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紫竜号
「・・・2年・・・香織と一緒に住むのを待ってくれと言った。俺がその2年待ってと言ったのは、紫竜号の使翔の為だ。その為、突然だったけどスプリント号には早い決断をした。まだまだ現役の、一級の競翔鳩を今引退させるのは惜しいと思うし、選手鳩としての優秀さも認識しているが、引退させるのは、その体型や、骨格・・香月系を作って行く為に、種鳩としての必然性が、あるからなんだ。でも、紫竜号には、才能を持て余している自身のジレンマを強く感じるんだ。超長距離鳩としてのその資質を、俺は開花させてやりたい・・」
「そうか・・なら言おう。川上さんの家で、色々聞いて来た。香月君がこれからも紫竜号を使翔させるというなら、その参加レースに自分の鳩舎の主力を集中させると」
「えっ・・?」
香月は、少し驚いた。
「誰にも、未来を予想は出来はしない。その冒険に紫竜号の身を置くと言うなら、全力で阻止すべきだ・・とね」
「何で・・?」
香月は視線を上げて、淋しそうな表情になった。




