紫竜号
「浩ちゃんが望むなら、構わないけど・・・どうして・・?一緒にこの鳩舎で、やる事は出来ないの?」
「勿論それまではやるよ。でも、一男が求める香月系は、俺には関係無い事だから。俺は俺の競翔を楽しんで見たいんだ」
「・・浩ちゃんがそう言うなら。で?もう決めてるの?この鳩舎の中の鳩から」
「ああ。川上さんの血統の鳩が良いな。でも、それは、一男の所からじゃない。もう、入会届は出して来たし、川上さんからも旧主流の選手鳩からの仔鳩を貰う事になっているんだ」
「・・驚いた。浩ちゃん・・」
一つの流れが、少しずつ変化していた。それは、芳川の人生にも初競翔が大きな影響を与えている事を、示すものであった。
この会話の後、香月は川上宅へ向かう事になる。それは前夜、両親に打ち明けた、香織との結婚の報告であった。突然の事で昨夜遅くまで話し合った香月達であったが、とうとう根負けして、川上宅へ両親が行く事になっている。その川上宅でも、同様の会話があった。しかし、香織の強い意志には根負けした。両親が望むのは、2人が暮らす時期、環境を整えて・・それは、世間一般の親と同様な思いからであった。
夕方到着して、和室に招かれた、香月一家と、川上一家が談笑していた。




