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春風と英傑の息吹
「川上さん、この場に香月君が居ませんので、少しお聞きしますが、香月君は何か特殊訓練をやったのですか?」
少し曇った表情の川上氏だったが、
「少し、高地訓練等はしたようだよ、私も詳しくは聞いて無いんだが」
ほお・・少し、会員達のどよめきが上がった。
「納得でしょ?つまり、香月君の菊花賞鳩に引っ張られた格好で、この5羽の集団が出来たのです。こうやって迂回すると、200キロ地点からは、追い風になります。記録が出た筈ですよ」
得意満面な磯川の表情だった。
「ふうむ・・なるほどなあ・・確かにそう言う事なら納得出来そうだ」
小谷氏は頷いた。
「なら・・トップの鳩をどう見る?」
高橋会長が尋ねた。
「それは・・分かりません」
磯川は、実にあっさりと答えた。
「何だよ、それ。わははは」
会員が笑った。磯川が頭を掻きながら
「ただ・・考えられる事は、この5羽の一群こそGPを制する鳩群だと言う事ですよ」
全員の顔が今度は引き締まり、一瞬座が静まった。




