紫竜号
「ううむ・・。それが、君の現役最高レーサーのスプリント号を引退させるのと、関係がある事なんだね。しかし・・一競翔家としては早く結果が見たい、そう思うのは、卑しい考えであろうか?」
「いえ・・凄く当然であって・・しかし、それは即ち、日下系を俺が使翔するのであって、香月系ではありませんから。」
「その考えには賛同したい・・だが・・私は出来有れば・・・白川系との同一連合会での活躍も見たい・・そう思うのは、私の感傷だろうか・・」
「全く・・同じ事を俺も考えました。そして・・それは・・木下氏も同じでした。実は、今秋に間に合うように、日下氏は日下ピロ号の直仔を作出されています。その鳩達がこの隣にある、新築の鳩舎に収まるのです。管理は芳川さんがします。」
そこまで聞いて、川上氏の目が少し潤んだ。
「そうか・・君はそこまで考えていてくれたんだね、嬉しいよ」
「いえ・・俺もこの話が実現するなんて思ってなかったですから、日下さんのご提案に深く感銘致しました」
「素晴らしい競翔家だね・・。私からも是非感謝申し上げたい。・・ところで、今日君に呼ばれて立会いに来たついでに、私から少し話もあったんだ」
「・・それは紫竜号の事ですね?」
「うむ・・君はどう考えているのか、現時点での考えを聞きたい。それは芳川君から聞いた、紫竜号現役続行と言う、君の意思を再確認した上での事だ」
「その前に・・何故紫竜号について、それほどまでに川上さんご自身が、使翔法に対する疑問を持たれるのでしょうか。一体・・何が白川のじいちゃんと川上さんの間にあったのでしょうか?それをお聞きしたいのです」




