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春風と英傑の息吹
「俺の話は少し長いからさ。で?君の方はどうなの?」
歩きながら話す香月だった。
「大変・・だけど、楽しいわ。凄く」
「良かったね、夢が叶うね。もうすぐ」
「貴方の夢はどう?」
「ああ、そこのベンチで話そう」
2人はベンチに座った。少し初夏の風が吹いて、大きくて丸い夕陽が綺麗だった。
「今日さ・・2人の博士号が誕生したんだ。それは、同時に助教授に推挙されると言う、S工大ならではの特進なんだ。学士課程からの博士号取得は、3年ぶりだって事なんだけどさ」
「まあ!そうなの・・じゃ・・まさか・・貴方?香月君が?」
「まだ・・何にも言ってないよ」
「貴方の目がそう言ってるわ。凄い・・すごおい!」
説明する前に、香織は香月に抱きついた。
「お・・おい・香織」
香織は小刻みに震えていた。泣いているのだ。




