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2015年/短編まとめ

未熟な林檎の問い掛けは

作者: 文崎 美生

「貴方と私は無人島に流されてしまいました。食料は林檎一つだけ。貴方ならこの林檎をどう扱いますか」


私が友人にぶつけた問。

望む答えはあるけれど、それを返してくれる人はいなかった。


「食べる」


ケロリ、とした様子でそんなことを言った友人に、頭痛がしてきて頭を押さえた。

そうだけど、そうじゃないんだ。

求めた答えでもなければ、望んだ答えでもない。

更に何か違う気がする。


私が違う違う、と言うように首を振れば、友人は不思議そうに首を傾けた。

何が違うの?とでも言いたげだ。

違うわけじゃないけど違う。

食べるけど『半分』とか『一人で』とかあるだろ。


「植える」


もそもそと朝ごはんのパンを食べていたもう一人の友人が答える。

色々待って欲しかった。

何だ植えるって。

実のまま植えて木になるのか。

そもそも普通の林檎で木になるのか。

木になるまでどれだけ時間かかるんだ。


「半分こして種は植えるが正解」


頭上から突然声が落ちて来て肩が跳ねる。

顔を上げた先には、隣のクラスの友人がいて貸していた私の教科書を持っていた。

お礼を聞きながら頷いたけれど、その友人が出した答えも否、だ。


半分こ、というのは良くある答えだとは思うけれど。

尚更欲しくない答えでもある。

どれも違うと首を振って見せれば、全員がこれはこれはと答えを投げてきた。

ちなみにどれも違う。

ましてや『腐らせる』なんて論外だ。


他にも沢山の答えがあった。

『ジャムにする』とか『海に流す』とか『それを餌に別の動物をおびき寄せる』とか……。

どれも望んだ答えじゃないけれど。

それどころか、ふざけてる感満載の答えだ。


「おぉ、四人で何してんの」


飲み物を買ってきていたらしい隣の席の男子が、私達に声をかけてくる。

それに反応したのは先程までパンを食べていた友人。


「答え探し」


「ごめん、良くわかんねぇ」


コトン、と飲み物を机の上に置いた彼は、のんびりとした動作で自分の椅子を引いて座る。

体は私達の方に向けているので、話を聞く気は満々らしい。

だから私は先程友人達にした質問を、再度口にする。


「貴方と私は無人島に流されてしまいました。食料は林檎一つだけ。貴方ならこの林檎をどう扱いますか」


私の問に彼はパチパチと目を瞬いてから、ものの数秒で答えを出した。


「君にあげれば、解決じゃなくて?」


私の眉がピクリ、と反応した。

だけど、そんなことに気が付かない友人達は納得したり感心したような声を漏らす。

違う。

それは嬉しい答えなのかもしれないけれど、私が求める答えからは一番遠い。

望んだ答えから一番遠い。


「ありがとう。でも、違うんだ」


ふるふる、と首を横に振る。

そうすれば、友人達も彼も不思議そうに目を丸めてから何で、というように私を見た。

何でも何もないのだ。

私が望んでいるのはそんなじゃないのに。


簡単に出された答えは、要らない。


不思議そうにして私に答えは?とせがむ友人達。

彼も少しだけソワソワしている。

それでも私は知らんぷりして、机の上に突っ伏した。

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