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メレ、というのはハワイ語で『うた』という意味なんだそうだ。

だから丁度良いとタカヤンは言った。


そんなの聞いたら余計に、いや、そもそも女の子を呼び捨てになんてできない。

けれどタカヤンは『ちゃん』も『さん』も付けずに名前だけで呼んでと言う。


それができないからタカヤンと呼んでいるのだ。

タカヤンはそれを相変わらずと言う。


僕が意識しすぎているというのか?

この可愛い同級生の女の子に特別な感情を抱いているというのか?


ああ、いるね。


でも、それは仕方ないよ。

だってこんなに可愛い女の子が僕に話しかけてくれるばかりか、同じ趣味を共有できているんだから。


「レン、まずはフレンド登録しておこうか。」


目の前に“メレ・タカヤンさんをフレンド登録しますか?Yes or No”と文字が浮き上がる。

当然Yesを選ぶ。


「これでよしと。では、レン?お待ちかねのショウタイムだ。」


タカヤンの目が妖しく光った気がした。


「もしかして・・・・紋章見せろってこと?」


「話が早くて助かるよ。いったいどんな紋章を取得したんだい?」


やっぱりきたぞ。

さて、どうする?

アレはさすがに見せたくない。

と言って、見せないで逃げれるとは思えない。

でも逃げてみよう。

それで無理なら生産職の方だけ見せてあとはどうにか・・・できればいいけど。


「そうだ、タカヤンの紋章から見せてもらえるかな?」


「私から?まぁ、いいだろう。お楽しみは最後に回すということだな。」


そう言うと、タカヤンは右のグローブを外した。

右手の甲に赤い紋章が浮かび上がっている。


「『猛る焔獅子の重装戦斧』だ。ランクが一つ上がってね。ついこの間まではただの獅子だったんだ。」


タカヤン曰く、紋章は一定レベルの上昇とともにランクが上がり、ランクが上がると紋章が進化することがあるらしい。


更に紋章は三節で区切ることができるという。


「例えば、私の紋章でいうと、『猛る/焔獅子の/重装戦斧』となる。

戦闘職、生産職に限らず『威力/属性及び能力/兵種』となることがわかっている。」


ただそれでいうと僕のアレはどうなるんだ?

『眠る』って威力か?

『大英雄』って兵種か?


「生産職は?」


戦闘メインのタカヤンには悪いが、極力、生産職で行きたい僕にとっては、生産職の方が気になる。


「生産職か。『溢れる慈愛の刀鍛冶』だ。一定量の鉄や鋼、鉱石があれば武器を鍛えることができる。」


「あんまり使ってない感じ?使用方法をそのまま読み上げたみたいだったけど。」


「やっぱり判ってしまうかな。戦闘職に比べて生産職の方は余り魅力がなくてね。」


タカヤンは思った通り、戦闘職メインのようだ。

タカヤンの戦闘職の紋章は一節レアというもので、その箇所は『獅子の』になる。

一節レアというのは三節の一つの部分がレアな文言というもので、特殊なスキルだったり職種だったりするわけだ。


だが、それを踏まえてみれば僕のアレは三節レアということになる。

それは目立つだろうな。


と、これで話を終えるわけにはいかない。

まだ策が思いつかないんだ。

・・・そう言えば、生産職の紋章見せてもらってないな。


「紋章は?見せてくれないの?」


タカヤンはビクッとして、それから顔を赤くして言った。


「あー・・・うん、いくらゲームとはいえ、容姿は実像そのままのこのゲームではね。ちょっと見せられない位置に、ね。」


ゲームであっても見せられない位置。

それを妄想、もとい想像する前にふと思った。

そう言えば忘れてたけど、僕の紋章って体のどこに入ってるんだ?


まずい。

今すぐ確認しなくては。

環境設定で設定した紋章の開示設定は、あくまでギルド証の公開範囲設定であって、体に刻まれた紋章を隠す方法は、白粉を塗るとかそういう物理的な方法しかないんだとキトさんから聞いている。

だから僕のアレを見ようと思えば誰だって見ることができるのだ。


ステータスの紋章を見る。

アレは右胸に、生産職は左の肩甲骨付近にあるようだ。


ん?これならなんとかいけるか?

タカヤンの真似して見せられない位置にあると言えば。


じゃあ、何ていう紋章を捏造しようか。

紋章の種類は全然知らない。

とりあえず生産職の方はそのまま伝えようか。

問題は『眠る神魔の大英雄』の方だ。


生産職と同じ『眠る』『神魔の』まではそのままでいいとして、『大英雄』はどうしようか。

タカヤンの紋章に倣うとしたら『片手剣』とか『剣士』あたりが良さそうだ。

それに、そのあたりなら使わなければならなくなっても何とか言い訳がつきそうだ。


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