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白川老人
佐伯成年が帰って行った。尊敬する川上氏の潤む眼を見た時、やはり彼も愛鳩家であった事を悟ったのだ。
「ああ・・そうだった。今日君が来たら、是非案内したい所があったんだよ。香織も待ってる。おーい!香織!」
川上氏の言葉に香織が外へ出てきた。
「もう・・・お父さんたら!さっきは、あんなに大きな声を出して。香月君、びっくりしたでしょ・」
ふくれっ面で、香織は言った。
「いや、何とも無いよ。お客さんはにこにこして帰ったんだもん」
香月は答えた。放鳩籠に先ほどのBメスを入れたまま、香月、香織を乗せた車は、やがて大きな日本庭園を思わせる古風で立派な家に着いた。
「・・なあんだ・・白川のじいちゃんの家だったの」
香織はがっかりしたように言った。
「嫌なら車の中に居なさい。私達は鳩の事で来たんだからね」
「いじわるね!お父さんは!」
鼻に皺寄せながら、香織はついてきた。




