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紫竜号
もう空を見上げる時間帯になっていた。今年の初参加レースになる、香月鳩舎の全鳩が参加されたこの400キロレース。短距離のエース「カズ・エース号」も、勿論参加されていたが、長距離鳩有利のこのレースでは、期待はされていなかった。この400キロレースは、GPやその後に続く、長距離レースのステップ。短距離鳩には不利と言える地形でもあった。その2人の頭上に姿を現したのは、昨秋の記録若鳩の一羽だった。
時間は1時50分。まあまあの帰舎タイムだった。
「早い?」
芳川が尋ねる。
「どうだろう・・。良い線には言ってると思うけど。何しろ、磯川鳩舎が主力を投入してるからね」
香月は、明解な答えは出さなかった。
その一番目から、間髪を入れずに戻って来たのは、紫竜号。
芳川が声を上げた。




