白川老人
「わしは・・オペル系の集大成とも言えるこの鳩を手に入れた時、今までのわしの競翔人生の集大成の時が来るのを予感したのだ。それまで、築きあげてきた白川系など、まるで、無意味であったように・・その為に猛訓練で淘汰した鳩には本当に可哀相な事をしてしまった。全てはネバーと言う最高傑作を育て上げる為に。その白竜が参加予定だったレースは日程の都合で、ネバーは参加できなかった。その前の余市Nが思わぬ悪天になり、恐らくネバー一群はもっとも遠いコースを飛び帰ったのであろう。連合会でじゃ1位になっても総合では東コースの連合会が上位を独占したのだ。わしの歯車はそこでまず狂った」
「狂った?総合300位以内に入賞させて・・?」
「そんなもんじゃない・・豊かな副翼、柔らかい筋肉、絹のような密集した羽毛、姿・・どんな銘鳩であろうと霞む完成されたものじゃった」
「確か、品評会でも5年連続一席でしたよね。素晴らしい鳩です」
「わしは・・一羽の鳩で4大レースの一桁入賞・グランドスラムを狙って居った」
「ええっ!」
初めて聞くその言葉に川上氏は仰天の声を上げた。
「じゃが・・伏兵白竜に先を越されたネバーには、これでもか、これでもかと言う挑戦しかなかったのじゃ。香月君はその資質を1200キロにあると見た。まさしくネバーは1200キロ向きの鳩でもあった」
「なんと・・・」
川上氏は・・絶句したままだった。そんな奇跡を起こそうと、この偉大な競翔家が考えていたなど思いもつかなかったからだ。




