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春風と英傑の息吹
・・何で泣くのだろう・・主人は・・・
紫竜号には理解出来なかった。
しばらくしてゲージの中へ移された紫竜号だった。香月は、紫竜号の体温が落ちないように、一晩中抱いていたのだ。
「少し帰って休めよ。後は、俺に任せてくれ」
「あ・・でも」
「良いから。愛鳩家の君の姿を見させて貰った。正直、感動した。後で笹本教授に診て貰うから安心してくれ」
「本当に有難う御座いました」
香月が大学を出た後、掛川は紫竜号に言った。
「おい・・紫竜とやら、ご主人が香月君で良かったな」
紫竜号は立ち上がろうとした、しかし、まだ動けなかった。
「おいおい・・気丈な鳩だなあ、お前は・・無理するなよな」
すぐその後、笹本教授がやって来て、術後の診断をした。
「おお・・見事な処置だ。君がやったのか?」
「残念ですが、手術は香月君ですよ」
「そうか・・しかし、この縫合と言い、腹の筋肉を首に移植した処置と言い見事だ」
笹原教授は薬を投与すると、戻って行った。




