕事しか無いじゃない・・・」


「紗奈、その辺にしときなさい。でも、麗華さんは本当無理しないでくださいね? で、えっと、授業は午前中で終わりました。あとで、紗奈から話があると思いますけど、一旦、紗奈に太一を譲ってからの太一と一緒に帰宅です」


「途中に気になる部分があったけど・・・一旦、流すわ」


「えへへー」


「はいはい。あざといあざとい。で、帰宅しただけだから、特に言うことは無いかなぁ」


「無い? じゃあ、次は紗奈ちゃんにいく?」


「あ・・・」


「何か思い出したかしら?」


「いや、えっと・・・ちょっと時間ください」


「千尋先輩、何話すか決めてないんですか? 準備不足では?」


「やかましい」


「紗奈ちゃん。この報告会、そんなガチなやつじゃないから。ね? もっと気楽にやりましょう」


「でも、太一先輩の愛を勝ち取るための機会の1つです」


「紗奈ちゃんはすごいわね」


「えへへー」


「褒める気持ち半分、ドン引き半分って感じかしら・・・まぁ、それはいいとして報告に戻ると、帰り道に太一と手を繋ぎました!」


「「!!」」


「まぁ、恥ずかしくてすぐに離しちゃったんですけど」


「千尋先輩、手を繋いだのはどっちからですか!?」


「私よ。離したのも私から」


「なるほど。じゃあ、私と同レベルですね。安心しました」


「事実だけど、そのリアクションは腹立つ」


「2人とも、付き合ってるわけでもないのに、男女が手を繋ぐのは良くないんじゃないかしら?」


「「おっと。そうきたか」」


「いい? 付き合いには段階というものがあるの。それを飛び越えちゃダメよ」


「「はーい」」


「本当にわかってるのかしら・・・まったく」


「で、まぁ、それはそれとしてですね。太一先輩のリアクションはどうだったんですか?」


「太一? ちょっと照れてた」


「なんですと・・・私、そんなリアクションもらったことないです!」


「あんたは恥じらいが無さすぎるのよ」


「私は心の赴くままに生きてますからね。しかし、照れを見せた方がリアクションがいいんですね・・・うーん」


「紗奈ちゃん? ダメだからね?」


「あ、はい。すいません! 段階を踏んでですね。段階段階段々階〜♪」


「誠意が感じられないわね・・・」


「まーまー、麗華さん。そんなに怒らないでください。えっと、私からはそんなところです。次は紗奈!」


「はい! まず、授業が終わった後に、太一先輩の教室へ突撃し、部室に連れていってもらうようにお願いしました」


「なお、いきなり太一に抱きついてました」


「段階。節度」


「違うんです。太一先輩と同じ学校になったという事実にテンションが上がってしまいまして・・・」


「他にも色々あったけど、話が進まないから黙っておくわ」


「はい! で、千尋先輩のご厚意もあり、その後、太一先輩と一緒に部室へ行きました」


「貸しだからね」


「何かあったの?」


「授業終わった後、太一先輩と出かける約束をされてたんですけど、譲っていただきました」


「なるほど。ルール的には千尋ちゃん優先だけど、まぁ、2人の同意があるなら構わないわ」


「はい。ありがとうございました! おかげさまで練習できました。速見部長にも挨拶できましたし」


「部活休みじゃなかったっけ? 太一も帰ろうとしてたけど」


「あ、はい。休みでした。速見部長は片付けをされていたみたいです。部長はすごい人なんですよ? 前に立って、2人で話すと、全部見透かされてしまうみたいになって、走って逃げ出したくなるんです」


「それは紗奈に後ろ暗い事があるからなんじゃ? 太一からはそんな事聞いたことないけど」


「えへへー」


「紗奈ちゃん、その返事、今日は禁止にしましょうか。そういう可愛い感じだけで乗り切ろうとすると、後で苦労するわよ?」


「麗華さん、怖い・・・」


「貴方のためを思うからこそよ」


「うぅ・・・注意します。で、練習した後は太一先輩とお昼を食べてました。私の手作り弁当です!」


「手作り弁当! 学校で好きな人と食べるお昼ご飯! いいわねぇ・・・」


「ガチっぽい反応で少しリアクションしにくいですけど、気にせず言うと、いいでしょう〜!?」


「確か弟と妹にもお弁当作ってるのよね?」


「はい。なので、太一先輩の分もついでに作っちゃいました。今日ならいけるかなと。練習終わった後は帰宅ですかね。特に、何もなかったです」


「腕を組んで歩いていた」


「それが何か?」


「節度」


「あー・・・うー・・・ええと」


「紗奈ちゃん? 太一くん以外には、絶対そんな事しちゃダメよ? 適切な距離感を保つこと」


「もちろんです。いいですか? 私は誰にでもああいう事をするんじゃないんです。太一先輩だからです」


「なんで偉そうなのよ・・・大体、元はと言えば、あんたと太一の距離が近すぎるって話から出た注意よ?」


「あー、もう。いいじゃないですか! 私には私の戦略があるんです! 雑誌にも男を落とすには適度なボディタッチが効果的って書いてました!」


「だから、太一には、そういうの効果ないって言ってるでしょ!」


「効くもん! 続ければ、そのうち太一先輩にだって効果出てくるもん!」


「あー、はいはい」


「今日はこの話は終わりにしましょうか。キリがないわ・・・」


「「はーい」」


「報告は大体終わりかしらね?」


「「でーす」」


「では、テーマを募りましょう」


「はい! はい!」


「では、紗奈ちゃん。どうぞ」


「テーマは、太一先輩からの呼ばれ方について!です! 私も下の名前で呼ばれたい!」


「紗奈ちゃん、心の声が漏れすぎ。とりあえず、テーマはそれでいいから、もう少し説明してもらえるかしら」


「お互いをどうやって呼ぶかって重要だと思うんです。やっぱり距離感が良く出るというか」


「なるほど。続けて?」


「私的な私からの太一先輩の距離はゼロというか、もはやマイナスなんですけどですね」


「そういうのはいいから。中身を早く」


「麗華さんひどい!」


「話が進まないからね?」


「はーい。で、太一先輩からの呼ばれ方はというと、千尋先輩は『千尋』で、麗華さんは『麗華さん』ですよね? なのに、私だけ『緑園』なんです」


「なるほど。自分以外は下の名前で呼ばれてるから同じようになりたいと」


「そう!です!」


「紗奈の希望はわかるけど、私達は何を話せばいいのよ」


「まぁまぁ、千尋ちゃん。そんなに真面目に考えなくてもいいんじゃない? 色々と語り合えば。もし、もっと話したいことがあれば、相談だけど」


「いや、今日は特には・・・」


「じゃあ、私の案で決まりですね。どうしたら太一先輩に下の名前で呼んでもらえますかね?」


「下の名前で呼ぶの断られてるんだっけ?」


「はい。何回か頼んでるんですけど、違和感があるって断られてます」


「じゃあ、無理じゃない? あいつ、変なところこだわるから」


「そこを何とか!」


「いや、私に言われてもね・・・」


「千尋ちゃんは、昔から千尋って呼ばれてるのよね?」


「幼馴染なんで。物心ついた頃には」


「うー・・・」


「麗華さんはいつからなんですか? 最初から?」


「私? えっと・・・」


「麗華さんは、最初は青井お姉ちゃんって呼ばれてましたけど、同居を始めてから家主という有利な立場を使い、無理矢理麗華さんと呼ばせてるんです!」


「詳しすぎない!?」


「今日聞きました」


「でも、無理矢理じゃないわよ? 太一くんも納得してくれてるはず」


「でも、太一先輩はお姉ちゃん呼びの方が慣れてるって言ってましたー」


「・・・まぁ、私の話はいいじゃない?」


「そういえば、紗奈。あんた太一のこと、お兄ちゃんって呼んでたわね。あれは何よ?」


「後輩キャラと妹キャラ、どっちがいいですかね?」


「知るか!」


「私、属性的にはどっちもいける気がするんですよね」


「もう何言ってるかわからないけど、使う場所は注意してよ? 後輩にお兄ちゃん呼びさせる人、普通にやばい奴だと思われても仕方ないからね」


「はぁーい」


「ねぇ。ちょっと待って? お兄ちゃん呼びって、何?」


「太一先輩のこと、太一お兄ちゃんって呼んでます。今日からですけど」


「いや、それはおかしくないかしら?」


「でも、麗華さんだって、青井お姉ちゃんって呼ばれてたんですよね?」


「それはそうだけど、私の場合はそもそも歳の差が」


「差が?」


「差が・・・」


「はい」


「歳の差がね・・・えっとね・・・」


「ええ」


「紗奈、やめなさい」


「えぇ、私のせいですか!?」


「誰も悪くないの。しょうがないでしょ? 好きになっちゃったんだから」


「千尋ちゃん・・・」


「千尋先輩、カッコイイです。私が男だったら惚れてました」


「私はちょっと惚れそうよ」


「麗華さんまで何言ってるんですか。もうこの話題終わりでいいですか?」


「私の相談自体への回答が全然ないんですけど・・・」


「言ったじゃない? 諦めなさいって。太一の気が変わらない限りは無理よ」


「なるほど。太一先輩の気を変えればいいのか」


「紗奈?」


「今までは太一先輩にお願いしても断られて、なんでー! って感じだったんですけど、今の関係性じゃダメってことですね」


「ちょっと・・・」


「であれば、やるべきことは太一先輩への猛アタックです。つまり、これまで通りです!」


「うん。まぁ、そう・・・」


「我が恋の成就には奇策や抜け道なし。王道を貫けと。そういうことですよね!?」


「いや、そこまでは言ってない。そもそも恋を成就させるのは私」


「はいはい。そこまで。まぁ、呼び方ってのは、難しいわよね。卵が先か、鶏が先かみたいで。呼び方を変えることで関係性が変わることもあるし、関係性が変われば、自然と呼び方は変わるしね」


「どっちが卵で、どっちが鶏かはわからないんですけど、とにかく太一先輩にアタックして落とします!」


「あーはいはい。おつおつ」


「もっと私の話をちゃんと聞いてください!」


「嫌よ。私はあなたのママじゃないんだから」


「うー」


「まぁまぁ・・・さて、そろそろいい時間ね。本日の臨時報告会は終了しますか」


「「はーい」」


「次は定例でね。明日も学校だし、早く寝るように」


「はーい。麗華ママ、おやすみなさーい」


「マ・・・!」


「あー、もう紗奈のバカ! って、もう落ちてるし・・・」


「ママ・・・千尋ちゃん。ママってなんだっけ?」


「え、えっと。あはははは・・・それじゃあ、私も寝ますね。明日から部活始まるし。麗華お姉さん、おやすみなさい」


「ママ・・・」

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