チーム
「学者としては成功だが、競翔家としては失敗だと言う根拠は?」
掛川が興味深そうに尋ねた。
「いえ、失敗だとは言ってません。少なくても、長距離鳩に関しては、極めて有効な訓練でした」
「俺には、その短距離・長距離鳩の適性が、理解できて居ない。参考の為に教えてくれ」
「他の動物を見ても、そう大差はありませんよ。短距離鳩は、その力強い筋力で、スピード性を重視されますから、主翼の3枚が長く、竜骨が高く、長い等の特徴があります。人間でもそうです。大腿筋や、上腕部等、筋肉が発達してるのと同じです。特に、怖さを知らない若鳩の場合その傾向が強く、個体差はありますけど鳩舎方向を定めると、加速する様に飛び帰るのです。ところが、逆に長距離鳩はあのような谷間では、上流に向かって上昇気流に乗り、その豊かな副翼と密な羽毛によって、自分の筋肉を使わずとも、浮力を有効に使うのです。この対象は、面白いですね。日本のような気候風土では特に、顕著です。この訓練は確かに難コースでの想定としては、良かったですが、結果として、次の日の訓練は余分でした。何故なら、もう結果が出ていた事に対する、駄目押しのようなものですから」
「それ・・それ。今の論理は俺にも分かる。自分なりにある程度の習性なり、特徴は知っているつもりだ。帰巣メカニズムについての、俺なりの論文を6月までに完成させるヒントがそこにあると思うんだ」




