チーム
「私ね、香月君が私が絵を描いてる事覚えてるよって言ってくれたの、凄く嬉しかったの。だって、もう忘れてるでしょうけど、美術部の文化祭の発表の時、一番熱心に私の絵を見てくれたのは香月君だった。だから昨日その言葉が本当に嬉しかったの」
「・・君は覚えてないでしょうって言ったけど、その絵の事覚えているよ。凄い才能のある人だって思った。」
「嬉しいわ」
「俺の話・・少し聞いてくれる?」
「ええ・・」
「君と再会した一昨日、その絵を描いてた君と、看護婦さんのイメージが重ならなかったんだ」
「絵は今でも描いてるわ。来生先生に頼まれて、今、病院に飾る絵を描いてるの」
「そうなんだ。じゃ・・君の絵に感動した俺の当時の気持ちを言っても良いかな?」
「是非!香月君ならきっと理解してくれると思うから」
「・・あの絵は白馬と老人だったよね。白馬は老人の夢、老人が追い求めて来た理想。老人は現実を見ている自分。きっと、夢を未来に託そうとしたんだよね、白馬に乗せて」
「その通り!嬉しい。やっぱり香月君は私の王子様だった。あの時勇気を出して、声を掛ければ良かったわ・・」
「そう言って貰えるのは本当に嬉しいよ。でも、今の俺は香織しか居ないって思ってる。君には有り余る絵の才能があるし、叉素晴らしい白衣の天使であって欲しいと俺は思う。君さえ良ければ、こんなサークルがあるんだ。参加して見ないか?」
斎藤が歩み寄った。香月が薄闇の中、資料を渡す。斎藤が香月に抱きついた。




