出会い
「はい」
中から、若い女性の声が聞こえてきてドアが開いた。思わず香月は「ドキッ」とした。非常に整った顔の色白美少女は、ほぼ同年齢であろう。そのまま何も言えずに立ち止まる香月の横から、芳川が言う。
「あの・・芳川、香月とも申しますが、川上真二さんはご在宅でしょうか」
「はい!お父さん、芳川さんと香月さんが来られたわ」
早口に少女は言うと、小走りに奥に入って行った。すぐ、頭が少し白くなった中肉中背の、品の良い目元が優しそうな川上氏が玄関に出てきた。電話の応対そのままに、いかにも優しそうな思った通りの人となりに、芳川も香月もほっとした。出会い・・とは当にこの事であろう・・香月は、一目で川上氏に心を惹かれるものを感じたのだった。
「はじめまして、先にお電話しました芳川と申します。今日は香月君と一緒にお邪魔させて貰いました」
「いらっしゃい。良く来てくれたね。さあ、さあ・・中にお入りなさい」
優しい笑顔そのままに、2人は部屋に案内された。そこには数え切れない程のトロフィーやメダル、賞状が並び飾られていた。書棚にも、これまたぎっしりと鳩に関する書物がずらりと並んでいた。2人は驚く目できょろきょろ見回していた。その様子に、
「ははは。驚いたでしょう?この部屋は私の鳩部屋と言うんでしょうか、本当は応接間として創ったのに、今では鳩に占領されてしまった。私自身は、こう言う飾りは余り好きでは無いが、やっぱり自分が競翔した鳩達が遠い距離を帰ってきて、それが入賞や優勝をしたりすると、隅っこに追いやるのは申し訳ない気持ちになるんですよ」