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カテゴリー・エラー  作者: 流氷陽北
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群がる下位個体




待てよ?そういえば七は私に格闘の補助を任せていたな。

 それはまさか今もじゃないだろうな?

 先ほど任された時は、包囲された軍を支えるため、七としても格闘に掛かりきりになりたくない状況だった。

 だから私の力を借りようとしたのも説明できる、四つある思考の内、一つが空けばそれだけ遠距離攻撃を行えるからだ。

 だが今は七の軍は壊滅状態に近く、七が援護したとて意味はない。

 それに七の軍勢は本拠奥地に進んでいるため、七の戦略の主眼は、恐らく四本拠地にいる『黄幻の四』を殺すことにある。

 四は『千の白橋』等の攻勢固圧で牽制力が強いため、遠距離では殺すのは難しい、だから格闘で仕留めるつもりなのだろう。

 四を仕留めれば、求心力ともども四軍は軍円を失い瓦解する。

 瓦解後の配下は別の勢力の下につくか放浪を始めるから、四、できれば八までトドメを刺すことで、四・八の残存兵の大半が七の配下に加わり、多少は安定する。

 もし七の狙いがそれなら、この格闘戦は本気で戦うだろうし、私は眺めていてもいいはず。

 いいはずなんだが……、七はどうみても格闘用の固圧配置を作っていない。

 やはり私に任せているのか?

 気を揉んでる内に接敵し、せわしなく推移を眺める。

 『遠征の傘下道』を通って、強襲してきた敵の下位個体は五体、七の下方八百フォアから一体、前方二百フォア先に一体、七に引き離された千八百フォアの位置に三体だ。

 七が持っているのは紅暗槍のみで、結局格闘の補助固圧は配置していない、ただ今回は『落伍した英雄』と戦った時ほど、キツい戦闘にはならないだろう。

 近接に強い個体は、基本的な目安としてシ速三百フォアを超える速度があるかどうか?で見定められる。

 彼らの場合、腕を振る際にも火孔のプラズマで運動量の補強をする。

 シ速三百フォアを超える者は、核融合生物の平均シ速二百三十フォアから比べて、推力が強いため腕の振りその他も速くなる。

 核融合生物は火孔の推力に応じて動きが速くなるわけでシ速が速ければ速いほど、格闘が強い個体となる場合が多い。

 現在囲んでいる下位個体たちの速度は、一番高いので武器持ち二百六十フォア。

 武器無し時の七がシ速三百三十フォアだから、今囲む五体とは比べるまでもない。

 後方にいる二百三十フォア以下の三体は完全に七に振り切られていて、臆しているのか進んで戦うつもりはなさそうだ。

 速度にあまりに差があると、格闘戦でほぼ負けるから、これは賢明な判断であるといえる。


 あとは前方と下方にいる者達だが、一応戦闘意欲はあるようなので囲まれない内に切り抜けることが大切になる。

 7の行く手を塞ぐ前方の敵個体は、長い突起のついた盾を構えつつも、戦術が定まっていないようで右や左、前や後ろに動き回っている。

 これは格闘下手な個体だろう。

 格闘戦の上手い個体は、大抵身体を前傾にして、武器から頭胴脚までを真直にし、突進、一撃必殺を狙う。

 彼らにとっての手足は実は生態的にはさほど必要ないため、本来突進攻撃が一番得意だ。

 私が彼らを作る計画を建てた時は、数百億の生命内包惑星の内、二足歩行型の炭素生命が一番、文明発芽の確率が高かったので、核融合生物を作る際に願掛けとして、大ざっぱに形が似るように苦心した。

 手足をつけたのは願掛けにすぎず、本来ならこれだけ時代が過ぎれば、退化して消えているはずだった。

 生活上不要な手足、ただ彼らは幸か不幸か最初から手足を使って戦争をしたがために、退化せずに今も残っている。

だが手足など使う機会は少ないから、格闘をよほど多く行う者以外は手足の使い方が下手だ。

 手足で牽制しつつ何度もぶつけあうより、億齢と同じように真直になり、突進する方が生態に合っているために基本的に強い。

 だから、格闘の上手いものほど飛空姿勢からの突進、一撃離脱を多用し、逆に格闘が下手な者は意外なほど、苦手な手足に拘泥する。

 七の槍は突進をするのに向いた形状になっていて、肝心な場面での突進攻撃を決め手とするが、この前方の敵は、そう言った意図を感じさせない。

 だから七が低密固圧ありシ速三百五十の体槍一体の突進を仕掛けた時、敵は何を迷ったのか、前面の火孔を吹かせて急減速し、ほんの五フォアほど下がったのだ。

 彼の持つ突盾は前面の半ばを覆うほど広く、七の武器より生成から時間が経っていて硬くはあった。

 三方に伸びる鋭い突起も利用すればそれなりに立ち回れはしただろう。

 しかし、迷いつつ後方に退いたがためにそれは全て無になった。

 七は低密固圧で得たシ速三百五十フォアに追い風の助けを受けてさらに加速、敵は上方に退避しようとしたが、止まっている状態からの移動かつ、加速も不得手だったため、速度がさして出ていない。

 接近した七は二百フォアあった距離を半シでほぼ無とし、大気に含まれる酸素によって、火球の如き様相を呈したまま、火孔前面、肩から腕にかけ、つまり火孔の表-壱から陸までを開放し、その荷電粒子の爆ぜなりによって、短い弧を描いて急上昇。

 敵は火孔の『表-玖、拾、拾壱、拾弐、裏-壱、弐』を開き、空中で反転、盾を下に向け、迫り来る七に対応する。

 それと同時に背後空域に白靄や白華を作り、盾で防いだ後の攻防の準備をする。

そして、衝突、盾で防ぐ瞬間に七が、径-伍、陸の火孔を強めて速度を上げ、敵の盾の縁に衝撃が走った。

 盾の軌道に槍の切っ先が寸前で滑り込み、槍が鮮烈な火花を散らしながら盾を擦り、敵の流線形の脚部に突き刺さる。

 その長槍が刺さる衝撃で敵は脚を後ろに跳ね上げるように空転、脚部であったために即死はしなかったが、敵が状況把握をしようとする僅かな時間の間に、七は槍に刺さった敵を振り回し、右下方、大空を覆う白靄の渦にぶん投げる。

 だが火孔は無意識下では圧力に抵抗するように噴射される、敵はその遠心力に抗い、体内に槍を押し込むように火孔を噴かしてしまったため、槍から外れそうもない。

 七は槍に刺さった敵を引いて僅か飛行後、上空を下にするように回転しつつ、速筋に働きかけ、渾身の力で腕を振る。

 速筋は火孔や遅筋より瞬間的に速度がでる、筋組織内の二手子が水素と化合する爆発的な膂力によって、圧力を上昇させた槍が唸りを上げ、激しい遠心力によって敵が投げ出される。

敵は空中を二十フォアばかり落下後、ようやく混乱から脱したものの、まだ理解が追いついていないようだ。

 可哀相だが黒皮とその下の引膜を貫通されれば、あとは内圧による細胞の噴出と、放射線で死ぬばかりだ。

 そして立ち直った敵は一応は七を追い、七の前方に展開されていた白華群の完成を進めたものの、七が無視して先に進んでいたため、死にゆく彼のその様はどんどん小さくなり、すぐに白靄のむこうに見えなくなった。……ふと思い立って、精神感応を使って死にゆく彼の心を映してみた。

死の痛みなんか味わいたくないので、映像の方だ。

 その下位個体の心は、七とは違っていた。

 七の場合、押し潰そうとする岩盤とそれに抗する強き輝きが見えたが、その下位個体の場合は、真っ黒な岩盤だけしか心の中に見えなかった。

 岩盤が苦しみや私の与えた痛みを現すなら、……この下位個体の生きた中に、喜びはなかったのだろうか?

 それとも死の瞬間だから、真っ黒に押し潰されただけなのだろうか。

 ……しかしよく見れば、彼の心の岩盤の中にも赤い場所はあった、でもそこは熱されているだけで、輝いてはなかった。冷え切った岩盤の底の僅かな熱が、私の世界が彼に与えた希望の全てなのか?

 ……いや、まあ気にする必要はない。

 心は一体一体差がある、一体を見て全ての者がそうだと考えるのは早計だ。

 沢山の生命が生まれれば、中には当然不幸な者も出る。

 私はその当たり前の答えを繰り返し、できる限り、無関心を装い映像を切った。






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