春風と英傑の息吹
高橋会長が言った。
「それ程未完の大器と言うか、底知れぬ物を感じているからですよ。俺はずっと注目して来ました。郡上さんにお聞きします。ネバー号の筋肉を覚えて居られますか?」
「ああ・・手に持てば、ぐにゃっとなるような柔らかい体、理想の体型、絹のような羽毛、幅広い副翼・・まさに競翔鳩の理想のような鳩だったなあ・・」
遠くをみるような視線で、郡上氏は答えた。
「川上さんにもお聞きします。白川さんの所から卵で貰ったと言う事ですが、白川さんの所にネバーの他に、オペル系の鳩が居ましたか?」
困惑気味の表情で答えようとした川上氏の横から、丁度集計が終わった、佐野が答えた。
「僕が答えましょう。はい、一羽居ます。オペル系真髄のダブルBの2重近親の鳩です。他156羽についてもお答えしましょうか?」
磯川が、いやいや・・と言うように苦笑いしながら手を振って、
「良いよ、それは佐野博士がデータとして持って居れば良い。で・・その鳩は?」
「田中君と言う学生競翔家の所ですね。ただ、昨秋病気で死んでますが、その鳩は」
おお、流石博士だ。会員が感心していた。
「で・・その鳩の成績は?」




