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白川老人
「のお・・」
再び白川氏が言う。
「はい・・?」
その言葉が、少し重たく感じた川上氏は今度は低いトーンで、同じ返事をした。少し雨がぱらつき肌寒い日でもあった。8月もそろそろ終わりに近づく・・この日。
「わしは・・もう永くは生きられん」
「そんな・・」
悲しい目をして、その病状を知っていた川上氏は白川氏を見詰めた。目頭が熱くなっていた。心情派の川上氏であった。
「知っておったか・・」
「なんとなく・・」
「わしは癌に冒されておる。身寄りも居ないので、告知を希望した。もう一年と余命も無いと宣告を受けて居る」
「でも・・しかし!」
川上氏の頬に涙が伝う・・言葉にならなかった。
「人は死ぬ・・早いか遅いかの違いじゃ。で・・今日呼んだのはお前に辛がって貰う為でも、わしがお前に哀れを請う為でもない。託したいものがある」
白川老が、分厚い資料を手渡した。
「こ・・これは?」
「白川系の全血統図と、何通かの手紙が入っておる。わしの死後これを開封してくれ」
「そ・・そんな。」




