出会い
この出会いと、川上氏の一人娘・・川上香織と、香月もやがて人生にとっての大きな出会いとなった事は、まだこの日の集いでは知る由も無い。だが、川上氏はこの後2人を案内する鳩舎の中で、香月と言う少年が今まで出会ったどの競翔家よりも、超越した洞察力の持ち主と知る事となる。
「おっと・・長話をしてしまったね・・さあ!鳩舎の方へ行きましょう。色々鳩を見ながら説明しましょう」
玄関から表に出ると、2人が下から先ほど見ていた2坪ほどの鳩舎に、まず案内された。
「ここが選手鳩の鳩舎です。今は、表で遊ばせているので全ての鳩は見せてあげられませんが、ここには1才から5才までの鳩を50~60羽入れてあります。ここの鳩達をレースに参加させている訳です。前面に取り付けてある、棒状のアルミ製のものはタラップと言って、鳩が外から入れますが、中からは出られないようにしてあります。競翔中にはもう一つ中にタラップを作って、その中で競翔から戻って来た鳩のゴム輪を外す事になります。・・又、君達が競翔に興味を持って倶楽部でも入会したいと感じたら、その時に説明しましょう」
勿論2人にとってはまるで、別世界のような、矢次早の話でもあった。
「次に中の構造ですが、ご覧のように内部は止まり台、それも鳩一羽が止まれるスペースで作ってあります。何故なら鳩と言うのは非常にセクショナリズム(縄張り根性)が強くて、この止まり台が無いと争いが耐えません。彼等(競翔鳩)にとって、鳩舎の止まり台とは唯一の安息場所ですし、餌を得る唯一の場所も鳩舎の中です。それを子鳩の時から、繰り返し競翔家が訓練の中で習慣つける訳です。争いを起こす事は鳩舎の中でつまらない体力を消耗する事となり、いざレースでの失踪につながる事になるかも知れません。競翔家はそう言う点も充分把握しながら、又気をつけるべきでしょうね・・あ・・又、説教おじさんになってる・・あはは」