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《神魔召喚》。
スキル名をタッチしても、長押ししても何の説明も出てこなかった。
だが、これを除くとあとは《寝所創造》しかない。
それはどう考えても戦闘スキルではない。
よって、僕は《神魔召喚》がどんなスキルか知らないままに発動した。
同時にポップアップが表示される。
『注意!
《神魔召喚》発動には総MPの八割が必要です。
条件は満たされています。
本当に発動しますか?
Yes or No?』
勿論、発動だ。
Yesを選択する。
途端、目の前に四角い箱が現れる。
上半分は透明なケースで、中には金と銀の球状のカプセルがはいっている。
下半分には取っ手のようなものが付いていて、それは回すことができるようだ。
取っ手の少し上にはコインの投入口があって、3と彫ってある。
同時に、手の中には三枚のコインが出現していた。
「これってもしかして・・・・」
そう、それはガチャだ。
《神魔召喚》とはガチャを引けるスキルのようだ。
僕は三枚のコインを投入口に入れ、取っ手を回す。
丁度一周すると、取り出し口から金のカプセルが出てきた。
「当たりの方かな。」
金と銀だ。
常識的に考えて、金は当たりだろう。
さて、何が出てくるか。
カプセルを開けると、ポンという音がして紋章が現れた。
その紋章は僕の左手の甲に刻み込まれた。
紋章には15枚の花びらを持った花が描かれていて、その内の一枚が黒く染まっている。
メニューから紋章を選択する。
もともとの二つの紋章の他にもう一つ追加されている。
『支配する神魔の召喚王』
《召喚》《送還》《憑依召喚》《絶対支配》《乗物化》
召喚獣:アーテルサーペント
中二病紋章が追加されました、と脳内アナウンスが流れた。
と、惚けてる場合じゃない。
スライムアックスはこっちに向かってきている。
吟味は後にして、まずは《召喚》しよう。
《召喚》!
またもやポップアップだ。
親切なのか、しつこいのか。
『注意!
《召喚》が発動されようとしています。
初回の召喚には多少時間をいただきます。
発動しますか?
Yes or No?』
スライムが到達するまでまだ間がある。
勿論、Yesだ。
僕の前の地面に巨大な紋章が出現する。
花びらの紋章だ。
黒く染まった一つの花びらから黒い霧のようなものが這い出してきて、紋章の上一杯に広がる。
それはだんだんと形を蛇に変えていく。
やがて霧だったものは完全に蛇と化した。
アーテルサーペント、それは真っ黒で超巨大な蛇だ。
胴回りが僕より大きく太い。
手足はないが、頭を支えるために必要なのか、その分体は長い。
全長5、6メートルといったところだろうか。
口の先まで真っ黒だが、口の中は赤く、眼は緋く輝いている。
スライムアックスはすぐそこまで迫っている。
スライムアックスは、突如目の前に巨大蛇が現れたにもかかわらず、スピードを緩めない。
そして、跳躍、前宙返りをしようとする。
そのタイミングでアーテルサーペントの尾がスライムアックスを襲った。
苔を削り取るように、木々をなぎ倒しながらスライムアックスが吹っ飛んでいく。
あれが人間なら即死だろう。
だが、そこはスライム。
無傷だ。
再びスライムアックスとなって向かってくる。
これではキリがない。
何か無いのか。
僕は賭けに負けたのか。
駄目元で召喚獣欄のアーテルサーペントを押してみる。
すると説明が開いた。
アーテルサーペント Level1
蛇型の魔獣。
超巨大な体躯からは想像もつかないほどしなやかで素早い。
スキル:《バーミリオンフレア》、《アサルトレイン》
《バーミリオンフレア》に目が留まる。
フレアと言うからには炎系だろう。
これなら焼き尽くすことが出来るかもしれない。
「アーテルサーペント、《バーミリオンフレア》だ」
アーテルサーペントの口の前に二重の魔法陣が出現し、口からは高圧縮された炎の玉が打ち出される。
炎の玉はスライムアックスに吸い込まれるように着弾した。
同時に炎の柱が立ち昇り、スライムアックスを包み込んだ。
炎の柱は徐々に細くなり、遂には消え去った。
後には円形に焼け焦げた苔の地面だけが残り、スライムアックスの姿はどこにも見えない。
倒した・・・のかな。
クエストの終了音がしたかどうかもわからない。
気が抜けたのか、体がだるい。
いや、MPを大量消費したからだろうか。
そんな僕の頭に突然、鐘が鳴り響いた。
どうやら何かがLevelupしたようだ。
Levelupすると鐘が鳴り響く、と言うのはタカヤンから聞いていたが、こんなにうるさいとは思わなかった。
もっと荘厳な感じをイメージしていたのだが、とてもやかましい。
いまいちLevelup条件がわからないが、今回のは強敵を倒したからかな。
といっても今回は全部アーテルサーペントのお陰だけど。
のそりとアーテルサーペントのそばに寄ると、頭を垂れてきた。
優しくゆっくりと撫でてやる。
気持ちよさそうに目を細める仕草は愛らしい。
ところで、どうしようか。
とてもこの体力で狼の巣を超えられる気がしない。
少しだけここで休もう。
そう、少しだけ・・・。
僕はアーテルサーペントにもたれ掛かると、不覚にもそのまま意識を手放してしまった。




