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白川老人
「えっ?もうそんな時間か・・」
と、まだ空を仰いでいる。どうしたのか・・?香月が聞いた。
「どうされたんですか?空を仰いで・・。」
「うん、まだ帰ってない鳩が居るんだよ。それも昨年の1200キロGNレース連合会の唯一羽翌日記録の鳩なんだ。いつも遅いと言っても、もう帰ってる頃なんだが・・。」
川上氏はこのレースに110羽参加させていた。しかし、あろう事か、未帰還が昨年度鳩舎の中で、最長距離を記録した鳩とは。川上氏の不安は同時に香月の不安にもなった。陽が落ちると川上氏の鳩舎ではタラップを閉める。外敵に襲われるからだ。もう、暗闇が押し迫っていた。・・その時「バサッ・・」と言う音と共に、一羽の鳩がタラップに降り立った。
「帰ってきたか!・・心配させて・・」
川上氏の表情は緩み、鳩舎に鳩を呼び込んだ。しかし・・その鳩はこんな短距離レースなのに異常に疲れていた。川上氏は鳩を抱きかかえると、口から泡を吹いていた。




