紫竜号
「ははは・・。めでたい事で、祝福するのが親ですが、余りにも突然、事後報告となれば、やはり面食らうのが当然。お互い驚きましたねえ」
「誠に申し訳ない。ただ・・2人の言い分を聞いてると、我々が間違っているのかと言う錯覚を覚える。ただ、一男は、やっと自分の進む方向が見えたばかりの人間です。生計を立てるのは今からで、親として、2人の同居は認める事は出来ない。そう言えば、同居=結婚ではない、婚約した2人が人生の出発を誓いあったのが結婚。そう言う形をまず求めての結婚ではないと言うのですから」
「親としては、色々世間体もある。結婚と言う儀式は、2人が考える程簡単なものでは無い。そっちの披露宴については、2年待ってくれと言う。何故かと聞けば、生計を立てる器が出来てからだと言う。なら、今の婚約のままの形で良いじゃないかと言えば、やはりそうじゃないんだと・・。昨夜から同じ問答の繰り返しですよ。無論、この結婚については、我々だって、祝福するし、こんなに理解ある両親はきっと他に居ない筈・・ははは」
川上氏はそう答えて笑った。
「お父さん、川上香織としてでは無く、香月香織として生きる。それが私の一番の幸せです。お願いします」




