表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白い雲  作者: 白木
35/545

白川老人

 この日、香月が、いつものように訪れた川上宅の中からは、大きな声が聞こえていた。

 常日頃非常に穏やかな人柄で、怒声を発するような川上氏ではない。どうやら、もう一人と口論してる風であった。玄関の戸を開けるのに躊躇していた香月だった。その時、上気した顔で川上氏が玄関を開けた。香月が驚いた顔で立っているのに気付くと、すぐ笑顔を作り、


「やあ、香月君来てたのか。丁度良い。君も鳩小屋に来たまえ」


 この来客は、どうやら競翔関係の者らしい。それにしてもあの剣幕は・・?香月は後をついていった。若い競翔家で、25、6才位で、がっちりした体格をしていた。この競翔家は、近くの連合会で素晴らしい成績をあげている、トップ競翔家の佐伯道年と言う著名な人であった。実は、この人の鳩が川上鳩舎に迷い込んできたのを連絡をとって、今日訪問となったらしい。鳩舎の前に立つと、川上氏が又大きな声で言った。


「佐伯君!君はトップ競翔家だが、見たまえ!私の鳩舎にもたくさんの鳩が居る。だが、一羽たりと、私はこの鳩達をレースで失いたくない。私製管(住所管)とはその為に左足に装着してるのだ。今深刻化している迷い込み鳩対策だが、どんな鳩であろうとも、我々は鳩を飼っている。その愛鳩精神無くして、いかに優秀な成績を残そうが、意味は無い!君が迷い込み鳩は駄鳩と決め付けて、処分するなどと言う発言は、多いに私の競翔観に反するのだ!一羽の鳩すら大事に思わぬ者が、果たして立派な競翔家と言えるのだろうか。聞きたい!」


 上気した川上氏の顔は、見た事の無い厳しいものであった。香月は黙って聞いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ