紫竜号
佐野が、少し間が開いた後、こう言った。
「最終的には、香月君の判断なんですよ、それは。磯川さんよりもっと前から、紫竜号の生い立ちについては、俺も知ってます。理由は、今香月君が言った通りです。紫竜号を使翔するのは、やはり香月君を置いて他には居ません。稀代の銘鳩達が残した遺児として、紫竜号の価値を見るのは、人間の勝手な思惑では無いでしょうか。自然に、より自然に、香月君は紫竜号の成長を願い、俺達もその気持ちを応援して来ました。お願いです。鳩界の至宝と言う目では無く、香月君がこの一羽に向ける気持ちを分かってあげて下さい。この通りです」
佐野の暖かい友情の言葉に、自然に拍手が沸いていた。川上氏は、もう、何も言わなかった。
500キロレース・・川上氏が「白雪号」にて28476羽中総合優勝を連合会新記録で飾った。2位にも「白兼号」総合2位。「白兼号」は秋の西コースVC1000キロ総合3位の鳩でもあった。叉英傑が生まれた。恐るべき白川系の血筋、連合会のメンバーは唸った。しかし、連合会3位には、カズ・エース号が入賞。総合でも10位に入った。素晴らしい短距離のエースも、これが最後。有終の美を飾る事となった。
その後、600キロ、700キロGPと続き、香月は、400キロ2位のアルマ号で、GPレースを連合会3位、総合24位に入賞させた。アルマ号には、来年1000キロ挑戦の道が残った。700キロGPの優勝は、佐野鳩舎のレビン号がこれも秋の菊花賞総合3位の鳩で、総合5位に食い込んだ。素晴らしい銘鳩が佐野鳩舎にも叉誕生していた。2位が川上鳩舎、総合7位、3位がアルマ号、4位が磯川で、パイロンビクトリー号(総合28位)・・以下略。




