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白川老人
「どこか・・電話の調子でも悪いの?」
「いいえ・・どこも」
「君の所も秋は今ひとつだったようだね。当り配合ってゆうか、そう言うのって難しいよね」
「ええ・・でも、春にはピン太やこの秋の500キロ8位が居ますし、佐伯さんの所の鳩もなかなか良さそうだし、それとピン太とその佐伯さんの所の子鳩4羽がすごく面白そうなんですよ」
「ハンセン系だね、佐伯さんの鳩・・きっとブリクー系と合うと僕は見てた」
流石に研究家の佐野だ、さぞかしノートにはびっしり書き込んでいる事だろう。
その電話を切った後。香月は川上宅へ向かった。
「よお!」
川上氏は、にこにこといつものように応対した。
「あの・・聞きたい事があります」
「ん?なんだね?」
「じいちゃんは・・」
「白川さんは少し体調が優れぬようだね」
香月はじっと、川上氏の顔を見詰めた。澄んだ、何事をも偽らぬその目は川上氏に何かを訴えるように悲しい光を湛えていた。




