プロローグ
この世界は、理不尽だ。
「この忌み子が。近寄るんじゃない!」
「これが呪われた金の瞳。全く、気持ち悪い」
「何故お前のような者が生まれてきたのか!さっさと出て生きなさいっ!」
これが、忌み子である私への正常な反応。
人に向けるものとは思えない、冷酷な視線。
どうして、どうして、どうして?
ねぇ、私が、何か悪いことをした?
呪われるようなことをした?
どうして?どうして私は、忌み子なの?
嫌われ、きみ悪がられ、恐れられ、ついには家から追い出された。
豪雨の中、ボロボロの衣服が肌に張り付いて気持ち悪い。腰のあたりまで、無造作に伸ばされた銀髪が、纏わり付く。
銀髪に金の瞳。それが忌み子の証。
辛い、痛い、苦しい。
何で私が、こんな目に合わなきゃいけないの?
いっそのこと、死んでしまえたら、どんなに楽か。でも、死なない、死ねない。それが忌み子。
不死不滅。人知を超えた力を持ち、災厄を招くとされ、だからこそ忌み嫌われる。そういう者のことを、人は忌み子と呼ぶ。
「や……だぁ」
こんな力、いらない。私が望んだ訳じゃない。
雨に打たれ、体温が奪われていくのが分かる。クラリと目眩がして、意識が遠のいていく。ここ数ヶ月、ろくに食べてなかったからなあ。
でも、これでもきっと、死なないんだよなぁ。
遠のいていく意識の中、誰かの声が聞こえた……ような気がした。
「おーい、大丈夫?」
「マスター、多分もう死んじゃってますよー、諦めて早くかえりましょー?」
「いや、まだ死んでないよ。意識は無いけど、心臓は動いてる。連れて帰ろう? 放っておいたら本当に死んじゃうかも」
「マスターはお人好しですねぇー。私は、マスターが決めたことなら反対はしませんけどぉー」
「何だかこの子、僕たちと同じ匂いがするんだ」
「私たちと、ですかぁ?でも、マスターが言うなら、間違いないんでしょうねー」
これは、忌み子と呼ばれる少女が、ささやかな幸せを求める奮闘記。