=序章= 過去と戦慄
お久しぶりです、ってファンの方いないと思いますが。。。苦笑
今回は頑張って書き終えるつもりです。
「ルシフェル様ー!」
透き通った声が純白な部屋に響く。
「なんだ?」
ルシフェル、と呼ばれた彼は、白にあたりを囲まれた部屋にいる。
そこには巨大な画面がいくつもあった。
「蒼月乃宝玉が盗られた!」
「またか。天使たちは何をしているんだ。」
「守護天使が消えたって。」
その声の主はララエルだった。
ララエルはまだ半人前の天使だが、保持魔力においては聖天使以上ともいわれる。
「き、消えた。。。?」
ルシフェルは立ち上がりその部屋を出た。
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ルシフェルはあるところへ向かっていた。
宇宙樹の核室、『聖天使』のところへ。
「聖天使様。実は、天使が消えているという報告が参りました。」
聖天使とは人間界で言う「女帝」という存在だ。
「ほう。興味深い。見せてみよ。」
厳格な声が部屋に響く。
ルシフェルが報告書を手渡す。
「こ、これは。。。」
聖天使が驚く姿はルシフェルでさえも見たことなかった。
聖天使の側近であるルシフェルでさえも。
「まさか。天界でこのようなことが起こっているとは。」
「どうしたのですか?」
「天使が堕天化したのだ。ダークミストが天界まで来ているとは。」
ダークミスト。地界から流れ出る霧。
世界を侵食するといわれている霧だが、天界が人間界をダークミストから守っている。
「まさか、これは、例の?」
「そのようだ。サタンの脅威がここまで来ているとは。。。!」
サタン。それは地界の封印されし王。閉ざされし大悪魔乃門の奥にいる。
「奴はいずれ覚醒するであろう。それだけは許してはならぬ。精鋭たちを送れ。」
「は!」
だが、世界をすべて巻き込むことになるとは誰も予想しなかった。
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ピピピッピピピッ
「うぅ。。。」
彼の耳にけたたましく響く時計の音。
朝が来た。彼にとって岐路となる時が刻々と近づいていた。
彼の名前は天木大翔。喧嘩は強い、気が短いなど、悪いイメージが多い彼。
だが根はいい奴で、仲間思いのやつだ。
「翔乃ー!出かけてくるわ―」
「はいはい。兄ちゃん、喧嘩はダメ!ってかご飯ー!」
「飯いらねー!喧嘩してくるわー」
「え!?ちょっと!?待って兄ちゃん!っていないし。。。」
翔乃と呼ばれた彼女は、大翔の妹。
父親は単身赴任で海外へ。母親は7年前に家出した。
「おーい。天下のオーガくぅーん?」
「。。。ざけんな」
「まぁまぁ。そんなに怒らない怒らない。あるニュースがあってきたんだ。」
彼は黒縁の眼鏡に黒のコートを着た、顔だちもいい、イケメンという種族に値する。
「ニュースってなんだよ」
「あぁ。ある『殺し屋』が暴れまわってる。」
「おいおい。俺の担当は『喧嘩屋』であって『殺し屋』とは縁がない。」
喧嘩屋とは、いわゆる個人暴力団のようなもの。金と力では一流。
大翔はその喧嘩屋を次々となぎ倒していた。
「まぁ聞け。僕の予想だと本気で殺しにかかる『喧嘩屋』だ。」
「いや変わんねーよ」
最近物騒な奴らが暴れていた。それが殺し屋だった。
「まぁ天下の拓斗様でもわからねえぐらい謎めいた喧嘩屋ならいっちょ行こうか。」
「そうでなくっちゃねーあははー」
「うるせー」
「じゃあ行くか。」
そう言って彼らは歩き始めた。
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「。。。んで?ここか?」
彼らは今、港近くの倉庫の前にいる。
『殺し屋』退治のために。
「あぁ。この倉庫だな。」
「本当にいるんだろうな?」
「ああ。いるはずだ。」
彼が重い扉を開けた瞬間。
辺りが一瞬白く光った後。
大翔は吹き飛んだ。
はずだった。
だが。
「。。。全く。。。」
大翔の声だった。体は傷だらけだった。
「イブリスか。凝ったことをしてくれるものだ。」
彼の声。だが意識は違う。
「。。。目が覚めたかい?アクラエル。」
「この子供に私の魂を入れたのか?」
「うん。でもまだ覚醒するには早すぎたみたい。」
イブリス、と呼ばれた男は純白のコートを着ていた。
「誰がこの子供を狙ってる?」
「その子供を狙ってるわけじゃない。君を狙ってるみたいだ。」
「私を?なぜだ?私が魔天使だからか?」
「サタンが覚醒しようとしてる。だからかな。」
「サタンか。いい迷惑だ。この子供は蘇生させておこうか。」
「うん。君のためにも。それじゃ、僕も一度引くよ。」
――――――
「。。。うん。。。?」
大翔は体を起こす。
「なん、だ?今のは?」
彼には今何が起こったのか理解することができなかった。
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「。。。!?」
「ル、ルシフェル様?」
彼はいつもの巨大な画面のある部屋にいた。
隣にいるのはララエル。
「なんだ今のは。。。!」
「ど、どうしたんですか?」
「いきなり底なしの魔力が。。。!」
ある特定の天使、特に上級天使などは魔力の変化をとらえることができる。
さらに「魔力波」と呼ばれる波も感じ取ることができる。
「この魔力波は。。。まさか!」
「サタンですか!?」
「いや違う。アクラエルだ!」
「アクラエル、ですか?」
「遠い昔において地界を治めた魔天使だ。」
魔天使。天使が自ら堕天化し、神と接触したことがある天使。
ちなみに神と接触がある天使のことを天界では聖天使という。
「アクラエルは消えたはずだった。。。自らを犠牲にして世界を守った。」
「魔天使なのにですか?」
「魔天使だからだ。世界の均衡を保つため自らを犠牲にしたんだ。少し過去の話をしよう。」
そういってルシフェルは語り始めた。
―時は戻ってナハス暦2036年。
世界は崩落寸前だった。
宇宙樹がダークミストにより枯れかけていたのだ。
「サタンを覚醒させてはならぬ!奴はすべてを破壊する!」
白い部屋に響き渡る声。
「ですが聖天使!行けばあなたが堕天してしまいます!」
「仕方あるまい、アクラエルよ。。。あとは任せたぞ。私は奴と決着をつける。」
「聖天使!唯一神と繋がっているあなたがこの座を離れては天界は混乱に陥ります!」
聖天使以外、神とは繋がれない。
神と接触できるのは神に認められた天使と悪魔だけ。
「だがほかに道はないのだ!」
「。。。あります」
「あるのか?」
「。。。私が。。。行きます。。。」
「。。。ならぬ!」
アクラエルはそういって大悪魔乃門を開いた。
「。。。必ず、取り戻します。この世界を。」
笑顔でアクラエルはそういった。
「行くな!アクラエル!待て!」
聖天使がいいたころには扉が閉められていた。
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「。。。サタンか?」
「。。。。。。天使の小娘が。何故ここに来た?」
「お前を止めるためだ。」
「ふっ。もうじき堕天する天使に何ができる?」
「その前にお前を倒すまでだ!」
「ほう。せいぜい足搔けばいい。今から世界崩落の戦慄の始まりだ!ふははは!」
闇に響く笑い声。
アクラエルは新たな感情を抱いた。
死に対する恐怖でも世界を助けるという使命感でもない。
サタンに対する憎悪だった。
「。。。世界を壊して何が楽しい?」
「聞くまでもない。新たな世界を作ることができるだろう?」
「宇宙樹に二度の命などない!」
「だが地界には関係ないだろう?世界は「上」にあるんだからな。」
「き、貴様。。。!。。。ぐはっ。。。!」
アクラエルの口から血が逆流する。
鮮やかな真紅。
白いドレスを真っ赤に染めてゆく。
「堕天化が始まったな。もう長くはないぞ?」
「。。。私に闇を。。。くれ。。。」
サタンにはその意味がわからない。
「なに?ダークミストのことか?そんなに死にたいのか?まぁいい。」
そう言うとサタンはダークミストを凝縮した塊を創った。
「ここのダークミストすべてを集めた。さぁ。死ぬがいい。」
そういって投げつける。当たるとアクラエルのまわりにダークミストが纏う。
「。。。ダークミストは均衡を守るのに不可欠だ。。。」
「いかにも。微量ならば、な。だが天使にとって多は害だ。」
「小なら益。多なら害。転じて全なら。。。益だっ!!」
「な、なに!?」
アクラエルはそう叫ぶとその塊を吸い込んだ。
それと同時に目の前にある画面が広がる。
それは真っ白い光の中にある人物がいる光景。
「神」だ。
アクラエルは「覚悟の死」によって、神界へと導かれた。
『アクラエル。お前はなんてやつだ。自分の命を「これ」に賭けるとは。』
アクラエルは口を動かすが喋ることができない。
『ガブリエルと似ているな。正義感とか。まぁもう一度チャンスをやろう。』
そういうと「神」は白い光にまた消えた。
そして。
彼女は体を起こした。
立ち上がり、目を開けてサタンを睨む。
「な、なぜだ!天使も悪魔も人間も!死んだら生き返らぬ存在だ!」
アクラエルは生き返った。
救世主の証の6枚の羽。
白と黒の翼は光と闇を表す。
長い黒髪と凛々しい顔。
より美しく、華麗で、強く、光と闇を操り、そして世界を救う。
魔天使アクラエルが誕生した。
「お前だけは。。。許さない。。。!」
そういうと彼女は「神髄なる封印魔法」を使った。
また、自らの命と引き換えにして。
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「こうして世界は救われた。」
「そのアクラエルは死んだはずじゃ?」
「そのはずだった。でもさっきのは確かにアクラエルの波だ。聖天使のところへ行く。」
「了解しました。ですがもしアクラエルが生きていたならどうなるのでしょうか?」
「地界の王のことか?」
地界の王。聖天使がいるように大悪魔も存在する。
「はい。ベルゼビュートに代わるのでしょうか。」
「わからない。。。とにかく聖天使へ聞きに行こう。」
そう言うとルシフェルはララエルを連れて部屋を出た。
そのあと画面にはある文字が浮かび上がっていた。
『Rampage/Enemy Warning!Rampage/Enemy Warning!』
と。
「。。。やはりアクラエルか。お前はまだ誕生していなかったな。」
「はい。ですが歴史書に載っていた波の特徴などから多分そうかと。」
「間違いない。アクラエルだ。だがすぐに消えた。」
聖天使はそういってある宝玉を箱から取り出した。
「金剛月乃宝玉だ。これでアクラエルの波の居所がわかる」
そういって彼女は金剛月乃宝玉に呪文をかける。
すると。
「こ、これは!ルシフェル!」
「。。。そんな。。。ばかな。。。!」
そこには傷だらけの大翔の姿があった。
そして彼の前に立っている人影。
黒く長いコート。赤と黒が混ざったような色の角。
右手に持った鋭い黒剣。そして左手に生成される魔法陣。
彼こそがベルゼビュートだった。
床には黒縁の眼鏡がベルゼビュートの近くに落ちていた。
べ、ベルゼビュート!?