白川老人
佐伯氏は笑った。川上氏も微笑みながら、鳩舎の中からこの鳩を捕まえてきた。香月は嬉しそうに丹念にこの鳩を触った。
70ACD1345 Bメス・・。
「聞いた話なんですけど、佐伯さんの鳩は、ハンセン系ですよね?」
「うん、そうだよ。その鳩もその血筋だ。少しブリクーの血も入ってるけど」
「やっぱり!川上さんの主流はブリクーですよね?ノーマンサウスウェルは何分の一かで、勢山系が半分の血ですよね?」
「ああ・・そうだよ。君の所はノーマンサウスウェルが半分、勢山が2分の一、シオン系が2分の一だ」
「ほお・・では、思い出しましたが、この子が香月君?あの文部杯の」
佐伯成年が言った。
「そうだよ」
川上氏が答えた。嬉しそうに香月は鳩を触っていた。
「種鳩にするの?」
佐伯氏が、再び念押しするように香月に聞いた。先ほどのは聞き間違えたと言いたげだった。しかし、香月は、
「いえ!選手鳩として使います」
「あっはっは。佐伯君。この子は並の子じゃないよ。きっと考えがあるのだろう。E高校でもトップを取る子だ、きっと何か考えがあるのだろう」
こうして、一瞬にして佐伯成年と川上氏は、この日こんな葛藤があったのに、和解していた。まるで香月に影響されたように。佐伯氏もまた一流の競翔家であった。
このBメス・・実はのちに大活躍をする香月鳩舎の長距離鳩になる事を、この日の誰も知らない。香月以外にこの鳩の資質を見抜いた者が居ないのだ。
後に・・・ムーン号と名づけられる優秀な競翔鳩との出会いであった。




