紫竜号
「ああ・・そのまさかだ。白川氏は稀世の鳩ネバー号を使翔して、グランド4大レース、全て一桁優入賞のグランドスラムを狙っていたんだ」
香月の顔は、青ざめた。
「そ・・そんな事を・・?」
「氏が恐れたのは、君が第2のネバー号を手にする事。そして、それは、競翔家を魔道に引き込むキーとなる。君にそんな事を味合わせたくないと言う気持だった。交配を許可したのも、敢えて君が仔鳩など手にする事も無かろう、叉卵を産んでも、無性卵・・そんな予想を覆すような、君は天才的手腕を発揮して、白川氏の思惑すら覆そうとしたからだ。事実、紫竜号は、ネバー号に成り得る鳩として生まれ育って来た。既に、100キロ文部大臣杯全国総合優勝、700キロGP総合8位、1000GC総合9位と超非凡な成績を上げている、その記録は不得意な距離に向かわざるを得なかった、ネバー号を凌ぎ、GNレース2年連続総合優勝を達成してしまった、伏兵GCH白竜号に打ち砕かれた白川氏の野望・・晩生ながら運命のような2年連続快晴開催となった、GNでの幸運とも言える高速レースの結果に、まだまだ、これから本来の力を発揮出来る鳩でありながら、引退してしまった白竜号の生涯の悲運もある」
「なんと言う・・」
香月の目から涙が滂沱と零れる。そして・・
「ああ・・なんと言う事。ネバー号の最初のGCHレースが悪天でなかったら、叉鍛え上げられ、その理知的なるがゆえの方向判断力がなかったら、恐らく栄冠はネバーの頭上であった筈。なんと言う運命、巡りあわせなのだろうか・・」
「え?今・・何と言ったのか?」




