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遠くからでもわかるシルエット。
門番ゴリラだ。
でも門番ゴリラは森側を見ていて僕には気付いていない。
門を潜る。
木々の葉っぱが日差しを遮っているおかげで涼しい風が吹く。
さて、この森に狼系以外がいるかどうか聞いてみるか。
と思ったら、
「あ、あんたさっきの・・・」
門番ゴリラが声を掛けてきた。
相方の姿が見えない。
直ったとは言え扉を破壊したわけだから怒られているのかな?
「あ、門番さん、さっき振りですね。。」
「あんた、冒険者になったんだな。依頼かい?」
「ええ、それでちょっと聞きたいんですけどね、この森って狼系以外に魔物っていますか?」
来た時は狼系にしか会わなかったからな。
まさかそれしかいないなんてこと無いよね?
「うん?ウルフ系以外にか。勿論、居るには居るが・・・。なぁ、依頼の魔物はなんなんだ?」
そうだった。
また忘れていた。
依頼を見てないじゃないか。
適当にポケットに突っ込んだくしゃくしゃの紙を取り出してみる。
取り出した瞬間、クエストの発生音と板が降りてきた。
依頼票には魔物の名前とイラストが載っている。
1枚目はずんぐりむっくりしてる兎だ。
体色は緑のようだ。
えーと?
オオバ・・・ウサギ?
「大葉兎か。ランクGの魔物だ。アレならすぐその辺でも遭遇できるぞ。ただ、音に敏感だからな、逃げられないようにな。」
チュートリアルイベントの時に言っていた葉兎の亜種で通常のものよりも体格が大きいんだとか。大きくても素早さは変わらないらしい。
2枚目を取り出したとき、再びクエスト発生音。
左上から板をもって降りてきたのはデフォルメされた死神だった。
超絶難易度ってことでいいのかな?
2枚目は丸いゼリーのようなものが2つ描かれている。
ええと、・・・スライム・・アックス?
「す、スライムアックス?!」
門番ゴリラは嘘だろという顔をする。
「え?」
「それ、間違ってるんじゃねーかな?今日冒険者になったばかりのやつには・・・ああ、あんたを馬鹿にしているわけじゃなくてな、単純にランクFの魔物なんだよ、スライムアックスってのはさ。だから、荷が勝ちすぎてないかと思ってな。」
ランクF?
2ランク上の魔物、という事か。
それは確かに荷が勝ちすぎているかもしれない。
特に今日から始めた僕にとっては。
でも何事も経験だと思う。
それに僕のアレならなんとかなるんじゃないだろうか。
森の奥なら他の人に見つかる可能性も低いだろうし、最悪他のスキルを使ったっていい。
「この森に居ることは居るんですね?」
「ああ、ウルフの巣を超えた森の奥手前辺りにな、目撃証言が集まっている。まさか・・・やる気か?」
門番ゴリラは顔をしかめた。
「ええ、とりあえずやるだけやってみようかと。」
「あんたがいいならいいんだが、気をつけてくれよ?ただでさえそんな軽装なんだしな。」
へ?軽装?
そう言えば初期装備、だね。
あ、そうだよ、武具屋行ってないよ。
道具屋にもだ。
タカヤンと行くつもりだったからすっかり忘れてた。
「それと、あんた獲物は無いのかい?拳闘士かなにかか?」
獲物?
あ、武器か。
武器も例に漏れず忘れていたが、武器については心配してない。
《瞬斬》でどうにかなる。
防具や道具だってそんなには心配していない。
この森はチュートリアルで通ったけれどウルフ系は僕の相手にならなかったし。
大葉兎だって早いだけだっていうなら《瞬斬》でどうにかなるだろうし。
ランクFのスライムアックスだって、所詮スライムなら《瞬斬》でどうにかなるはずだ。
やられる前にやれ、だ。
こうしてみると《瞬斬》に頼りすぎな気もしないではないが、レア度高めなチート能力なんだからおんぶに抱っこでいいはずだ。
よし、出発だ。まずは大葉兎だ。
どうも、西東青夏です。
お読みいただきありがとうございます。
ブックマークもありがとうございます。
報告になります。
本日、3を更新しておりましたが更新終了しました。3の冒頭及び門のチュートリアル等が変更されています。
以上です。