紫竜号
体力、気力、知力。当に最高の出来でもあった。紫竜号は、急降下を始めた。一端、羽を休ませて、休息を取る為に・・しかし、その地は、紫竜号に更なる試練を与えた。硫黄の噴出する大地。紫竜号は、再び上昇。この時紫竜号は思った。自ら、冒険する事の危険を。意を決した紫竜号は、高く高く舞い上がった。ようやく紫竜号に、明るい日差しが射したように、自鳩舎の位置が叉見えて来た。紫竜号は再び、海に向かった。が、その時海からは、低気圧による激しい雨と、強風が吹き始める。紫竜号は、低空を飛びながら、民家の見える上空に向かった。これ以上、羽が濡れたら危険・・そう思った紫竜号は、民家の屋根下で、羽を休める事になった。既に、夕闇が迫っていた。この大幅な、紫竜号の迂回の中、パイロン3世号、白川系一群は、安全な空路を辿り自鳩舎まで、既に200キロ地点まで戻っていて、そこで羽を休めていたのだった。大きく迂回した紫竜号は、前半稼いだ距離も貯金を使い果たして、鳩舎まで、300キロの地点。この100キロの差は、もう挽回不可能。雨足は強く、明け方まで、止む事は無かった。夜間飛行する事も紫竜号には選択出来なかったのだ。薄明るくなってから紫竜号は家路を急いだ。少し雨に濡れた体は重く、上空に上れない。羽ばたきを助ける風は吹かない。紫竜号の歯車が狂っていた。一方開けた平野部を戻るパイロン3世号達は、ゆっくり飛び帰っていた。今更慌てて帰る必要など無いからだ。先頭を行く鳩群は皆無。しかし、次第にパイロン3世号は、少しずつ距離を白川系鳩群に離されて行く。




